想い
御門は授業の準備をすると言って、出て行った。ぼーっとしてそうで意外に真面目だな。
「だってよ唐草。」
少し前から陰にいた唐草に声をかける。感情が匂って仕方がない。
昔のことでも思い出しているのだろうか。空も同様らしい。
「本当に覚えてなさそうだな。・・・・ショックでその部分だけ記憶がないのか?」
「まぁその説が一番濃いでしょ。無かったことになんかできるはずがない。」
回想に入りかけると空がぎゅっと手を握ってきた。そろそろ行かなくては間に合わないか。
「なんでもいいけどそろそろ行こうよ。トランプやって遅刻なんて笑えない。」
「そうだな。」
本当に無いものになんてできるはずがないのだ。
だってこの匂いは大切な人が消えた日からするのだから。
目を覚ますと教室はオレンジ色で染め上げられていた。
本を読んでいたらそのまま寝てしまっていたらしい。
そろそろ帰ろうかと顔を上げると唐草がいた。朝は双子、夕方は唐草とよく絡まれる日だ。
「御門、」
「帰ろうか。」
何かいいかけていたけれど唐草の表情を見ていると聞かない方がいい気がして遮った。
「そうだな。」
どこかほっとしたように見える。
誰かと帰るなんて久しぶりで何を話せばいいのか分からなかった。自然と歩みは神社の方へと向いていく。
「あ、、」
「どうかしたか?」
「神社に双子がいる。」
唐草は少し呆れた顔をして本当によく見えるんだな、と言った。
向かう気にはなったらしくもう森の入り口だ。
到着すると待っていたかのように双子の声がした。
「「かくれんぼしよう!」」
・・・・・・・・トランプの次はかくれんぼか。