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防衛者  作者: クラリオン
序章  召喚
4/21

第二話  嘘

はい、すいません、見てる方いらっしゃるかわかりませんが、私事により更新遅くなりました。

とりあえず、最初に篠原と桐崎を起こしたことで、クラスメイトを全員スムーズに起こすことができた。さて前回はここでお姫さん…王女殿下がおいでなさったわけだが、今回は誰が来るのだろうか?

というか正直誰か来てもらってこの状況を説明してほしい。なぜまた()()()()()()()なのに召喚されたのか。今はいつなのか、あの世界のどこなのか。



そしてこれが一番重要なことだが、帰れるのか。




これは可能な限り伏せておきたいが、帰ろうと思えばいつでも帰れる。送還用魔方陣を生み出したのは、俺たち初代勇者パーティー、当時俺たちを召喚した皇女殿下、そして()()なのだから。


だから魔方陣を描けと言われたら描けるし、<勇者>と<聖女>としての魔力を消費すれば今すぐ全員を送還することもできる。だが面倒だし、何より時間と労力を消費しすぎてしまう方法なので、最終手段として取っておきたい。


そんなことを考えていると、重い音と共に、俺が扉ではないかと目算を付けていた壁がゆっくりと開いていった。


「ようこそいらしてくださいました、勇者様方」


出てきたのは、この世の者とは思えぬほど美しい少女。俺、あるいは内山からすれば、ここが異世界であると実感させる顔立ちの少女だった。


「私は、シルファイド王国第一王女、シルフィアーナ・シルファイドと申します」


第一王女殿下だったか。しかしシルファイドとは聞き覚えのない国名だな。前回召喚された時は、確か……ヴァルキリア皇国、だったか。人族領でも、魔族領との国境たる大山脈を含む西方の広い領域を領土とする大国だった。他にも小国がいくつかあったが、シルファイド王国なるものは聞いたことがない。つまり前回召喚されてからかなり時間が経過しているとみていい。


「勇者様方は現在、大変混乱していらっしゃると思います。まずは急に召喚したことについて深くお詫び申し上げます。そして、無礼を承知でお願い申し上げます。どうか私たちを、この世界を、助けていただきたいのです」


いや、なにをしろというのだろう。


「僕たちにできることならなんでも協力します!」


そしてそこの勇者(暫定)、相談も質問もなしに即決するな。


「ちょっと待ってください、篠原君、決めるのは何をしなくてはならないのか聞いてからでいいのでは?」


そこへストップをかけたのは高山公博。クラスで多分一番頭の回転が速い。ナイス高山!


「それもそうか…王女様、なぜ俺たちはここに呼ばれたんだ?」


「我々の世界には、私たち人族だけではなく、エルフや獣人のような亜人族、そして魔族が存在します。そのなかで魔族は、他の種族と異なり、魔物と呼ばれる普通の生物とは桁違いの強さの怪物を使役し、遥か昔から私たち人族を迫害してきました」


ああ、そうだな。結局勘違いだったわけだが。


「古代、我々人族の先祖は、それら魔族の王、魔王を打倒し、人族亜人族に平穏な生活をもたらそうと考え、異世界から勇者様を召喚しました。それは千年前、超大国ヴァルキリア皇国が存在した時代のことです。そのため名前は失伝しております」


ここで出てくるか。まあ間違いなくその勇者は俺だな。


「勇者様は同じく異世界から召喚された三人の仲間と、当時その国で最強の魔道士と騎士と共に旅立ち、魔王を倒し、平和をもたらしました。そして異世界へ、元いた世界へと戻られたのです」


うんうn…うん?


「しかし、それから九百年ほどたった時、魔王が再び現れたのです」


あれ?


「私たち人族には、魔王に対抗できる者がおらず、徐々に魔族の侵攻を許しつつあります。奴らをなるべく早く食い止め、人族と亜人族の平和を取り戻さなくてはならないのです。そこで私たちは古代、先代魔王の時代から伝わる伝承をもとに、<勇者召喚の儀>を行いました、そして召喚されたのが、今ここにいらっしゃる皆様なのです」


……まあ大義名分は立ててあるか。前提条件から間違えているが、な。前提が誤っている以上、そこから導き出される論理全ても誤りであると考えるべきだろう。本当に魔族が侵攻しているのか。


嫌な予感しかしない。


「この世界の人族には、魔王を倒すだけの力はありません。ですが、異世界から来た皆様、<勇者>様には、魔王を倒す力が生まれる可能性があるのです」


「話を途中で遮ってすまないが、ちょっと聞いてもいいだろうか?」


ちょっと気になった俺は手を挙げた。


「え、ええ。何でございましょう?」


「<勇者>は、確実に魔王を倒せるのではないのか? いや、その、王女殿下が『可能性がある』って仰ったのが、『倒せない可能性がある』のように聞こえたものですから」


途中で騎士がにらんできたのがわかったから敬語に切り替えた。いくら<防衛者>の鉄壁防御と<勇者>のHPがあるとはいえ、面倒ごとは避けたい。


「別に敬語でなくともかまいません、私たちが皆様にお願いをしなくてはならない立場なのですから……そうですね、語弊がありました。というのも、今の貴方方には、魔王に正面切って戦える力も、打倒しうる力もおそらく無いと思われます。協力していただける場合、我が国で訓練を受けていただき、いくつかの祠を廻っていただいて、力をつけていただかなければなりません。それを途中で放棄しなければ、一年もたたずに、魔王に対抗できる力を得られるのです。今はまだ、放棄しない確証が無いのであのように申し上げました」


「わかりました、では、その修行中に、魔族軍あるいは魔王が攻めてきた場合どうするのですか?」


この時、俺はまだある程度楽観視していた、期待を持っていた。<勇者>の伝承があるなら、<防衛者>についても同様の伝承があるはずだと。


だが、それはどうやら希望的観測でしかなかったようだ。


「王都には大結界があります。もし破られた、もしくは王都の外で襲われた場合は、我が国の騎士団が命をかけてでもお守りいたします。」




……護るのは<防衛者>の役目のはずだが、<防衛者>どこいった?


いや、うん。今までの話も突っ込みどころ満載の内容ではあった。俺たちが体験したことと違いすぎる。

魔王というのは、先代魔王が死ななければ次代が誕生することはない。だから先代が()()()()()()以上、新たな魔王が誕生するわけがない。そもそも魔族には魔物を使役する技術は存在しない。いや、しなかった、と言うべきか。今の魔族がどうなのかわからないからな。あれからすでに1000年経っている。その間に開発した可能性もないとは言い切れない。


が、そんなことはどうでもいい。それより、今は<防衛者>の伝承が無いことが重要である。<防衛者>は魔王に対する矛たる<勇者>の対、楯となる存在であり、その任務の重要性だけでいえば、<勇者>をも凌駕する。つまり、他の召喚者、つまり<勇者>パーティーのメンバーと異なり、<勇者>と同格とみなされ、<勇者>とは別物、という扱いになる。そのため、<防衛者>そしてそのペア、というか補佐役である<支援者>は<勇者>の称号を持たない。


ここで俺が何を言いたいのかというと、<防衛者>のことが伝わってない以上、ただ二人、<勇者>の称号を持たない俺と内山が、”落ちこぼれ”のように見なされる可能性があるということだ。しかも、都合のいいことに、俺達からすれば、都合の悪いことに、共に後衛職かつ特殊職なので、ステータスはかなり低い。見るからに”落ちこぼれ”。こういうときのテンプレと化しつつある疎外展開が透けて見える。


さて、どうしたものか。王女様が嘘をついているようには思えないし、対詐術用のスキルが反応していないことからも、王女様がこれを嘘とは思っていないことは事実。ならば国王もしくは国の上層全てが魔王の再臨をでっちあげているか、盛大な勘違いか。後者であった場合は良いが、前者であった場合は面倒ごとに巻き込まれることになりそうだ。


できればそうなる前にこの国からおさらばしておきたい。王女様や<勇者>達には悪いが、策略に巻き込まれるのはごめんだ。というか観光したい。一度目は修行と戦争でそれどころじゃなかったからな。力を振るえる魔王がいない以上、<防衛者>と<支援者>は、置物に近い。もともと動きが全部受動的な職業であるからだ。


適当なあたりで、


「やはり<勇者>ではない俺達は足手まといにしかなりません」


とかなんとか上手く言ってトンズラするのがベスト。うん、そうしよう。生憎とこちらの世界の情勢に興味ないし、こちらに害がなければ別どの国が滅ぼうとかまわない。部外者が口を出すわけにもいかないし、な。


「ここから先は宰相、よろしくお願いします」


「は。私がシルファイド王国宰相のゼルビアス・ゴルトニアと申します。以後、お見知りおきくださいませ。それでは勇者様、早速ですが、ステータスプレートの確認を行っていただけるでしょうか?」


来たか…勇者特定イベント…


「こちらの石に触れていただくと、あちらの板にステータスが表記されます。ご自分でも確認なさる方法は後程お伝えします」


さて、ここで<勇者>ステータスが出るのか、あるいは表に出している<防衛者>ステータスが出てくるのか。向こうのほうで何やら歓声が上がった。ああ、篠原か、やはり<勇者>だったか。


さて、気合を入れなおして俺の番。


―――――――――――――


ステータス

神崎 啓斗  Lv.1

種族 異世界人

職業 防衛者

年齢 17

性別 男

HP  100/100

MP   100/100

物防 300

魔防 300

物攻 20

魔攻 20

称号 <防衛者>

―――――――――――――


「…………」


ほぼ全員が沈黙した。まあそりゃそうだ。今までのみたいに<勇者>称号が無いし、攻撃力はゴミ、防御は恐らく群を抜いているが、だからどうした、という感じだ。

沈黙の中、内山が向かう。外見としては<聖女>だが、既に桐崎が<聖女>となっている。ならば内山は?


―――――――――――――


ステータス

内山 さくら  Lv.1

種族  異世界人

職業  支援者

年齢  17

性別  女

HP    100/100

MP    200/200

物防  12

魔防  12

物攻  75

魔攻  75

称号  <支援者>

―――――――――――――


「…………」


再びの沈黙。<勇者>なし二人目の登場。俺だけなら如何様にも侮蔑し、嘲笑できただろうが、内山相手にそれができるやつはそう居ない。


とはいえ、<勇者>持ちと、訳が分からない<勇者>なしでは、扱いも大きく違っているはずだ。その度合いによっては、この国を出るのを早める必要があるかもしれない。


王女様に嘘つかせてまで、この国は一体<勇者>に何を望んでいる?


前作で、なぜ主人公が、魔王・魔族軍幹部特効カウンターを使うことはない、と言っていた理由がお判りでしょうか?


対象がいなければ発動できないからですね。

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