03-1
何話構成になるか、現在は不明です。
光佑様にあてがわれた部屋のドアの前には、私を含め2名がお付きメイドとして立っていました。
「ねぇ、あの人がいた世界ってどんな感じなんだろね」
特に思うようなこともないし、とりあえず「さぁ?」と答えておく。
でも、勇者のいた世界か・・・・・・
少なくとも今の私たちほど危険な世界じゃないと思う。
ほんとかどうかは分からないけど、戦闘能力は無いって言ってたし、頻繁に誰かが召喚される世界だとしたら、戦力が無くなるのは困るはず。
自分の世界が平和でないと、あんな反応はとれないよね。
『うおおぉぉぉぉぉ!!』
突然、部屋の中から叫び声が聞こえてきた。
暗殺や身の危険であれば別の声を発するような気もしますが、何かあってはいけないので、とりあえず聞いておこうかな。
ドンドン!!
「光佑様! 光佑様!! 大丈夫ですか!?」
声をかけながらドンドンと扉をたたいていると、光佑様も素に戻ったのか
「だ、大丈夫です!」
もしかして拒絶された?
異世界の方は今着ているようなメイド衣装が好きだということで、無駄にひらひらして通常業務を行うには向いてないと思われる服装を着せられているんだけど……きっと、さっきは驚きと羞恥によって焦っていたんじゃないかな。
とりあえず、もう一言くらいかけておこう。
「なにかありましたら、お手伝いいたしますが?」
「いえ、結構です!」
ここまで驚いているということは、勇者特有の「すごい能力」が光佑様も驚くような内容だったとか。
少しは探りを入れた方が良さそうかも。
「ルラン、ちょっとコッフェ淹れてきて」
「わかった」
もちろん隠語ね。意味は「情報を引き出せるように、一通り配置して」ってこと。ルランはもう一人のお付きメイドの名前。
コッフェは昔の勇者がコーヒーをよく飲んでいたから、怪しまれないようにと聞き間違いで済むレベルとして付けられたらしい。
ちなみに、光佑様の服に関してはすでに着替えているので、特別怪しいものはなかった。一応、平べったくて光ったりする道具はあったけど、それだけだ。
転移装置だとしても、直接的な武器にはなりづらい。
勇者が悪人という例は今までないらしいけど、悪人なら私たちの末路が変わらなかったってだけだし特に気にならない。
藁にも縋る思いでやったけど、そのわらが私たちを救えるほどの良い藁じゃなかったってだけだからね。
お付きメイドとしてここに立ってはいるけど、呼ばれない限りは暇なんだよね~
なんて考えていた時、部屋の中から強力な威圧感を感じた。
「……な、なに?」
それは一瞬で収まり、何事もなかったのように思えてしまう。
事前に一言もなかったということは隠してるんだろうし、声はかけない。
でも、私をビビらせたんだから聞き耳くらいは立ててもいいよね?
『すげー!! 一瞬で出てくるとか、マジすげー!!』
何かを出していたと言うこと?
王様から勝手に入らないように、と事前に止められていなければ、絶対に突撃していたところだよ。
まあ、それもあと少しの辛抱・・・・・・あ、来た来た。
「先輩お待たせしました」
ルランが飲み物を持ってきた。
コンコン
「光佑様、飲み物をお持ちしました」
『あ、はーい』
良いとも悪いとも言われなかったので、止められる前にさっさと扉を開け中に入った。