モブNo.105:『総員に通達!敵増援は手練ればかりだから注意してください!』
ロスヴァイゼさんのレーダーに反応した連中は、船体コード確認を拒否していることから考えてもやっぱり海賊だった。
規模は中ぐらいで、船の数はこちらよりかなり多い。
しかも望遠で確認したところ、船にはしっかりと海賊旗が描かれていることから、身内の処罰から海賊になった貴族ではなく、正統な海賊であるらしい事がわかる。
落ちぶれ貴族の場合、これは献上で海賊行為ではないと主張するために、描かない事が殆んどだったりする。
護衛全員が来るだろうなと予測していたのもあり、当直のメンバーは直ぐ様迎撃体制を整え、休憩中のメンバーも遅延することなく即座に出撃してきた。
そして海賊側も、こちらに怯むことなく、さらにはお決まりの口上をしてくることもなく、無言のまま襲いかかってきた。
軍の人材スカウトの目が光っているからといって、手を抜いたりしたら命に関わるので、仕方なく本気で戦う事になる。
しかし一番目立つ活躍をしていたのは、やっぱり『羽兜』ことランベルト・リアグラズ君。ではなくロスヴァイゼさんだった。
一つの船に2人乗っているという状態を利用し、他の船との通信はロスヴァイゼさん。操縦はランベルト君。という状態に見せているらしい。
まあ、最近はランベルト君も気絶をなかなかしないようにはなっているらしいけど。
人間ではほぼ不可能に近い軌道を描き、簡単に海賊達を撃ち落としていく。
あれで電子戦機というのだから本当に古代兵器はとんでもないと実感してしまう。
その次に目立つのがダンさんとアーサー君だ。
ダンさんは、悠然と移動としながらも、敵の攻撃を直前でふわりとかわしながら敵の後ろについたり、ゆっくりとした動きなのに不意に視界から消えたりという、不思議であり優雅な戦闘軌道を取ることから、司教階級になった時には『優雅な燕』という、通信に流れてくるジョークと軽口ばかりのお喋りとは真逆の印象のあだ名を付けられたらしく、本人はそれを嫌って、自分から『無敵のタフガイ』と呼称するようになったらしい。
実際本人はかなりのタフガイなので間違いじゃないしね。
アーサー君はその逆で、優雅とは程遠い、荒削りで鋭角的な感じだ。
まあ、以前よりは洗練されたかな。
ちなみに一部の女性ファン達からは、船が白だからという事からそれを馬に見たてて『白馬の王子様』とか、その速さから『白き閃光』なんて呼ばれているらしい。
その話を聞いたセイラ嬢は、嬉しさと苛立ちの両方を混ぜ合わせたような表情をしていた。
そのセイラ嬢の船は、レーダーは凄くてもそこまで船脚は速くないので、貨物船の近くにいて、近寄ってくるやつの迎撃に徹しつつ、時折アーサー君や他の人達に情報を提供したりしている。
モリーゼも同じく船脚を気にして、貨物船の近くにいて、近寄ってくるやつの迎撃に徹している。
彼女の船は濃いグリーンで、船脚は遅いけどビームブラスター2門・貫通光線1門・特注武器の『衝角式障壁』が1機装備されているらしい。
ちなみにビームとレーザーの違いについては、検索エンジンの『シラベ・ロカス』先生に教えてもらえばよくわかる。
僕はといえば、護衛の船の周囲を旋回しながら、近寄ってきた奴、もしくは近寄ってこようとする奴を撃墜するという非常に楽なポジションにつかせてもらった。
ちなみに僕に絡んできたあの人は、取り巻き共々前線に出てかなり頑張っているらしい。
このように、めちゃくちゃ目立つ人が何人もいるわけだし、これで少しは軍の人材スカウトの目も誤魔化すことができるだろう。
そうしてかなりの数の海賊が撃墜され、そろそろ撤退するかなと思っていたとき、海賊側の援軍がやってきた。
それは、ロセロ家とグリエント家の戦争のときに初対峙し、惑星テウラでの対テロリスト戦では味方にいた『雀蜂部隊』だった。
貴族同士の争いはともかく、海賊に味方するとなると傭兵としては失格だ。
あの部隊の連中は何を考えてるんだ?
『総員に通達!敵増援は手練ればかりだから注意してください!』
セイラ嬢はテロリスト退治の時にいたのを覚えていたのか、全員に注意を促す。
すると雀蜂部隊は、ロセロ家とグリエント家の戦争や惑星テウラでの対テロリスト戦でのロスヴァイゼさんの実力を警戒してか、大量の無人機を投入し、その全てでロスヴァイゼさんを狙いはじめた。
『なんなのよ鬱陶しい!』
ロスヴァイゼさんのイラついた声が通信から響いてくるのだけれど、かなりの数の無人機に追いかけられるも、危なげなくかわしながら引き離し、撃ち落としていくのを見る限り問題はなさそうだ。
それにいざとなれば、あんな無人機なら簡単に支配してしまうだろうしね。
しかしこっちは問題だった。
『雀蜂部隊』は全員が動きがよく、ダンさんはともかく、アーサー君が苦戦を強いられている。
そのダンさんも、軽口とジョークが一切聞こえて来ないけどね。
なんとか持ちこたえてはいるけど、味方数機が大破させられ、僕や近くにいた連中が慌ててフォローに入り、なんとか撃墜は免れて空母に収容してもらった。
とはいえ操縦席に損傷があったので、怪我の具合や空気の状態によっては危ないかもしれない。
幸い、戦闘行為だけに特化した専門艇なので、空気の対策はしてあるだろう。
そして、雀蜂部隊がいるということは、当然あいつも居るはずだ。
そう思った瞬間、嫌な予感がして機体を動かした瞬間、ビームが船のすぐそばを掠めていった。
ビームが来た方向にはやっぱり『青雀蜂』がいた。
混戦時はレーダーを見落とす事もあるので、避けられたのはラッキーだった。
『青雀蜂』は真っ直ぐにこちらに向かってくる。
明らかに以前の復讐のつもりらしい。
前に使った手は通用しないだろうし、対テロリスト戦の活躍を聞くかぎり、腕を上げているかもしれない。
あの時きっちり落とせて置けばよかったんだけどな…。
UNKNOWNサイド:???
僥倖だ!
こんなに早く再戦の機会がくるなんて!
あの時の屈辱は一瞬たりとも忘れたことはない!
あの土埃を今度こそ撃墜してやる!
ちょっと短めです。
青い雀蜂との再戦です!
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