クエスト報告
「よう、坊主。薬草とってこれたか?」
「はい、何とか採ってこれました。査定お願いします。」
革袋をカウンターに乗せる。
袋にパンパンに詰めてきたのでそのまま直立する。
ベルと気持ちをぶつけ合った後に急ぎ足で森を出た。
森を出た時には時刻は既に18時頃、逢魔が時となり、森が不気味に蠢きだしていて嫌な汗をかいた。
結果的に何も遭遇しなかったが、何か遭遇していたら大変なことになっていたかも知れない。
街につくまでの間は終始ベルとお話をし続けた。
余程喋りたかったらしく、ずっと喋り通しだった。
正直今の状況は心細かったので、ベルとお話出来たお陰で救われているのはこちらのほうだろう。
街についてからは、真っ直ぐ冒険者ギルドに向かった。
遅い時間なので室内はまばらだ。
戦士が中心で、ドワーフ、エルフといったデミヒューマンが一人ずついた。
壁際に薬草採取していた女の子もいて目線があったから微笑みかけると、ほっとした表情で微笑みかけた所ですぐにプイッと視線を逸らされた。何か嫌われるようなこおとをしたのだろうか?ちょっと傷つく。ちなみに彼女は現在も壁際にいる。まだ予定があるのかも知れない。
ベルは入り口で待ってもらっているがこちら気になるようで、チラチラと覗き込む姿が丸見えだ。
「おうっ!随分採ってきたじゃねえか。どれどれ・・・って、俺は赤ハーブを採ってこいっていたはずだぞ」
顔が強張りお腹がゴロゴロするのを自覚する。
でも、生活費のために交渉を開始する。
「目的の場所で赤ハーブがなかったので、別の場所で白ハーブを摘んできたのですが・・・駄目ですか?」
「そうだなぁ、どうしたもんか」
神妙な顔で白ハーブを眺めている。
「色違いでもハーブはハーブ。多少安くても構いませんので値段はつきませんか?」
「ん?ちげぇよ。安く買い叩くんじゃなくて、高く買わなきゃいけねえから悩んでんだよ」
「え?」
「こいつは白ハーブっつってな、赤ハーブよりも滋養のある薬草だ。要するに赤ハーブより貴重なんだよ。そうだなぁ、赤ハーブの4倍、銀貨12枚でどうか?」
「えっ!?」
女の子が声を上げる。
顔向けるとやっぱりプイッと顔をそむける。嫌われるようなことした覚えはないのだが・・・。
「でっ、どうする?銀貨12枚でいいか?」
「はい、お願いします」
1日生活するのに銀貨1枚消費するから、今回の冒険で12日分の生活費を稼いだことになる。今後の身の振り方を考える時間を手に入れたわけだ。
赤ハーブは白ハーブの4分の1の値段ということだから、銀貨3枚ということになる。
3日に1回の頻度で採取出来れば生活が成り立つわけだ。
森に入ったら毎回ハーブが手に入る保証もないし、そもそも危険がつきまとうわけだから妥当な金額だと思う。
「あいよ、報酬だ」
「ありがとうございます」
「よかったな坊主。でっ、これからどうするんだ?ゴブリン退治でもやってみっか?」
僕を試すようにおじさんが話しかけてくる。
「暫く森を通いつめたいと思います。多分、今の僕がゴブリンと戦ったらいつかは返り討ちに遭うと思います。勿論一対一なら負けないと思いますが」
「そうか。文字が読めるんなら図書館に通ってみな。俺達は自分の命を掛け金に商売やってんだ。知りませんでしたじゃ許されないんだ。準備を怠ったやつは死ぬぜ?」
「ご忠告感謝します」
「まずは薬草を安定的にとってこれるようになりな。何事もそれからだぜ」
冒険者ギルドを出た後に、約束通りベルとチーズをたらふく食べた。
ベルは文字通り歌いながらチーズを食した。
誰かと食べるご飯はやっぱり美味しいと思う。
読者様へ
読んでいただきありがとうございます。
76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。
より面白い物語が書けるように精進してまいります。
今後ともお付き合いいただけたら幸いです。