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事実上の最終話

「流石にすぐには見つからないわね」

「そうだね」


 探索を開始して30分経過した。

 探索が開始され、盗賊のアジトを探るために道から逸れて探索している。

 普段通っている薬草採取の森と動植物の生態そのものは似ている。

 推測になるがそこまで遠くにアジトはないのではないかと考えている。道を通ったものを襲うのに不便するのではないだろうか。


「人がいたよっ」

 ベルが茂みから飛び出す。

「どこに?」

 僕とマリーは声を低くし、身体を屈める。

「このまま進んだ所」

「どんな人がいたのかしら」

「男が二人と、女の子が一人。男はヒゲがもじゃもじゃでゲラゲラ笑ってたの。女の子はメソメソ泣いてた」

「とりあえず、向かってみよう」

「ええ」

 暫くすると、粗野な男の声と女の子の絶望が混ざったすすり泣く声が聞こえてくる。


ーーーーー


「上物を手に入るなんてラッキーだぜ」

「兄貴、暫くこいつで遊べますね」

 二人は酒をラッパのみしながら陽気に嬌声を上げている。

「んんー!!!」

 猿轡をかみ、両手を縛られた女の子がノロノロと盗賊に追従する。


「やるわよ」

 目が据わり、無表情になったマリーがショートソードを抜く。

「待って、僕達の役割は斥候だよ。盗賊を討伐することじゃないよ」

「見捨てるつもりなの」

「かいわそーだよ」

 二人の目はつり上がっている。

 まず落ち着いて考えてみよう。僕だって彼女を助けたい。

 敵は二人。泥酔とまではいかないが、注意散漫になっている。一撃で仕留めることが出来ればあの子を助けることが出来る。やってやれないことはない。

「タイミングを見計らってやるよ」

 僕もショートソードを抜く。マリーは頷く。


「どうせだ、少し味見してくか」

「いいっすねぇ!」

「んー!!」

 下衆(盗賊達)が僕達が隠れている茂みから背を向ける。

 女の子は1オクターブ高い声を上げて顔が更に強ばる。

「ゴー!」


 音を立てずに忍び寄る。

 女の子と目線があい、首を横に振る。

 盗賊達はまだ僕達に気付かない。剣を振り抜く。


「ギャッ」

「グエッ」

「んんー!!!」


 盗賊がうつ伏せに倒れる。

 女の子が僕に飛びついてくる。

「落ち着いて。もう大丈夫だから」

 軽く、女の子を抱きしめて背中を優しく叩く。女の子が落ち着く。

「縄を切るから離れて」

 仏頂面のマリーが固い声で指示する。短剣で縄を切り、猿轡も外してやる。

「ありがとうございました。命の恩人です!」

「気にしないで。後ろの茂みに隠れていて」

「はい」

 僕とマリーは盗賊を左の茂みに引きずって隠す。

 女の子のいる後ろの茂みに僕達も隠れる。


「男達はどこに向かうか行っていなかった?」

「砦に向かうと言っておりました」

 どこかに放棄された砦があるということだろうか。

 方角からするともう少し先のどこかにあるのかな。

「どうするわけ?」

「戻るよ。その前にちょっと待って」

 少し先の開けた場所に出る。

 今いる場所から先は下り斜面になっている。ここからなら下を見渡すことが出来る。

 このまま見ても見えるのは木々だけで何も判断出来ない。

 精神を集中してチートスキルを使う。

 力を目に集中する。周辺が透視するような形で見える。透明な木々が重なるって見える。

 目が段々熱くなってきて焼けるような感じがしてくる。


 ・・・あった!

 丸太を組み立てて作られた構造物が見える。それなりに大きい。

 2階に見張りの男が二人いる。

 能力解除。軽い倦怠感と眼精疲労。30秒程目が霞んでいる。膝を付いて回復するまでじっとする。

 チートスキルを用いることで様々なことが出来るようになる。但しどれもデメリットが強すぎて暫く身動きがとれなくなる。とてもじゃないけど、常用出来ないのが欠点だ。目的が定まった状態で利用することが出来れば成果が期待出来る。


「何か見つかったかしら?」

 マリーとベルが駆け寄って心配げに僕の傍に寄る音が聞こえる。

「うん、この先に砦があった」

「流石。やるじゃないの」

「せしる、すごい!」

「二人のお陰だよ」

 二人に笑いかける。まだ目が見えないからどんな表情してるかわからないけど。

「OK、見えるようになった」

「じゃあ、行くわよ」

 茂みの女の子に少し水を飲ませてから3人と一匹はベースへ帰還する。


ーーーーー


「お前達、無事か!」

 ベースに帰還した僕達にダンさんが駆け寄る。

「はい、盗賊のアジト見つけました。森の中に砦がありました」

「でかした。やるじゃねえかよ」

「まずこの子の介抱をお願いします」

 ベースにいる僧侶に女の子を引き渡す。


「私、アニー。あなたは?」

「セシルだよ」

「セシルありがとう!このご恩は必ずお返しします」

 僧侶に先導されながらアニーは医務室に入室した。

「よくあの子を助けられたな。お前もあの子にとっちゃ英雄だな」

「いえ、そんな。想定外の行動申し訳ありませんでした」

「それが分かっているなら、今回はいい。冷静に見極めて行動しろ。以上だ」

「わかりました」


「隊長様よ、こいつも立派な冒険者だと思わないか」

 ダンさんの目線の先にはトール兄さんがいつのまにかいた。

「そうだな。確かに立派な行動だ。セシル、よくやった」

 兄さんに初めて褒められた。口を開けるが上手く言葉にならない。

「彼は立派な冒険者よ」

 挑戦的な目でマリーがトール兄さんを睨む。

「違いない」

 降参のポーズをしながら騎士団のベースに兄さんは戻る。

 僕はやれたんだ。


ーーーーー


「斥候やってみた感想はどうだったか?」


冒険者ギルドで、ガトーおじさんに声をかけられる。

結局あの後は騎士団が砦に侵攻して見事、盗賊を捕縛もしくは成敗した。

これで安全に道を通れるようになった。


「上手くいって嬉しかったです。でも、まだまだ足りないと思いました」

「そうね。勉強しなければならないことが沢山あると思ったわ」

「そんなもんだよ。生きてりゃいいことあるさ」


「マリー、これからも僕と一緒に冒険してくれないかな。君と一緒なら上手くやれると思うんだ」

「えっ、えぇ、いいわよ。お願いされたら仕方ないわね。私がいなくちゃ、あなた何も出来ないものね!」


 無駄に見栄をはるマリーに微笑みかける。

 彼女は顔を真っ赤にしていた。

読者様へ


本作はこれにて終了です。

読んでいただきありがとうございました。

次話はあとがきで、あれこれ実際に感じたことや今後の予定について書いてみたいと思います。


76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。

より面白い物語が書けるように精進してまいります。


今後ともお付き合いいただけたら幸いです。

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