俺としては、ハズレ職
天職判明!
大人達に引率されてワイワイとはしゃぐ子供達とは別に、どんよりとした雰囲気を背負いノアは歩いていた。
「ノア、いつまでもそんな顔してんじゃねーよ」
隣を歩く少し年上の友人マークがグシャグシャと頭を撫でてきた。
少し痛みを感じるくらいなのは、どんよりとしたノアを元気づける為なのだろうがノアにとっては痛いだけで眉間に皺を寄せただけだった。
「良いよなマークは、なりたかった商人が天職でさ。俺なんか聖騎士どころか騎士にも僧侶にもなれなかったのに……調合師なんて誰も知らない天職だぜ」
望んだ聖騎士どころか両親の天職どちらかの系統でもなく、聞いたこともない天職だった。
両親の活躍を聞いて育ってきたノアにとって、両親みたいに冒険出来そうにない天職は世界が終わったように感じた。
「あー……確かに天職の神官でも知らない天職なんてあったんだな。あれは驚いた」
望んだ天職に就けたマークは、やや気まずそうにしながらノアの天職を調べていた時の神官の様子に同意した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
神殿で天職を調べる為に順番待ちをしてやっと自分の番が来たとノアは神官の前に立った。
順番待ちをしている際に服に付けられた年齢と健康状態を示す札を見る神官。
「ふむ、最年少の子供か。身体も健康、天職を調べるには問題ない。少年よ、天職を調べるには名前も重要なのだ。君の名はなんという」
「ノア・ラグナリックです!聖騎士になりたいです!」
「なりたい天職に必ずなれる訳では無いが目標がある事は良い事だ。では、ノア・ラグナリックよ、これから天職を調べる術をかける。何も痛いことは無い楽にしていい」
「はい!」
楽にと言われてもこれから天職がわかるのだ。
楽になど出来ずノアはドキドキと興奮を抑えきれなかった。
神官の手がノアの頭上にかざされ、ほのかに光る。その光がゆっくりとノアに降り注ぐとノアの身体が光って消えた。
光りが消えたことで行使された術が終わったことがわかったノアは期待を込めた瞳で神官を見つめた。
しかし、神官は何も言わない。頭上にかざした手もそのままで無言だった。
待ちに待った天職がわかるのだ、焦らさないでほしい。
「天職はなんだったんですか?」
ノアは早く天職を知りたくて神官に呼びかけた。
しかし神官はノアに答えることなく無言のまま、また術を行使した。
「え?」
術の光りが消えてもまた神官は無言だった。
そしてまた術を繰り返す、何回も……。
さすがに不安を感じたノア。
周りの人達も様子がおかしいと見ている。
何十回も術を行使した神官が溜め息とともに術を終わらせた。
「あ、あの」
「調合師。君の天職は調合師という天職らしい」
「調合師、らしい?」
「未知の天職だ。このような事は前例にない。神官長たる私の経験でも膨大な過去の天職を載せた文献にも」
知識不足を悔いているのか術を行使しすぎて不調なのか、神官もとい神官長は眉間に皺を寄せ口元はへの字だった。
【調合師】なにやら響から戦うことが出来ないような気がしたが、魔術師などの系統かもしれない……
そうだ祖父が魔術師だったのだからその系統の可能性もある!
「あの、調合師というのは戦うことが出来ますか?ほら、魔術師みたいに」
少しの間無言が続いたが、神官長は少し言いづらいような顔をして言った。
俺にとっては絶望的な言葉を……
「私の経験的には調合師というのは薬剤師と同じような系統に感じた。つまり、君にとっては残念だが戦うことは出来ないハズレ職だろう」
血の気が引く音を聴いたような気がした。
調合師は戦うことが出来ない。薬剤師と同じ。
両親のような冒険が出来ない。
明らかに落ち込み俺の顔色が悪くなったせいか、神官長が励ますように付け足す。
「だが、未知の天職ということは世界で調合師という天職は君だけだ。世界で初めての調合師になったと歴史に残るだろ。調合師についていろいろわかったら資料として遺したいから神殿に伝えてほしい。調査協力として謝礼を出そう」
その言葉は俺を元気づけるには足りなかった。
まで書けました。




