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想定外って想定以上に発生しないか?

森の中に踏み込むとやや薄暗い。

夏なのにひんやりして森の外より気温が一段低く感じる。

ショートソードを抜き、レザーシールドを手にぶら下げながら踏みしめられた土の上を道なりに進む。

念の為、小道から外れた場所を踏むと腐葉土でフワフワしている湿っている。


森の中は意外と生物の気配がしなくて驚いている。

虫の声もそれほどしないし、物音もそれ程しない。

たまにカラスが羽ばたいたり、ウサギ飛び跳ねて木々が揺れる度に身を固めている。

今日ほど、手持ちの武具が心強く思う日はない。


そんな僕にベルは寄り添いながら、勇気づけるように時折先行する。

彼女は森の中を歩くことに抵抗がないようだ。


15分程道なりに歩くと、人工物が見えた。教会の十字架だ。

十字架を中央に左右に道が分かれている。

人工物に安心感を抱く自分自身がちょっとおかしくなる。まだ弱気になってるかも。

とりあえず十字架の前で跪き、祈りを捧げる。無事に依頼達成出来ますように。


冒険者ギルドのおじさんの話によれば、左にまがって道なりに進めば木々が開けた広場になっているらしい。

確かにこれで何もなく過ごせるのであれば子供にでも出来る仕事だ。

気負いすぎていたのかも知れない。


「おっ」


木々の切れ目が見えて頬が緩む。

風に乗って森の中で聞いたことのない音を拾う。広場に野犬か?


緩めた気持ちが瞬間で引き締まる。

身を屈め、小股で前に進む。


「ふんふーふん、ふーふん、ふーふん」


ソプラノの声が聴こえてくる。

木陰から広場を覗き込むと金髪の女の子の後ろ姿が見える。

ベルも僕に習い近くの草むらに隠れている。



一人で鼻歌歌いながら赤ハーブの葉の部分だけを毟って革袋に詰め込んでいる。革袋は僕が持っているものと同じ物だ。

腰にショートソードを引っさげミスリルのライトアーマーを装備している。

恐らく冒険者だ。茎だけ残っていればまた葉が生えてくるとおじさんが言っていた。

広場に生えている赤ハーブはほぼ毟り取られ革袋はパンパンだ。

この状況どうしたものか・・・。


思案中に強風が吹く。

木々が揺れ蜘蛛が僕の首筋に落ちてくる。


「うわっ」


首筋の蜘蛛を叩き落とす。立ってしまった。


「誰!」


女の子と目線がかち合う。

肌は色白で金髪の長さは肩に少しかかる位。


剣を身構え、毛を逆立てた猫のような表情をしている。

意思力の強い青い目が印象的で、鼻筋がスラッと伸び、口をキュッと閉めている。

若い。恐らく僕と同じ位だろう。怒っていなければかわいい美少女だ。


「待って。争うつもりはない」

「動くな!」


腰に結んでいた革袋を右手で掲げる。

彼女の目線が革袋に移る。革袋と僕を交互に見比べる。


「君も薬草集めにきたの?」

「そうだよ」

「・・・本当に争うつもりはない?」

「・・・そうだよ」


パンパンに膨らんだ革袋を見ながらそう答える。

彼女も少し気まずそうにこちらを見る。


「ハーブあげないわよ。早い者勝ちよ」

「勿論。早い者勝ちさ。ただ僕のお願いをちょっと聞いてくれないか?」

「なによ」

「ここ以外で赤ハーブが生えている場所を知らない?」

「知らないわね。・・・私、薬草採り初めてなの」

「分かった」


泣きそうな表情を隠せなくなってきた。

彼女は剣を収める。少し不憫そうにこちらを見る。

距離を取りながら僕は広場へ、彼女は出口に向かう。


「もう暫くしたら日は傾き始めるわ。日が落ちる前に森を出た方がいいわよ。また出直してくることね」

「そうだね」


彼女は早足で去ってゆく。

取り残される僕。どうしよう?


『こっちよ』


その時、頭の中で不思議な声が響く。

読者様へ


読んでいただきありがとうございます。

76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。

より面白い物語が書けるように精進してまいります。


今後ともお付き合いいただけたら幸いです。

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