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2人だけのクリスマス  作者: くまねこ
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中編

今年もクリスマスまであと1週間となっていた。

親目線だとクリスマスにやらなければならないことがある。

クリスマス当日の食事。ケーキの予約。

そして一番重要なことは、息子の欲しいものを聞き出す。

そしてクリスマスまでに用意するということ。


さっそく聞いてみることにする。



「クリスマスまで1週間だね」

「うん!」

「優太はサンタさんになにお願いするの?」

「教えなーい!」

「教えてくれないの?」

「うん!」

「パパがサンタさんに伝えておくからさ」

「お手紙書くからいいの!」

「じゃあ書いたらパパがサンタさんに渡しておくよ」

「ううん!ベッドのところに置いておいたらサンタさん読んでくれるもん!」

「あぁ……そうだったっけか……」

「うん!だからパパには教えないもん!」



失敗してしまった。

こんなにも手強いとは思わなかった。

妻は今までどうやって聞き出していたのだろう?

とても疑問だった。



その次の日も、またその次の日も。

優太は教えてくれなかった。

誰に似たのか、とても頑固だった。

そんな調子でクリスマスの3日前になっていた。

プレゼントを買いに行くということも考えると明日までには聞かないと間に合わない。

なので、最後の手段をとることにした。

それはショッピングセンターに優太を連れていくことだ。



「優太。お出かけするから仕度して」

「どこ行くの?」

「内緒」

「えー!」

「いいから仕度して?はやくしないと時間足りなくなっちゃう」

「はーい」



ほどなくして仕度は済み、ふたりで車に乗り込んだ。

そして車を走らせること約1時間。

大型のショッピングセンターに着いた。

ここにはおもちゃが置いてある店から、洋服やら家具やら。

なんでも手に入るような場所だった。

とにかく広くて、目的なしで歩くと1日では回りきれないのではないだろうか?

それくらい広いところであった。



優太は目をキラキラさせながら歩いた。

作戦成功だ!と、確信を得た私はさりげなくおもちゃやゲームを扱っているお店に向かっていた。



「ここ見てみる?」

「いいの!?」

「もちろん」

「パパありがとう!」

「いいえ」



おもちゃを見る優太の目はとても輝いていた。

恍惚とはこういうことを言うんだろうなぁなんて思っていた。

私はこのとき、優太の欲しいものを見つけるという当初の目的を忘れそうになっていた。

こんなに楽しそうにしている優太を見るのは久しぶりだったからだ。

「これからもたまには連れて来てやろう」

そう決心した。



「パパー!」



優太の呼ぶ声で我に返った。



「どうしたの?」

「ほかのとこも行きたい!」

「え?ここはもういいの?」

「うん!ここすっごく広いから、いろんなお店見たいもん!」

「いや、でも……」

「パパ!はやくー!」



優太が私の手を引っ張る。

そしてそのまま店を出てしまった。

結局優太の欲しいものがわからないままだった。

だけど久しぶりの外出は私自身もとても楽しかったし、優太も楽しそうでなによりだった。

「作戦は失敗だったけど、来てよかったな」

私はボソッと呟いた。




それからショッピングセンター内を日が暮れるまで歩き回った。

車に戻ると心地よい疲れを感じた。

優太も疲れて眠ってしまっていた。

眠っている隙に私は、男の子の間で人気だと言われるおもちゃを念のため買っておいた。

「明日もう一回聞いてみてダメだったらこれをあげよう」と。

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