後編
とうとうクリスマス前日になってしまった。
未だに優太の本当に欲しいものはわからないままだった。
今日中になんとか聞き出さなければ。
焦燥感が生まれ始めていた。
そんなときのこと。
「パパー!」
「どうした?」
「サンタさんにお手紙書くから紙ちょうだい!」
「まだ書いてなかったの?」
「何にしようか決められなくて…」
優太は何故か目を背けた。
なにか企んでいる。
なんとなくだがそんな気がした。
「紙って……。こんなんでいいか?」
便箋ほどのサイズの白い紙を優太に渡した。
「うん!パパありがとう!」
「どういたしまして」
「じゃあお手紙書いてくるね!」
「あ、優太!」
「ん?」
「お手紙書けたら字が間違ってないか見てあげようか?」
「ううん!いい!」
「でも、間違ってたらサンタさん読めないよ?」
「大丈夫!ちゃんと書けるから!」
「ちょ……優太」
優太は言い切ると走って自分の部屋に行ってしまった。
実はこの時になるともう諦めようという気持ちになっていた。
一応おもちゃも買ってあるし、そこまで隠そうとしてるのに無理やり聞き出すのが申し訳なくなってきていたのだ。
「明日になったらこれをあげて、欲しくないものだったらまた改めて一緒に見に行こう」
そう思いながら夜が更けるのを待ち、優太の枕元にプレゼントを置いて眠りに就いた。
次の日の朝。
優太がプレゼントとサンタ宛の手紙を持って部屋から出てきた。
そして私の顔を見ると表情がどんどん曇っていった。
「これってパパがくれたの?」
「え?」
私はドキッとした。
「パパは何もしてないよ?優太がいい子にしてたからサンタさんがプレゼントをくれたんだよ」
「……ちがう」
「え?」
「ぼく、こんなのお願いしてない……」
「でも、これ欲しがってたやつでしょ?お願いしたのとは違ったのかもしれないけど、これもよかったじゃん」
「サンタさんはお願いしたのくれるはずなのに……」
「それは……ほら、サンタさんは世界中の良い子にプレゼントあげるから、ちょっと間違えちゃったんだよ」
言い訳が苦しかった。
「そんなことないもん……」
「どうして?」
「だって、他の誰もお願いしないもん……」
「ん?」
私は違和感を抱き、優太から手紙を受け取った。
「もう読んでもいいよね?」
「……。」
2つ折りにされた手紙を開いた。
ひらがなと少しのカタカナだけでサンタさんへのお願いが書いてあった。
それを読むと私は膝から崩れ落ち優太を抱きしめた。
「パパ。サンタさんはうそつきなの?サンタさんいないの?」
「サンタさんはちゃんといるよ。嘘なんかついてないよ?」
「だって……」
「優太。ほら、パパの顔を見てごらん?嘘ついてるように見える?」
震える声で優太に告げると、私は手紙を握りしめ優太にニコッと笑って見せた。
笑って細くなった目からは涙が溢れていた。
サンタさんへ
ぼくのママはしんでいなくなっちゃいました。
ママがいなくなってからずっとパパががんばってくれました。
ぼくはとてもうれしかったです。
でも、ママがいなくなってからパパがわらってるとこがみれなくなりました。
ぼくのためにいっぱいがんばったからつかれちゃったんだとおもいます。
サンタさん。
ぼくはおもちゃもゲームもいりません。
ぼくはまたパパのわらったとこがみたいです。 ゆうた