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コンパニオン

目を覚ますと、白い天井と白い光を放つ蛍光灯が目に飛び込んできた。


飛び起きると、俺はベッドの上にいた。

白い掛け布団と白いスーツでとても清潔なベッドだ。


周りは白いカーテンで囲まれていた。




ここは……


少し考えて、すぐに答えは出た。


ここは学校の保健室だ。



俺はなんで保健室にいるんだ??


考えていると頭がズキンと痛んだ。



頬に触れると痛みが増した。

そして思い出す。


俺は負けたんだ。






だが不思議と悔しさや惨めさはなかった。

むしろ解放されたような喜びがあったのかもしれない。




座ったままベッドを囲むカーテンを開けた。


その先には保険の先生とトシがいた。




「お、起きたね」



チビデブだけど優しい笑顔を振りまく保険の先生だ。



「俺……

なんでここに??」



「トシ君がアナタ背負ってここに来たのよー。

びっくりしたわー」



「トシが…」



俺はトシの方を見た。

トシは俯いていた。



「トシ、ありがとな」



「……おう!!」


トシは少し驚いたような顔をして言った。



「……あと……ごめんな」



「……あぁ…」



トシは少し、恥ずかしげを含んだ笑顔で言った。


そしてトシはこれまでのいきさつを話してくれた。



メグの口から、俺がデビルスに絡まれたことをしり、すぐにかけつけてくれたらしい。


そしてかけつけた時には、既に俺が一人が倒れていたらしい。


最初、トシは俺の借りを返すと聞かなかったが、長い説得の果て、なんとかわかってくれた。



この日、一日ずっと保健室でトシとしゃべっていた。


ふと気付く。

明日は卒業式だ。


「明日……卒業式だな」


俺は呟くように言った。


「あぁ」



トシは爪をいじりながら普段と変わらぬトーンで言った。




俺は立ち上がる。


「この前は本当にごめん」



言いながら頭を下げる。



「もういいって。

オレはもういいから、メグちゃん二度と泣かすなよな」



俺は頭を上げ、トシの言葉を噛み締めた。



「あぁ。そうだな。

もうメグは泣かせねえよ。

あとガングロにも謝っとかなきゃ」



「あぁ、亜佐美(ガングロの名前)にはオレから言っとくよ」



「へ??

なんでお前が??」



「ジョニー学校来てないから知らないだろうけど、オレと亜佐美付き合ってんだよ」



「……なんだよ。そうだったのかよ」



急に体から力が抜けてしまった。

保健室のスツールに腰掛けた。



少しして保健室の扉が開いた。


見ると、とっつぁんだった。



「こぅらジョニー、トシ!!!

テメェ等卒業式の練習サボってんじゃねえぞ!!」



「おぉとっつぁん!!

久しぶり!!」



俺は思わず立ち上がる。



「ジョニー!!テメェ何日も休んでんじゃねえよ」


とっつぁんにヘッドロックされ頭をゴシゴシと撫でられた。



俺は思わず笑ってしまった。



「テメェ等明日は絶対休むなよ!!」



そう言って俺とトシの頭をパシンと叩いて、保健室を出て行った。



「ってえ……」


トシは頭を押さえる。



「とっつぁん何しに来たんだよ……」



俺も頭を押さえ呟く。


「きっと心配してたのよー」



保健室の先生が答えた。



「ジョニー君が学校休み始めてから、先生達みんな心配してたのよー」



「みんな」かどうかはわからないが、少なくとも一人は心配してくれる人がいることがわかった。


俺は人に恵まれている。

孤独だと思っていたが違った。

こんなにも沢山の人がいてくれたのだ。


卒業式(5/5)




そして卒業式当日。



満開とは言えないが、五分咲き程度の桜が並木道に並ぶ。


この並木道を通る機会はもうほとんどないと思うと感慨深い。




周りのみんなもそうだろう。

卒業式の朝から泣いてる奴はいないが、全員どこか誇らしげな顔になっている。


普段通り二十四時間で、365日の中の1日でありながら、こうも特別な日があるだろうか??


世界からしたら大した1日ではない。

だが俺やトシ、周りのみんなが考える今日という1日は、とても深い。




人間とは心の有りよう1つで、こんなにも世界が変わってしまうのだ。







卒業式、俺の名が呼ばれる。

紙をもらった。


こんな紙切れを渡され俺達は押し流されていく。

この学校での三年間がこんな紙切れに凝縮されているのだ。



一段高いところで、下に座っている同級生達を見てみると、泣いていた。


保護者達も泣いていた。



ばぁちゃんは泣いているのだろうか??

それとも笑って喜んでいるのだろうか??



今となってはわからないが、ばぁちゃんの死が俺を大人にした。

大した関係ではない同級生達の涙で俺は大人に近づいた。

卒業証書が俺を流していく。大人になるようにと。



そうして俺は、最高の仲間と一緒に卒業した。

これからどうするかは決めていないが、きっと大丈夫だ。少なくとも気持ちだけは。







 

これにて完結です。

この作品は私が中三のころに書いた、処女作です。

それをコピペして書いてる今、見返すと、未熟さに顔が赤くなります。

今後はより高みを目指し、より良い文章を書きたいと思います。


話は変わりますが、この小説のタイトルでもあるコンパニオン、実は意味の一部に、仲間、伴侶、といった意味合いが含まれてます。

まあどうでもいい小話です。



最後になりますが、ここまで読んでくれた皆様、閲覧ありがとうございました。




―了―

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