第一話 二度目の召喚とおかしなステータス
ようやく本編スタートです!
説明的文章が続きます。前回召喚等やレベル上げについては最悪読み飛ばして結構です。いくつか伏線らしきものあり。
『迎撃しろ!』
『弾が足りねえんだよ!て言うかとっとと封じろよ!』
『無茶言うな!防衛特化艦に攻撃を求めるんじゃない!』
『私が前に出る。攻撃を集中させるから集中防御を。その間に他が攻撃』
「りょーかいっと」
直ぐ様端末を操作して、旗艦の周囲に弾幕を張る。防衛特化の本領発揮、してる間に、味方が敵旗艦に集中砲火。撃沈に追い込み、勝利表示が出た。
「今日も勝利。さすが司令だな」
ミッションに出るか迷ったが、時間的にそろそろ不味いので、端末の電源を落とし、鞄に放り込む。朝のSHRまではまだ30分ほどあるが、この時間帯から、教室の人口が増える。と、この時間帯の一番乗り常連の女子が入ってくる。自分の勘の良さに感謝しつつ、イヤホンを耳にねじ込んで机に突っ伏した。
基本的にクラス内ではボッチの俺にとってはこれが一番楽なのだ。もう一人ボッチ……というか同じポジショニングしているのは居るが、女子だしベクトルが違うので基本的に現実では関わる事はない。俺は一人が好きだからこんなポジショニングなわけだが、彼女はどうなんだろうか。どちらかと言うと不可抗力だろう。何と言うか、近付きがたい?
本人の物腰は親しみやすいタイプで通してるのになぁ。
多分大抵の男子はその外見だけで惚れるのではなかろうか、それで内面も良い(ように装っている)のだから尚更か。
俺?あいつの真の姿を知ってるからな、逆に近付きがたいわ。
30分後、鐘の音と共に、先生が慌ただしく入ってきた。いつものことでは有るのだが、もう少し早く来ようとか思わないのだろうか?まあ中学校の一時期まで遅刻魔だった俺が言えることではないかもしれないが。
そんなボッチかつ元遅刻魔な俺の名前は、神崎啓斗。元勇者だ。
……お願いだからそんな痛い人を見る目で見ないで下さいお願いします。いやマジで勇者だったんだ。今は元になってしまったけど。
中学二年生だったある日、俺は帰宅するとき、とある交差点で、同じところで信号待ちしてた人達と共に、足元に突然出た模様(後に魔方陣と判明)から出た光に包まれて、気付いたらなんか祭壇っぽいところに居たんだよ。
一緒に召喚されたのは、当時俺と同じクラスで、今も同じクラスの内山さくら、大学生だった国崎春馬さん、高田陽菜乃さんの3名だった。それぞれ順に<聖女><防衛者><支援者>だ。そして俺は<勇者>だったというわけ。んでまあ色々あって、魔王の"無力化"には成功して、日本へ送還された。大変だったよはっはっは。
で何で今更俺がそんな話をしているのかというと、
「おい!なんだこれ?!」
「え?なに?光ってる?!」
今現在俺達──俺を含む二年四組のメンバーの足元全体を覆うほどの大きさの魔方陣が発生して、光っている、つまり発動直前であるからだ。見覚えがあるなんてもんじゃない。大きさを考えなければ、3年前に見た召喚術式そのままだ。
咄嗟に内山の方を見る。
内山も驚いたような、だが一方で納得あるいは安堵したような表情で此方を見て頷いた。俺も頷き返す。
同時に魔方陣が輝きを増した。発動だ。そう思った直後、俺の意識は遠のいた。
目覚めると教室とは明らかに違い、見覚えのない天井。
「……知らない天井だ」
取り敢えずお馴染みの台詞を呟いてみる。異世界召喚ならこれは鉄板だろう。
「呑気なものね<勇者>」
「言葉遣いが崩れてるぞ。驚かすな<聖女>」
声をかけてきたのは内山さくら。さっき述べた元<聖女>。そう、元だが聖女だ。俺としては正直それに異議を唱えたい。外見はその通りだが、性格が悪すぎる。誰だこいつを聖女にしたの。趣味悪いにも程がある。
「今すごく失礼な事を言われた気がしたけど気のせいかしら?」
「気のせいだろう。それより<聖女>」
「今私<聖女>じゃないわよ?貴方も<勇者>じゃないし」
は?え?再召喚されたからまた<勇者>なんじゃないの?
慌ててステータスを確認する。
「<ステータスオープン>」
―――――――――――――
ステータス
神崎 啓斗 Lv.1
種族 異世界人
職業 防衛者or勇者
年齢 17
性別 男
HP 100/100
MP 100/100
物防 300
魔防 300
物攻 20
魔攻 20
称号 <勇者><竜王の友><封印せし者><超越者><再び喚ばれし者>
<舞い戻りし勇者><防衛者>
―――――――――――――
「は?」
さて、ステータスを開いた。すると見覚えのある形でステータスが表示された。やはり前も召喚された異世界なのだろう。
色々と突っ込みたい物が多すぎる。まあ、<防衛者>になったことも、レベルが1になってることも頷ける。問題なのはまず職業欄だ。<防衛者>はまだ良いが、そのあとの"or"ってなんだよそれ?!
普通、この世界では、職業の決定は二通りに別れる。自分が生まれながらに称号を持ち、職業欄も埋まっている場合。異世界からの召喚者もこれに当てはまる。この場合、その職業につくと、恐ろしいまでに有能な人材となる。が、転職はできない。
ただしそんな人はかなり少なく、大多数はもう片方、つまり自分で選択した職業に就く。この場合、転職も可能だが、ステータスの職業欄の表示も変わる。
何が言いたいかというと、職業欄に表示される職業は本来1つだけの筈なのだ。決してorとか有るわけがない。なのにこれはどういう事なのだろうか。
「やっぱり貴方もなのね、私も2つなのよ。<聖女>と<支援者>の」
「これはどういう事だ?」
「多分二回目の召喚だからだと思うわ。ステータスは上書きされたけど、元も残っているんだと思う。だ
からもしかしたら――<ステータスオープン>」
内山はステータスを開くと、自分の職業欄をタップした。
<職業を変更しますか? YES NO>
は?呆気にとられたが、内山は「やっぱりね」と呟き、迷わずYESをタップ。
<職業を<支援者>から<聖女>へ変更します>
すると、ステータスが1度消え、また現れた。
―――――――――――――
ステータス
内山 さくら Lv.201
種族 異世界人
職業 聖女
年齢 17
性別 女
HP 20100/20100
MP 40200/40200
物防 12000
魔防 12000
物攻 7500
魔攻 7500
称号 <聖女><竜王の友><癒す者><超越者><再び喚ばれし者>
<支援者>
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3年前、最後に見たステータスと変わらない。相変わらずのチートではないでしょうか?いや多分俺もそうだけど。うん?じゃあもしかしてさ…
「<ステータスオープン>」
そのまま職業欄をタップ。そのままYESをタップ。
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ステータス
神崎 啓斗 Lv.213
種族 異世界人
職業 勇者
年齢 17
性別 男
HP 42600/42600
MP 42600/42600
物防 24000
魔防 24000
物攻 35000
魔攻 35000
称号 <勇者><竜王の友><封印せし者><超越者><再び喚ばれし者>
<舞い戻りし勇者><防衛者>
―――――――――――――
「うっわあ…」
エグい。いや自分のステータスだけど気持ち悪い。各項目がオール5桁とか。
「相変わらず貴方のステータスって化け物よね。流石は<勇者>ね」
「今は<防衛者>だよ」
でも良く考えれば<防衛者>もおかしくはないだろうか?攻撃力の15倍の防御。そしておそらくもう使うことはないだろうが、一部の対象――魔王と魔族軍の上級幹部――に対してのみ発動する<反撃魔法>という名の即死級カウンター。
春馬さんが一回だけ漏らした<報復魔法>という発動条件すら不明の戦略級超大規模攻撃魔法。字面からして、おそらく何らかの危害を加えられた際に発動するとしかわからないが、それでは<反撃魔法>と同義であるから、どこかで差別化が図られているはずだ。
とはいえ、今行使できない魔法を論じても無意味か。春馬さんはレベルが100超えないと<報復魔法>は使えないと言っていたし。今使えるのは<防衛魔法>と特殊な<反撃魔法>。共に<防衛者>しか行使できない。
攻撃力はゴミ。つまり直殴りでの火力は期待できない。防御力はまあ防御特化だけあってかなり高い。俺が勇者レベル1だった時の十倍ほどか。となるとレベル上げするには一回攻撃して壁役に徹するのが最善。その際に<防衛魔法>を併用すれば、そっちのほうもレベル上げができる。
一応説明しておくと、この世界では魔法は使うたびにレベルが上がる。発動している時間にもよる、とは春馬さんの言葉である。本人のレベルは、魔物に攻撃してその魔物が死んだら経験値が入る。それなのに<防衛者>の素の攻撃力はゴミ。
「なるほど、確かに防衛特化だな」
「今更でしょ。ほらそろそろ他の奴ら起こすわよ。貴方は篠原を起こしなさい。私は桐崎を起こすから」
篠原勇人。うちのクラスの恐らく男子のトップカースト。桐崎優菜は篠原の彼女で、女子のトップカースト。このクラスにカースト制が導入されているわけではないが、まあ立ち位置的に頂点なのでこう言わせてもらう。なぜわざわざ孤立型の俺達と相容れないような人物を起こすのかというと、それが後々楽だからだ。トップカースト二人が起きていれば、クラスメイトもうまく纏めてくれるだろうし、こちらが聞きたいことも聞いてくれるだろうという魂胆である。それに、そういうタイプの人物は、普段孤立している人間相手でも、変わりなく接する。もう一ついえばおそらくこいつらが今回の<勇者>と<聖女>だろうから、それを確認したいというのもある。とは言え後者は<鑑定>スキルをかけるか、自分でステータスを見てもらうしかないけど。
「おい、篠原、起きろ。何か変なところに居るぞ」
「…う…ああ?……どこだ、ここは……?」
「俺も分からない。目覚めたらここに居た。先生は居ないが、二年四組の生徒全員が居るようだ。扉らしきものはあるが、開かなかった。恐らく外側から鍵が掛けられているか、そもそも扉じゃないか、だ。とりあえず他の奴等を起こす、手伝ってくれ」
「あ、ああ、そうだな。ここが何処かは気になるが、それは後回しか。………おい、桑原、起きろ。良く分からないところに閉じ込められてる」
良く分からないところではない、異世界だよ篠原君。
いかがでしたでしょうか、次からもう国を出る算段を始めると思います。
防衛魔法、反撃魔法、報復魔法。これらは今後ちょくちょく大事なところで出てきます。
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