①
あ、猫子さんがいる。
教室に忘れ物をした私は放課後、戻ってくると猫子さんが窓側の自分の席に頬杖をしながら足を組んで黄昏ていた。
猫子さんは私と同じクラスの同級生で私の隣の席に座っている少女だ。そのあだ名の様にまるで猫の様な性格の少女だ。
授業中はほとんど寝ていたり、屋上で日向ぼっこするのが趣味だったり、一人でいるのが好きだったりまるで猫が擬人化したような人だ。だから『猫子』と言うあだ名を付けられた。
しかしそれだけじゃないと私は思う。猫子さんのあだ名の意味はこれなんじゃないかと私は思ってしまった。
猫子さんの周りには色んな種類の猫が自由気ままに教室に居座っている。
「青江さん、そんな所で固まってないでここに座れば?」
窓の外を見ていた猫子さんが視線を私の方に向けた。その声に合わせた様に座っていたトラジマの猫と寝ていた黒白の猫が私の方を見ていた。
私はドキリとしたがそれを気にしないふりをして猫子さんの言われるまま猫子さんの席に座った。
「忘れ物?」
「え、あ、うん。数学の宿題に必要だったから……」
「ふ~ん」
素知らぬ顔で猫子さんはまた視線を外に向けた。数学の宿題は猫子さんも出されているのに。まあ猫子さんは宿題を出した事は一度もないけど。
いつの間にか周りにいた猫達がいなくなっていた。
「あ、あれ? 猫達は?」
「ああ、あの子達は出て行ってもらった。あんなにいたら青江さんも話にくいと思って」
平然と話す猫子さんに驚きはしたが、やはりあの『噂』は本当だったんだ。
『猫子さんが猫と話す事が出来る』て言う噂。
根拠は一度だけ授業中に猫達が開いていた窓から入ってきてクラスがちょっとパニックを起こしたらしいけど、猫子さんだけは冷静に『邪魔』の一言で好き勝手していた猫達が窓から出ていてくれた。
「あの猫子……伊神さん」
「猫子で良いよ~それよりさ」
猫子さんが私の顔に近づいてきた。私の鼻と猫子さんの鼻がくっつきそうだったので思わず私は仰け反った。
顔を近づいて分かったけど猫子さんの眼は何となく猫の眼にそっくり。
「な、何?」
「何であたしのあだ名が『猫子』なの? 『猫太』の方が語呂が良いじゃん」
「そ、それは伊神さんが女の子だからじゃないカナ?」
「だからて何で『猫子』なの? 『猫太』の方が良いじゃん」
「どうして『猫太』が良いの?」
「だってかっこいいじゃん」
「……」
猫子さんのセンスが心配になってきた。
「ところで青江さんは瞳孔君と知り合い?」
「ど、瞳孔君?」
「ほら瞳孔が開いている人。綺麗な緑色の髪をした」
「あ、ああ琉人の事」
「そうそう。青江琉人君」
瞳孔君では分からなかったけど、猫子さんの『綺麗な緑色の髪』で分かった。ウチの学校では緑色の髪の人は琉人だけだ。
……そりゃあ琉人の瞳孔ちょっと開いているからってそのあだ名は酷いと思う。
「この間青江さんと一緒に帰っていくのを見ちゃったから。ほら瞳孔君ウチの学校じゃ有名な不良じゃん。クラスメイトで真面目な青江結子さんがどうしてだろうと思って……ん? 『青江結子』と『青江琉人』…………もしかして」
「多分猫子さんが考えている通り。私と琉人は実の兄妹なの。二卵性双生児の」
「へえ~そうなんだ。そう言えば青江さんの眼の色と琉人君の眼の色て同じ金色だよね」「うん。それ位しか琉人に似ているのがないから」
「ふ~ん。……しかしあの凶悪顔からどうやってこんな可愛らしいスタイル抜群な妹さんが出来るのだろう」




