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ゴブリンを蹂躙する方法

「帰ってこないわね・・・」

「うん・・・」


 マリーが無表情でポツリと呟く。

 何とも言えない気持ちで僕も同意する。


 時刻は22時。約束の時間はとうに過ぎている。

 冒険者ギルドにいるのは、僕とマリーとガトーおじさんだけだ。


「さて、約束の時間はとうに過ぎている。お前たちもさっさと宿に帰るんだな」

「後30分だけ待たせてください。お願いします。」

「チッ、しょーがねーなぁ。 ホレっ飲んどけ。」


 わざわざお茶を2つ出してくれたおじさん。

 頭を下げて受け取り、一つをマリーに渡す。

 マリーもおじさんに頭を下げる。

 おじさんの顔に似合わず優しい味がする。じんわりお腹が温まる。


「私、あの肉団子を死んで当然だと思わってるわ。それでも人が死ぬのって嫌だわ」

「じゃあ、ひょっこり顔出して欲しいと思う?」


 わざと意地の悪い質問をする。


「思うわけ無いでしょ!あんな奴の顔見たくないわよ。それでも嫌なものは嫌なのよ!」

「そうだね」


 マリーは腕を組みながら忙しなく周囲を動き回る。難儀な性格をしているみたいだ。僕は嫌いじゃないけど。


「俺達は慈善事業じゃねぇんだ。準備を怠ったやつからくたばる。それが冒険者の常識だぜ?お前達に今必要なことは何だと思う?」

「・・・ゴブリンを知ること」

「上出来だ。じゃあ、どうすればゴブリンを知ることが出来る?お前達は知っているはずだぜ?」


ーーー


「あら?セシル君にマリーちゃん、それにベルちゃんじゃない。今日は三人一緒なのね」

「ソニアさん、こんにちわ」

「ごきげんよう」


 街の中央図書館で司書をやっているソニアさんに挨拶する。

 足を組み、ページを捲りながら問いかけてくる魔女。

 全身色白で髪の毛は真っ黒。典型的なブルネットだ。

 黒いローブに鍔の大きい黒い帽子を被っている。

 身長は僕より高く胸元は豊かに膨らんでいる。グラマラスな大人のお姉さんだ。


 マリーは対して起伏のない自分の胸を抱きかかえるようにしながら恨めしそうにソニアさんを見る。

 僕と目線が合うとキッと睨みつけてくるが慈愛の眼差しを向けると脛を蹴られそうになり慌てて回避する。


「今日はどんな本を探してるの?薬草の本かしら?」

 蠱惑的な声で微笑しながら問いかけてくる。

「モンスター、ゴブリンについて分かる本、ありませんか?」

「そう、ゴブリンね・・・ゴブリンに関してならC49の棚にモンスター図鑑があるわ」

「C49、モンスター図鑑・・・わかりました。ありがとうございます」


 おじさんの問いに答えるために中央図書館に来ている。

 まずは、ゴブリンを知り、何を用意し、何に注意するか調べることからスタートだ。


 余談だけど中央図書館は月額銀貨1枚で利用可能。決して安い値段ではない。

 必然的に大人向け、文字が読める人向けの施設となっている。

 相対的に収入、教養がある人間に限られえていて、利用者の質はかなりいい。


 ちなみに、魔導書の類など希少品、危険性のある書物は一般人は読むことがが出来ない。

 魔導書、知識を司る魔術師ギルドが図書館を運営している。

 そのため、魔女ソニアさんが司書をやっている。


ーーーー


「モンスター図鑑、モンスター図鑑・・・あった!」

 背伸びして百科事典のような本をとる。

 その両隣にモンスター物語とか、本当は怖い村訪問が気に鳴るけどとりあえず今は無視する。

 

 閲覧コーナーの机にモンスター図鑑を置き、二人で両隣に座り、肩がぶつかりそうになってちょっと彼女を意識する。

 ページを捲ると冒頭に著者挨拶、目次と続き、本文には両面見開きで2ページで1モンスター紹介されている。

 マーフォーク、シルフ、ピクシー、ハイオークと噂話だけで聞いたことのある名前が続く。噂通りのものもいれば、噂と異なるものもいて案外面白い。


「案外ピクシーってえげつないことするのね・・・」

「とりかえられた子供はどうなっちゃうんだろう・・・。って、今日はゴブリンを調べるよ」


 モンスター図鑑には【ゴブリン】はこのように記述されていた。

 ゴブリンは最も人類と遭遇機会のあるモンスターだ。

 身長は1〜1.2m程度。夜行性で好奇心が強く、臆病で残忍。

 大人程度の腕力はないが、12歳前後の力はある。

 石や棍棒で武装し、通常30匹〜50匹の群れを形成している。


 人類と比較し、2つ優れていることがある。

 繁殖力と夜目が効くことだ。


 ゴブリンの繁殖力は旺盛だ。年に4回子供を出産し、生まれてから3ヶ月で成人する。異常な成長速度こそがゴブリンをゴブリンたらしめている。群れは常に定員超過し、口減らしの意味も兼ねて常に人類を始めとする異種族へ略奪を繰り返している。いくら殺しても減らないのだ。

 子供程度の知性を有し、複雑な道具を発明することは出来ないが、略奪した品々を上手に使いこなす。常に内部抗争、強烈な足の引っ張り合いをしているが、それが群れの練度向上に大きく寄与している。下手な組織よりも統率が取れていることがある。古参のゴブリンは侮り難い司令官だ。


 時折、少人数のゴブリンが徘徊していることが、あれは斥候か内部争いに破れた野良ゴブリンのどちらかだ。

 見かけたら速やかに駆除する。それがゴブリンに対する適切な処置だ。放っておけばゴキブリの如く増殖する。


 夜目は人類の2倍効く。暗所でも周囲をぼんやりと視認することが出来る。多くの犠牲者は洞窟のような光源がないと周囲が分からない場所で囲まれて命を落とす。


 浅はかであるが狡猾。知らぬ者ほど侮る。

 都市部で出現することは滅多にないが、村々にとっての最大の災厄は間違いなくゴブリンであろう。

 

「やっぱり二人で巣穴討伐は無謀だよね」

「そうね・・・。戦うとすれば如何に野良ゴブリンの討伐じゃないかしら?」

「僕もそう思う。いかに一対一の戦いに持ち込むか?その一点に尽きるんじゃないのかな」


 予想以上に難敵な予感。

 ハイオークのような上位モンスターを討伐するのは夢のまた夢だ。

 何の準備なしに戦ったら殺されるのはこちら側だ。

読者様へ


読んでいただきありがとうございます。

76万作以上ある「魔境なろう」で、僕の物語を読んでくれたことに只々感謝です。

より面白い物語が書けるように精進してまいります。


今後ともお付き合いいただけたら幸いです。

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