三話目Anyone not come true is to escape from deathsomemento mori
「・・・よし、落ち着け~落ち着け~俺。」
ここは王の部屋の前。王に呼ばれてここまで来たのだが、ティッパーは久々で緊張しているようだ。
「・・・」コンコンコン
「誰だ?」
「ティッパーです」
「入れ」
ティッパーが入ると王の横には兵士が立っていた。
「・・・ずいぶんと警戒なさってますね・・・そんなに警戒しなくても、いきなり襲う何て事しないのに・・・」
そう言うと陛下は少し笑い
「分かっておる。だが、最近帝国内で裏切りが起こってな。護衛を付けろと家臣から怒られてな。夜も付いてるものだがら、おかげでまともに寝れぬわ」
と言った。
「裏切り者?」
「帝国魔術師長ベルだ」
陛下は先ほどとは打って変わって、厳格な顔をした。
「・・・ベルが?」
さて、少し彼の視点で話すとしようか。俺はベルを知っている。俺にとっては仇を作り出した産みの親だ。俺の親は龍戦争でベルが生み出した龍、食種に殺された。それだけじゃない。友達も知り合いも皆死んだ。そして生き残りの俺はリンに拾われ帝国軍に入った。
「あぁ。数ヵ月前、魔働兵を無断で使用しウンディーネを襲撃した。」
「・・・」
「・・・そこで君の力を借りたいんだ。」
「・・・力・・・ですか?」
ティッパーがそう言うと陛下は
「あぁ。獣人族である君の力は、ベルの魔力にも負けず劣らず。君が力を貸してくれるならこちらも最大限補助しよう。君が恨んでいる黒龍の生みの親にも復讐出来るし悪くは無い話だと思うけどね」
そう言った。するとティッパーは少し考えて
「・・・検討させて貰います」
と答えた。
「そうだろうな。すぐには答えは出せんだろう。復讐するもしないも、君の自由だ。」
陛下はそう言うと笑った。その時だった。
「陛下!」
兵士が声を荒げて入ってきた。
「何事だ?」
陛下がそう言うと兵士が
「ベル達です!ベル達が襲撃してきました!」
と言った。すると陛下は
「魔働兵を至急下げよ。奴等は魔力を操作し魔働兵を乗っ取る」
と言った。兵士は
「は!」
と言い走り去っていった。そして陛下が
「・・・さて、帝国に協力するにしろしないにしろ、今の問題を片付けなくてわな。手伝ってくれるか?」
と言い少し笑った。ティッパーも
「えぇ。ですね。」
と言い笑った。そして城を出て驚いた顔をした。
「辺り1面・・・火の海だ・・・」
すると陛下が通信機を取りだし
『全兵士に次ぐ。戦闘は中止。生存者の救出に全力を注げ。』
と言った。その時
『Anyone not come true is to escape from death』
と聞こえた。陛下にもその声は聞こえたようで、周囲を見渡している。その声は続き
『So memento mori!』
そう言い陛下の影からベルが現れ斬りかかる。するとティッパーが
「陛下!危ない!」ダッ!
そう言い陛下を庇い、ティッパーは斬られた。その時兵士の一人が
「ベルが居るぞー!」
と叫び、兵士が集まってきた。
「・・・これ以上は不利ね・・・転移!」
そう言いベルは消えていった。そして陛下が
「おい!ティッパー!大丈夫か!」
と言い近寄った。ティッパーは
「何とか大丈夫です」
そう言い起き上がると
「それでは城下町の知り合いを救助に行ってきます」
と言い走り出した。陛下が
「その傷で大丈夫なのか!?」
と聞いたが
「獣人の再生力を侮らないで下さいね。」
そう言い振り返ったティッパーの傷は、血が止まり傷口も閉まり始めていた。
Anyone not come true is to escape from death somemento mori
意味 誰も死から逃れることは叶わず。だから死を忘れるな。
ベルの魔術で対象者の背後に飛び、対象者を切断する。転移と違い、対象者を視認していなくても発動可能なので、とても使い勝手が良い。