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チートスキル欲しいっすか?

「村の英雄、セシルとマリーに乾杯!」

「「「「かんぱーい!!」」」」


 小心者のマリーがさも当然というようにビクビクしながら振る舞われたお酒を飲んでいる。

 僕も相伴にあずかっている。


 あの後、まず村に戻りデボン村長に事情を説明した。

 指輪を見せた所、ハイオークが持っていた指輪が、娘さんの結婚指輪であり、文字通り泣いて喜んでいた。

 これで娘の結婚式を挙げられるとのことだ。


 僕達は僕達で、村に一泊させてもらい、念の為ゴブリンの討ち漏らしがないか、洞窟に異常がないかチェックした。

 結果から言えば、ゴブリンの討ち漏らしはなく、洞窟も異常がなかった。

 村からニューランドに向かう予定のある方に、冒険者ギルド宛の手紙の配達を頼んだので、ガトーおじさんに怒られることもないだろう。


 村に戻ったら戻ったらで、満面の笑みで村の方々に迎えられる。

 娘さんの結婚式と冒険者を英雄として称える催しが開催された。

 

「いやー、坊主、大したもんだな」

「坊主はないだろ!坊主は!村の英雄様に何言ってんだ」

「坊主で構いせんので」


 村の男衆が褒め称えてくれる。やったことが認められるのが素直に嬉しい。


「マリーさん、髪の毛サラサラでいいなぁ」

「女性で冒険者って大変じゃないですか?」

「まっ、まぁ、普通よ!」


 マリーはマリーで村娘と花を咲かせている。


「セシルさん、マリーさん、改めてお礼申し上げます」

「無事に式を挙げられたのはお二人のお陰です。何と感謝したらよいか」

「いえ、式が挙げられてよかったですね」

「人として当然の行いよ!」


村長の娘さんが幸せそうにはにかむ。

旦那さんが腰を抱いている。

ベルも満足そうにチーズを食べている。

そんなこんなで、気持ちよく夜は過ぎてゆくのであった。


ーーーーー


「お前さん達、ご苦労だったな」

「いえ、ギルドに戻るのが遅れてすみません」


 結局、酔っ払った状態で出発するのは危険なのでもう1泊してニューランドに戻った次第である。

 ギルドに到着は14時頃だ。


「送ってくれた手紙で概要は理解しているつもりだが、どんな状況だったんだ?」

「ゴブリンを2匹討伐後にハイオークと遭遇し、運良く倒せました」

「ふむ・・・」


 まじまじを僕達を凝視する。腹の探り合いになったら勝ち目はなさそう。内心ドキドキしながら次の言葉を待つ。


「ハイオークがいたのは完全に想定外だった。無事に戻ってきてくれたこは嬉しく思う。でだ、どうやってハイオークを[運良く]倒せたんだ?」

「絶体絶命になった時に神様の声が聞こえまして、力を授かりました。その力を用いてハイオークを何とか討伐出来ました」

「彼が言ってることは本当です。て私が目の前で見ていたわ」

「坊主が嘘を言っていないとは信じている。嘘付くならもうちょい出来がいい嘘つくしな。どの道ハイオークの死体を見りゃ分かる話だ」


 チラッとおじさんがベルを見る。


「何にしろ不思議な力は、あんまり乱用しない方がいいぜ。土壇場で使えなくなったじゃ笑えんからな」

「ええ、なるべくそうしようと思ってます。後、相談があるんですが・・・」

「何だ?」

「出来ればハイオークは洞窟で死んでいたということに出来ませんか。なるべく目立ちたくないです」

「まぁ、そう出来ないことはないけがどうしてだ?」

「その方が話は自然ですし、自分自身がよく分かっていないので」


 現状では一発打って気絶してるんじゃ話にならない。

 使うにしてももっと調節が利かないと実用の範疇ではない。

 後、他にも使い方の工夫が出来るかも知れない。今のままじゃ魔法使いがいればよいだけの話だ。


「分かった。ハイオークは洞窟で死んでいたと騎士団に報告する。とりあえずお前らは帰って休め。また明日来い」

「分かりました」

「分かったわ」


 ハイオーク、個人で相手するのが困難なモンスターは騎士団、組織の領分。ハイオーク以外にもオーガ、ワイバーン、ワームなどが相当する。


「マリーはこの後どうするの?」

「えっ、そうね。ちょっと用事があるから今日は別々ね」

「分かった。後さ、もしよかったらさ、また一緒に冒険いけないかな。一緒に行けて本当に助かったよ。改めてありがとう」

「そうね。考えさせて。私も冒険に行けてよかったと思うわ」


 少し弱々しく曖昧な笑みを返す。

 何か気に障ることをしてしまったのか?

 

ーーーーー


同日20時過ぎ、冒険者ギルド。


「ん?嬢ちゃんどうした?」

「おじ様、少しよろしいかしら?」

「ああ、いいぜ」


 心なしか元気がなく、肩が丸まっている。

 いつかのやりとりの如く、お茶を出してやる。

 一口飲んで落ち着いたのかポツリポツリと心情を紡ぎ出す。


「彼と同じ場所で冒険をしていたと思ったのに、何だか随分先をいかれてしまったような気がするわ」

「どうしてそう思う?」

「彼、本当に不思議な力に目覚めたの。ハイオークを目の前にした時、本当に死ぬことを覚悟したわ。私、あの場で何も出来なかった」


 つまり、自信喪失してるわけか。

 俺からしてみりゃ、五十歩百歩な話だが、当事者にとっちゃ違うということだろう。


「現場にいなかったから詳細はわからんがな、お前さん達は見事ゴブリンを討伐した。それじゃいかんのか? ハイオークがいたのは運が悪かったと考えられないか?」

「考えられないわ」

「じゃあ、こういう考えはどうだ? もしもハイオークではなくドラゴンいたらどうだった?坊主はドラゴンを倒すことは出来たと思うか?」

「・・・多分、無理だわ」

「普通に考えりゃ、そうだわな。 俺は倒すのはあくまで手段の一つにすぎないと思うぞ。勝つことよりも、無事に生き残ること。そっちのが俺達冒険者にとっちゃ重要なことだと思うがな」

「それでも羨ましいものは羨ましいわ!」

「んじゃ、頑張ってやってくんだな。強くなる方法は一つじゃないと思うぜ」


 いつものテンションに戻ってるし、後はまぁ大丈夫だろ。

 さて、次はどんな依頼を紹介してやるかね。

読者様へ


読んでいただきありがとうございます。

76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。

より面白い物語が書けるように精進してまいります。


今後ともお付き合いいただけたら幸いです。

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