第四話 「夕飯」
ふう、どうにか‥‥投稿‥‥
イチャイチャ、難しい‥‥
昼食を食べた後、俺はアカリに言われた事、地下工房の整理に精を出していた。
「‥…よっこいしょっと、これでいいかな」
取り敢えず、置いていた一通りの鉱物等を片付けると、辺りは先ほどまでは雑然と物が置いてあったが、その全てを「異空間の蔵」へと収納した事によって無くなり、本来の広々とした空間を取り戻していた。というよりも、単に出した後「異空間の蔵」に毎回収納すればいいだけなのだが、どうしても忘れてしまっているのだった。
「蒼~、ご飯出来た、あ、片付けたんだ」
「ああ、しばらく空けそうだからな。にしてももうそんなに時間が経ってたのか」
そう言いながら蒼は立ち上がり、肩を回すと体の節々がパキパキと快音が鳴らしながら顔を覗かせているアカリの元へと歩いて行く。
「毎回ちゃんと片付ければいいのに‥‥」
近づいて行くとそんなアカリの声が聞こえたが、見た感じだとボソッと言ったようだったので蒼はあえて聞こえないふりをして声を掛けた。
「それより、飯が出来たんだろ?冷める前に食べようぜ」
「あ、そうだった。それじゃあ上に行こうか」
そう言うとアカリは階段を上って行き、蒼は付いて行くように階段を上って行った。そしてリビングへと上がると香ばしい香りが蒼の鼻をくすぐった。
「この匂いは?」
蒼の問いに先に階段を上がったアカリが笑みを浮かべながら振り返った。
「分かった?今日はちょっと豪華だよ」
そう言って蒼が隣に来ると同時にリビングへと通じる扉を開けるとテーブルの上には鶏の丸焼き、サラダにパン、更にはビーフシチューとかなり豪勢なメニューだった。
「おお、今日は豪勢だな!」
「外に出るからね豪華にいかないとね。それに」
私を匿ってくれた君への感謝の気持ちも含めてね、と胸の中蒼を見ながらアカリはそうつぶやいた。一方の蒼はといえば豪勢な料理に目が釘付けだった。
「なあ、早く食べようぜ」
「もう、君は子供みたいだね」
何処か子供っぽい蒼にアカリは笑みを浮かべながら、リビングに入り椅子へと腰を下ろし、その向かいの椅子に蒼が腰を下ろす。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
蒼はそう言うと早速料理に手を付け始め、アカリはその様子を微笑ましく見ながら自分も料理に手を付け始めた。
(うん、いい感じかな)
自分で作った料理の味を食べて確かめながらアカリは向かいでかなりの速さで美味しそうに料理を胃袋に納めて行く、蒼を改めて見ると、アカリは胸の中が温かくなっていた。
(やっぱり、ご飯は一人で食べるより美味しいな)
自分で作った物で蒼に食べてもらうために何度も味を確認したので不味いという訳はないのだ。でも、唯一の肉親である父親が【魔王】となり、蒼と出会うまでは常に一人で食事を取っていたが、今では蒼と一緒にご飯を食べる事が、アカリにとっての日常となっていた。
(でも、これだけ美味しく感じるのは、私、蒼の事が‥‥‥)
「どうした、食べないのか?」
「ふえぇぇ!?」
唐突に蒼が不思議そうに声を掛けて来たことによってアカリは何時の間にか手が止まっていた事に気が付いた。
「何か考え事か?」
「え、あ、うん、大丈夫。ちょっと考え事をしてただけだから」
流石に蒼の事を考えていたとは恥ずかしくて言えずに言葉を濁したが、それを聞いてそうかと蒼は一旦箸を置いた。
「確かに、お前からすればあの時以来の外だからな。緊張したり考えるのも仕方がないか」
「あ、そ、そうだね」
蒼はそう言いながら再び箸を取ると再び食べ始め、アカリは蒼が勘違いをしてくれた事に息を吐いた。まさか蒼もアカリが自分に淡い思いを抱きつつあるという事に考えが及ばなかったが、それは仕方がない事だった。何せ、蒼はアカリの父親を、周囲から【魔王】と呼ばれていようとも唯一の肉親である父親を殺したのだ。そんな自分に淡いを抱いているだなんて蒼はこの時は全く想像もしていなかったのだった。
そして、何処かアカリからソワソワした雰囲気を感じながらも蒼はそれに気が付かないフリをしながら目の前のご馳走を胃袋に納めて行くのだった。
「ご馳走様。ふう~、美味かった~」
「お粗末様。それにしても全部食べたんだね‥‥」
満足そうに腹を擦る蒼をアカリは残しても良かったのにと少し呆れ交じりの眼で見ていた。何せ、料理を作ったが良いがアカリ自身も作り過ぎたと感じていた料理の全てを蒼は平らげてしまったからだった。
「ああ、本当に美味かったからな。それに残すのは作ってくれた人に申し訳ないだろ?」
「まあ、美味しそうに全部食べてくれた事は嬉しいけど‥‥」
正直に喜べないアカリを見ながら蒼は思わず笑みを浮かべた。
「な、何よ」
「いや、ここで初めて飯を取った時と比べるとアカリ、お前大分変わったなってな」
「ちょ、変な目で見ないでよね!?」
何を勘違いしたのか、恐らく最初の頃に比べて女性らしい柔らかさを備えた体を見ていると勘違いしたのだろうが、蒼は特に訂正もせず、実際にアカリの肢体を見ていたのも事実だったので否定はせずに、言葉を続けた。
「いや、確かにお前の体つきも特に胸も育ってきてエロいが、俺が変わったなと感じてるのは内面だよ」
「‥‥まあ、そうだね」
否定しなかったせいだろう、アカリは体を抱くようにして出会った当初の事を思い出していた。
蒼達【勇者】が【魔王】を討って諸々が終わっての数日後、蒼は異空間に結界を張り構築した【工房】へとアカリと共に入ったが、その頃のアカリは何処か生きる事を諦めた、生きているようで死んだ感じだったのだが、時間が過ぎ、徐々に明るさを取り戻し、ここ最近では当初の様なそんな雰囲気は見られなくなった。その事に対して蒼は良かったと思っていた。
(一時は自殺をしかねなかったからな。それに比べると今の方が何倍もマシだな)
そして、アカリがこれだけ持ち直したのはアカリ自身の強さだろうと蒼は思っていた。だがそれは少々違った。アカリが明るくなったはアカリの強さもあったが、何より蒼が寄り添っていた影響もあったが、蒼がこれを知る術は無かった。
「あ~、やっぱり風呂は良いな~」
豪勢な夕食を食べた後、食器を洗うなどアカリの片づけを手伝った後、蒼はリビングの隣に作った檜に似た性質と香りの木で作った浴室で広さとしては三畳ほどで床も浴槽と同じ木を使用し、更に「発散」の魔法陣を刻んでいるので水がしみ込んで腐るという事もなかった。浴槽の大きさはごく普通の一人が足を延ばして入れる普通のサイズだった。そして蒼は魔力を冷気に変換する魔力式冷蔵庫から果実のミックスジュースを注いだコップを取り出し、一口呷ると程よい冷たさとリンゴとバナナに似た果実の甘味が口いっぱいに広がり、香りが鼻を抜けていく。
「ふう、‥‥いよいよ、外に出るか」
それは湯船に浸かりながらも考えていた事、外の世界の様子に関しての事だった。時折アカリが寝ている深夜の時間帯に【工房】から何度か出て外と結界内の時間の差を把握していた。そして外部は凡そ百年の時間が流れている事も把握していた。
そして百年程時間が経っていれば【魔王】の娘を血眼になって探していた奴らも楽観ではあるが諦めがつくのではないかと蒼は思っていた。何せ、【魔王】は確実に蒼が滅ぼしたのだ。そこに間違いはない。
「けど、一応気を抜かないで置くか」
そう、あくまでこれは蒼の楽観的な予想でしかない。百年経とうとも怨恨は容易く消えるという事は無い。そして、怨恨は時を経ると共に深くなっていくものだということを蒼はよく理解していた。
「あ~、気持ちよかった~!」
その時ガチャと扉が開く音が聞こえ、蒼が見るとパジャマに身を包んだアカリが居た。肌はほんのりとピンクで湯上りだろうか、男を魅了するほんのりとした艶っぽさが今のアカリにあった。
「あれ、まだここに居たんだ?」
「ああ、少し考え事をしていたからな。まあ、これ飲んだら部屋に戻るよ」
「ふ~ん、そうなんだ‥‥」
そう言いながら冷蔵庫から飲み物を取り出すとアカリはそれを飲んでいく。その隣で蒼はジュースを全部飲むと流し台で洗うと伏せておく。
「それじゃあ、お休み。早く寝ろよ?」
「は~い」
アカリにそう言うと蒼は歯磨きを終え、自分の部屋へと戻るとすぐに眠気が襲ってきた。
「ふあぁああ~、流石に疲れたか‥‥?」
そう言っている間も徐々に眠気が強くなってきたので、蒼は特にする事もなかったのでそのままベットに横になり、眠りの世界へと旅立っただった。
そして、蒼が寝息をたて始めて数分後、蒼の部屋の扉が静かに開いたが、蒼が目を覚ますことは無い。普段の蒼であればちょっとした物音で意識は覚醒するのだがその様子はない。
それを確認したのか、様子を伺っていた影は足音を立てずに蒼が寝ているベットへと近づいて行く。それでも蒼が起きる事は無い。
「‥…本当に、効いてる、よね?」
蒼の枕元に立ったアカリはまず蒼が起きていないことを改めて確認した。何度か目の前で手を振ったり、体を何度かゆすったりしたが、起きる様子はなかった。そして蒼が起きないことを確認するとアカリは身に着けていたパジャマを脱ぎ、下着姿になると、
「よし」
何処か、覚悟を決めた顔で、蒼の寝ているベットの中へと潜り込んだ。アカリが潜り込む間も蒼はまるで起きる様子もない。そうこうしていると、アカリはベットの中に潜り込み、まるで添い寝するように蒼の隣に入ると、蒼を抱きしめる。
「んん・・・・・くぅ・・・・・」
すると、必然的にアカリの胸が蒼の頭を包み込む様になってしまい、蒼は何度かもぞもぞと動いたが、それでも目覚める事は無かった。
「よ、良かった‥…」
一方のアカリは蒼が目覚めない事である意味でホッとしていた。流石に今目覚められると恥ずかしさで気絶してしまったかも知れなかったのだ。そもそもアカリは昼間の内に自作した睡眠薬を仕込んだジュースを作り飲むのを待っていたのだ。その目的は、自分はこの人を好きなのかどうかを確認するためだった。別にこのような方法でなくても良いのではないかとも思ったが、それと一度でいいから蒼と一緒に寝てみたいとアカリが思っていたことによって実行されたのだった。そしてなぜ下着姿なのかといえば、アカリは普段寝る時はパジャマを着て眠っているのだが、今は先ほど理性を薄くする為に蒼がふざけで入れていた酒を飲んだ
影響で熱くて服を脱いだのだった。
「本当、子供みたいな寝顔だね、君は」
アカリは羞恥心を特に抱かず、むしろ蒼の寝顔とぬくもりを直接感じながら髪を優しく撫でると、蒼はくすぐったかったのか、何度かもぞもぞと頭を動かしていたが、やがて諦めたのか、慣れたのか頭を動かさなくなった。
それをアカリは何処か面白そうに眺めていた。そして、同時に自分が確かめたいと思っていたことも確認できた。
「‥…やっぱり、私は、貴方の、事‥‥が‥‥…」
そう言うと酒が回って来たのか少しずつアカリの瞼も落ち始め、やがて静かに寝息をたて始めた。だがその表情は一人で寝ている時に比べると圧倒的に穏やかで安心した寝顔だった。
翌朝、蒼の部屋にて、一つのベットの中で体を起こした。アカリだった。
「う~ん‥‥‥あれ、ここは‥…、確かジュースを飲んだ後‥……」
しかし、幾ら思い出そうとしても、靄がかかったかのように思い出せなかった。だが問題は他にもあった。
「何か、私恥ずかしい事をした気が‥…でも気持ちはすっきりしてる?それにこの部屋って‥…ひゃんっ!何っ!」
その時ベットの端に座っていた蒼のお尻に何か手の様なモノが当り、後ろを見ると、もはや見覚えがあるというのを通り越した黒い髪の、自分を守る為に、そして【魔王】となったアカリの父親との約束を守ってくれている、アカリが仄かに思いを寄せる一人の少年。
「蒼‥‥?あれ、私もしかして‥…」
「スゥ‥‥スゥ‥…」
「蒼と一緒に寝ちゃったの!?ムグっ!」
その時、寝ぼけているのか蒼の手がアカリの手を掴み、そのままベットの中へと連れ込んだのだった。
(え、え、私どうなっちゃうの!?)
一方のアカリは自分が蒼の寝床に潜り込んだ事、そして蒼にベットに寝ぼけているとはいえ連れ込まれた事で混乱はピークに達していた。
「え、え、ちょ、私はまだ心の準備がっ」
アカリは困惑していると、蒼は背中から蒼を抱きしめた。その時アカリは自分の心臓が止まりそうになるほどにドキドキしていた。それが例え、寝ぼけている状態だとしても、好いていると自覚してしまったアカリにとっては寝ぼけているからこそ蒼の本音を聞くチャンスだと思っていた。
「アカリ‥‥‥‥お前は、一緒に居てくれる、か‥‥‥」
「蒼?」
小さかったがそれはまるで、夢の中で蒼がアカリに対しての問いかけような言葉だった。恐らく蒼が意識の内に抱いていた思いが漏れ出ているのだろう。しかし、その当人であるアカリは寧ろ驚きのあまり言葉を失っていた。しかし蒼の言葉は続く事は無く、再び寝息をたて始めた。
「クゥ‥…クゥ‥‥」
「もう。でも、ありがとう」
いつの間にやら蒼の手は緩んでおり、いつでも抜け出せるようになっていたので、ベットから抜け出すと、下着姿だったことを思い出して手早く服を身に着けると、静かに部屋から出たのだった。
因みに蒼が起きる前にアカリが起きたので問題は無かったが、昨夜の事を朧気に覚えているおかげで顔を合わせるだけで昨夜の事を思い出したアカリは何度か顔を逸らす、直視できないという事が起き、蒼が不思議そうにしていたのだった。
次回も、二週間以内で投稿できればいいと思います。
文章力が低く、少しも成長できておらず申し訳ありません。ですが、少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。