意外な
取り敢えず神社に向かう。ここら辺の神社といえば夢森神社だ。あの小さな祠も一致するし、何より自然と引き寄せられる。
夢森神社は森の真ん中らへんにある。入り口に立って奥を伺えば人影が見えた。多分、三つ。しばらく歩いて鳥居をくぐる。中にいたのは意外な人だった。
「えっと・・・・?御門?」
「「まさかの。」」
声をかけてきた三人はクラスメイトだった。唐草と空と海。空と海は双子。
授業でグループになれば少し話すくらいだ。実際はほとんど喋った事がない。というかまさかなんて失礼だな。二人で息ぴったりだ。薄々分かっている事だが尋ねられる。
「夢を見て、来たのか?」
「うん。意外な三人だけど。」
言ってからへらへら笑ってしまう。なんとなく唐草の目は苦手なのだ。中を見透かされそうで、大した中身のない自分としては気まずい。いや、目じゃなくて声音かもしれない。改めてみるとそう感じる。
「なんでこの四人なんだろう。」海がつぶやいた。
「なにか共通点でもあったけ。」考えてみるが同じクラスという事しか思い浮かばない。
一通り思考を巡らせていると唐草が口を開いた。
「俺たちは森の入り口付近で会ったから入ろうと思ったけどここだっていう確信はあったわけ?」
「それは森に入ろうと思ったときに三人いるのが見えたしなんとなく引き寄せられたし。」
「「「見えた?」」」
「それって入り口付近からここまで見通せたってこと?ある程度距離があるのに?」
空が重ねる。まずいな。冗談だと思って流してくれないだろうか。
嘘だよーと言って流せばいいのに口の中がカラカラで言葉は出てこなかった。顔を上げると皆思ったより真剣な表情をしていた。
「そうだよ。嘘っぽいけど本当によく見えるんだ。ただ視力がいいなんてレベルじゃなくてビルの中の人が何をしているとか表情までよく見えるくらいはね。」
気づいたら話していた。信じるも信じないも個人の自由だ。空が突然走り出した。一般人には見えないであろう距離までいき戻ってくる。
「今、指何本立ててた?」
「三本。」
「当たり。」
三人は思ったより驚いた顔をしなかった。海が空に目配せをして空が頷いた。
「共通点分かったかも。」海がまた話し出した。
「私たちは鼻が異常に良い。物の匂いじゃなくて感情の匂いに対してだけど。御門は目が良いってことは唐草も何かあるんじゃないの?」
「まぁね。耳が良いんだ。ドアを閉めて小声で話していたとしても外からはっきりと聞こえる。」
意外とあっさりと口にしたことは驚いたけれどこれで共通点は分かった。どこかが異常に発達している。空が少しためらってから口を開いた。
「こういう風になったのってもしかして、その、きっかけがあった?」
空気が揺らいだ。そこに、触れるのかと。けれどまったく心当たりはなくてその空気自体に動揺した。
「あぁ。はっきりあったよ。ある日突然ではなかった。」
唐草が答えるのをどこか遠くで聞きながら、自分はいつからそうなったのか思い出そうとした。けれど、確かにその境目に何かがあったはずなのにぼんやりとしている。
「きっかけなんて思い出せないや。」
その言葉はさっきの話よりよほど衝撃があったらしい。皆こちらを見ている。なんか恥ずかしい、とか心の中で冗談をこぼしつつ今日はもう帰ろうと声をかけた。
家に帰ると夕飯の匂いがした。
ただいまと言い廊下を歩いているとふと柱の傷に目が留まった。成長の記録ってやつだ。
よく見ると一本の線の上に必ずもう一本あって二本セットで記録をつけてあるように見える。
何年か区切りでセットにしてあるんだっけな。昔のことでもう思い出せない。
この日は夢を見なかった。