薬草採取は簡単。そう思っていた時期がありました
「思ったより怖いな・・・」
冒険者ギルドで教えてもらった薬草が自生しているという森の入り口に到着。
現在の時刻は昼下がり、14時位に差し掛かった所だ。
街からおよそ歩いて40分程かかった。
近くもなければ遠くもないという距離でそのものは平坦な草原で疲労はない。
木々は鬱蒼と茂り奥は見えないため、見た目から開放感は感じられない。
これから森に踏み込むことを考えると息が詰まるのを感じる。
異界のように見えるからだ。森は人が生活するための場所ではない。
「よし、やるぞ」
自分を奮い立たせるために声を出す。
不安はあるけど悪材料ばかりではない。
ちゃんと好材料が3つある。
1つ、自身は身の丈にあった装備で完全武装している。短剣、ショートソード、レザーアーマー、レザーシールド。野犬程度であれば撃退可能だ。
2つ、水、携帯食料、松明を1本用意している。最悪一夜ならば森の中を滞在出来ないこともない。
3つ、そもそも冒険者ギルドでどこで赤ハーブが自生しているか教えてもらっている目的地は定まっている。
現状出来うる限りのことをした自負心はある。
これだけ準備をしても不安は尽きない。それでも報酬獲得のために森に入り薬草を採らなければならない。自由に使える路銀は後1日分のみ。今から森に滞在していられるのは17時まで。3時間が限界だろう。逢魔が時を迎える前までに森を出る必要がある。夜の森は人間のための時間ではない。
「ニャー」
白猫のベルが安心させるように足下で体を擦りつけてくる。
彼女とは6歳の時に拾ってから10年来の仲だ。体重は3.5kg。スラッとしていて凛々しさがある。もうそれなりに高齢なはずなのに拾った時からの美貌を維持している。不思議と歳を重ねた様子はない。ずっと仲良しだ。たまにこちらの気持ちが分かっているんじゃないかと思う。
「それじゃ、行きますか」
読者様へ
本作を読んでいただきありがとうございます。
76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。
より面白い物語が書けるように精進してまいります。
今後ともお付き合いいただけたら幸いです。