ズッ友
「今喋ったよね?」
「ニャーン♡」
いつも以上に甘い声でお腹を見せて露骨に媚びてくる。
悪戯がバレた時の挙動だ。これは嘘の匂いがする。
「ベル、怒らないから本当のこと教えて」
にっこり微笑みながらベルをガン見する。
お腹を見せたまま逡巡してジワジワと涙目になる。
「・・・嫌いにならない?」
ボソッした声で、不安げにこちらを覗き見る。
「嫌いにならないよ」
ベルのお腹を優しく撫でる。
「わたしがお喋りするとね、みんな、みーんな嫌いになっちゃうの。本当に嫌いにならない?」
「僕のためにお喋りしてくれたんでしょ?ありがとう。とっても嬉しいよ」
極力ゆっくり、口に含むように優しく語りかける。
いつもならこれでご機嫌を直してくれるはずだが反応がない。
目を見開き、口を開けたまま固まっている。
「僕のこと信じられない?ベルのこと嫌いになるわけないでしょ。」
ベルの目の焦点が焚き火のように力強く戻ったと思うと僕の腕にガバッと抱きつく。
「セシル大好き!」
猫が号泣して泣きじゃくっている。
びっくりしたけど落ち着くまでされるがままにする。
「僕もベルのこと大好きだよ」
「わたし、セシルが好きなの。大好きなの」
ここまでストレートに好意をぶつけられたのは初めてだ。胸が温かくなる。
「ベルはいつからお話出来たの?」
「あのね、あのね、初めてあった時からずーっと喋れたの。でもね、喋っちゃいけないって言われたからずっと、ずーっと我慢してたの。セシルがお家追い出されちゃって心配で心配で仕方なかったの。駄目って言われてたけどだから喋っちゃったの」
今までの反動かタガが外れたように喋りまくる。昔からこちらの言葉分かっているんじゃないかという位、物分りが良かったわけだが本当に言葉が分かっていたのなら腑に落ちる。
言動から察するにベルはベルで何やら訳アリっぽいけど触れないでおくことにする。普通、猫は喋らないから。魔法使いの使い魔だったのかも知れない。
「ベルお願いがあるんだ」
「なぁに?何でもしちゃう!」
「前では絶対に喋らない。・・・後、これからもよろしくね」
「セシル大好き!」
読者様へ
読んでいただきありがとうございます。
76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。
より面白い物語が書けるように精進してまいります。
今後ともお付き合いいただけたら幸いです。