2−4:婆孝行
俺は眼を醒ます。
結局あの後、メグは家に泊っていった。
なにが起こることもなく、いつもの朝だった。
メグが朝起きていて、朝ご飯が用意されている、という理想があったが、夢に終わり、実際は俺の横で眠っていた。
「メグ、起きろ」
メグの体を揺らす。
「うん……起きる……」
発言と行動は伴っておらず、メグは布団から出てこない。
まぁいい。俺はトイレに行って、洗面所に向かい顔を洗った。
そして俺は朝ご飯の準備をした。
メグが作ったらピラフという名のチャーハンになる。三食連続は流石にキツい。
俺は鍋に水をため、火にかけた。味噌汁を作ろう。
あとサラダ。
俺は冷蔵庫から色々取り出した。
半分以上出来上がったとき、メグがのそのそと起きてきた。
「おはよ」
「おはよ……
顔洗ってくる……」
メグは目をこすり、洗面所に向かった。
俺は鍋に味噌を投入し、ごま油と醤油を混ぜて和風ドレッシングを作ってサラダにかけた。
俺は、普段はトシに使う客人用の茶碗にご飯と味噌汁を盛った。
俺の分もよそいダイニングテーブルに運び、サラダと小皿二枚を置いた。
「おー!!
おいしそー!!」
「もうちょっと待ってなー」
箸を取り出したころに目の覚めた顔をしたメグがやって来た。
箸をメグの前に置いた。
「まあ食べて」
「ん。
いただきます!!」
俺は味噌汁をすする。
うん、うまい。
「おいし」
「そりゃよかった」
「やっぱ味噌汁は和むねぇ」
「ばばぁか」
突っ込みながらも和んでいた。
「ジョニーの夢ってなに??」
朝ご飯を食べ終わり、制服に着替えて、学校に行くというところでメグが口を開いた。
俺は冷蔵庫から麦茶を取り出したところだった。
「なんだよ突然。
メグも飲む??」
「飲む。
いいから教えてよ」
俺はメグの分の麦茶をコップに注ぎ、席についた。
「うーーーん……
そうだなぁ……」
俺は麦茶を口に含み考えた。
メグも一口麦茶を飲む。
「メグはどうなんだよ??」
「私??
そうだなぁ……
私は先生になりたいな」
メグは簡単に言った。
まるで即席麺のようにお手軽な言い方だった。
「先生かー………」
「で、ジョニーは??」
「俺はとりあえず、ばぁちゃんに孝行したいな。
親孝行ならぬ婆孝行だな」
俺が言い終わった直後、学校からのチャイムが聞こえた。
俺とメグは飛び起きたように立ち上がり、遅刻だ遅刻だと言いながら家を出た。
俺とメグは家を飛び出し、駆けた。
走ったところで遅刻は確定なのだが、俺達は終始無言で走った。
俺達は学校に行くための最後の信号に引っ掛かった。
そこで立ち止まり肩で息をした。
「よぉ、お二人さん」
振り返ると、トシも肩で息をしていた。
「おう。
おはよ」
「おはよ」
「珍しいな。
二人して遅刻なんて」
「昨日はジョニーんちに泊まってたからさ」
メグがそう言うと、トシは驚いて、俺とメグを交互に見た。
「トシ、勘違いすんなよ」
「照れんなよジョニー……
そうか……
オレとジョニーの童貞同盟も昨日で終わったのか……」
トシは遠くを見ていた。
壮大に勘違いしていた。
信号が変わったことに気付いていない。
構ってられんな。
俺とメグは黙って信号を渡る。