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防衛者  作者: クラリオン
第一章 南へ
20/21

第十六話  二度目の接触

テストに一段落付いたので更新

まだ完全に全てが終わったわけではありませんが小説いじる隙間は出来ました



南を目指す旅はまだ続きます




さて、俺達の旅もあれから特に何事もなく進んだ。移動中の車内では、俺とさくらが主に前回召喚の時の話をして時間を潰した。


そんな旅程の四日目。つまり半分まで来たところで、俺達は南側にあるもう一つの主要国家、聖リシュテリス神国に入った。と言っても普通に国境を素通りしただけであるが。


この国は国土も大して大きいわけではない。


ではなぜ主要国家とされるのかと言えば。


まあ国名からもわかる通り、この国は宗教国家である。この世界において人族が信仰する神、創世の女神リシュテリア。彼女を祀った教会の総本山があるのがこの国なのである。


一応<勇者>も、“女神からの御使い”という認識をされているのだが。


うん、まあ全部嘘ですけど。女神なんて存在しない。そういう設定を<システム>が創っただけだ。いやもしかしたら俺達なんかが知覚できないようなところに居るかもしれないけれど、それってさ。


居ても居なくても変わんないじゃん?


ちなみに宗教が存在する理由は、『思想を操作しやすいから』という理由であるらしい。ちなみに魔族側にも魔神信仰がある。こちらも同様。


そんなリシュテリア教こと女神信仰の教えはいたってシンプルである。




『魔族は敵』


『魔物は敵』


『敵はぶっ殺せ』




もの凄く簡略化すればこうなる。もの凄く物騒だが、まあ省略したの昔の俺だから察してくれ。まあ実際は色々と人族を持ち上げる修飾と共に大分長く、丁寧な物言いだが、余計なものを省くとこうなる。


この教義に従えばそりゃあ魔物狩る職業も出来るわな。魔族とも戦争起きるだろうし、<勇者>呼び出したりもするだろう。本当に良く出来たシステムである。





まあそれはさておき。この神国を治めるのは教皇である。さらに、時代によっては象徴として<聖女>と呼ばれる、聖属性魔法の類稀なる使い手が存在する。この<聖女>も職業はれっきとした<聖女>である。


ちなみに今の時代も居るらしい、名前は知らん。あと教皇様はかなりの善政を敷いているようだ、とはセレスと理沙の情報である。


この国には出来るだけ関わらないつもりである。こういう世界で、宗教関連は面倒ごとしか持ち込まないという事は良く知っている。











だから関わらないつもりで()()


いたのだが。



この場合、こういう考えはフラグになるという事を忘れていた。









「助けていただきありがとうございます」




跪いてそう俺に言う、白い服を着た少女。はい神国の<聖女>です。



どうしてこうなった。
















うん、いやね、全力走行してたらね、前方の街道上に魔物に群がられて横転してる馬車が見えたの。うん、めっちゃ高そうな明らかに地位の高い人専用の白い馬車が。




テンプレが遅れてやって来たんだよ。




流石に目の前で襲われているところを無視するのもアレなので、装甲車片付けて全員で助けに入ったってわけ。と言っても四人全員で雷属性範囲攻撃合唱魔法を唱えただけなんだけど。



んで魔物を全滅させたら馬車の横で護衛らしき人が守ってた、白い服着た少女が俺達の方にやってきてさっきの台詞を言ったってわけ。


うん、ミスったね。でもここで騒いだら目立つしな。おとなしく終わらせよう。というか逃げよう。




「いいえ、誰かが困っているのを助けるのは冒険者の義務ですから」


「可能であればお礼をしたいのですが」


「いえ、それには及びません。私達は少々先を急ぎますので」


「でも命を救っていただいてそのまま何もしないというわけには」


「お気になさらずに、では」




立ち上がって去ろうとしたところで、再び引き留められた。




「あの、出来れば神都まで護衛していただけないでしょうか」


「……既に護衛はいらっしゃるようですが……」


「また先ほどの規模の魔物に襲われたらひとたまりもありません、どうかお願いできませんか?」


「それには及ばないと思います。先ほどの魔物はヴィーゼンウルフ。ランクそのものはEですが、獲物を見つけた際に、周辺地域に生息する仲間全てを呼ぶ性質があるため群れ自体の危険度はC以上、場合によってはBです。先ほどの群れはC程度ですが一掃したので、この近くにはこのレベルの群れは居ない可能性が高いです」




仲間を呼ぶタイプの魔物を全滅させた場合の利点はこれだ。群れの規模がそこそこ大きいから周辺に同族乃至同タイプ、つまり肉食の魔物は居ないと考えていい。そして周辺個体が全滅したので、ほんのわずかな間――数日程度だがここは草食乃至雑食で大人しく小型の魔物が住むほぼ安全地帯となる。それ以上すると、<システム>の介入によって、まあ大抵は自然に、周辺から同種の肉食系魔物が侵入。天敵の全滅により数が増え、あるいは大型化した草食系魔物を捕食し、増殖。恐らく一か月と経たずに個体数は回復していくだろう。


ここら辺は普通の動物のサイクルと変わらない。


まあ何が言いたいかというと、こっから先は護衛無しで大丈夫、ということである。このヴィーゼンウルフ、仲間を呼べる範囲がやたら広い。スキルのせいだろう。千年前は確か半径百キロ近い範囲の仲間を呼べていた。恐らく変わりはないはずだから近くの街までは何もなくても行ける。




「だから護衛は必要ないのですよ、それよりも、早くどこかの街へ急がれることをお勧めいたします」


「貴様!聖女様のせっかくのご好意を……!」




敬愛する聖女様の好意蹴ったからって喧嘩腰になるなよ……一応俺達君達の恩人でもあるんだからな?

折角のご好意をって言われてもなあ……一般庶民にとってはお偉いさんと同行とか苦行以外の何物でもないのだが。




「良いのです。そうですか、ではしばらくは安全と考えてよろしいのですね?」


「はい、現れたとしても恐らくは大人しい性質の魔物のみでしょう、その程度ならば、護衛の騎士団で対

処できるはずです。では」




あっぶね。聖女様本人と遭遇とかテンプレじゃねーか。面倒ごと嫌い。というわけで、彼等から離れ、南へ歩き出す。さらに途中から街道を外れる。


背の高い草に紛れ、聖女様が見えなくなったところで一息つく。




「身分の高い少女を助けてそのお礼にと大都市へ……テンプレね」


「行かなくて良かったの?」


「ここで余計な寄り道をする必要は無い。<勇者>が出てくる前に南へ行かにゃならんだろ」




出来るだけ早く<システム>のもとへ。<魔王>の、グラディウスの魔力を合わせれば、強制的に<送還>を発動可能になる。


全ての手は俺達にある。


が、焦っているときほど邪魔は入るものだ。ポケットが、いや、その中身――伝達石が発熱している。




「……ちっ。さくら、後を頼む。<防衛業務委託(ディフェンス・サブコンストラクト)防衛装備召喚(サモン・ディフェンス・フォース)><転移(ポータル)転移点記録(ポータルポイント・レコード)>」


「何かあった?」


「公国からだ。戦いかどうか知らんが<勇者>が出た。先に行ってろ。<転移点>を車内に登録したからしばらくは格納できんが頼む」


「了解、いってらっしゃい」




<聖鎧>展開。




「<転移>」




やれやれ、次は何なんだ。


























「あいつも大分大変よね……<聖剣>だって自分のじゃないのに戦いに引っ張り出されてさ」


「え?あの人の<聖剣>って本人のじゃないの?」


「ええ、今ある<犠牲>は<システム>から登録しただけの仮の<聖剣>。魂に結ばれし<勇者>固有の聖武器と呼べる物ではないの」




それでも()()()()()使()()()()()()()()()()()()()のだけれど。




「え?じゃあケイの<聖剣>は?というかじゃあ<犠牲>の主って誰?」


「あいつの<聖剣>……<孤独(ソリチュード)>は朱梨先輩が持ってるわ。ケイが持ってる<聖剣・犠牲>は元はその人が持っていた物よ」


「アカリ……センパイ?」


「ええ、私達より前にこの世界に<召喚>された人よ」


「え?でも初代ってさくらと啓斗じゃ……」


「そうよ、人族の伝説の中ではね。でも紛れもなく、この世界に初めて<勇者>として召喚されたのは朱梨先輩なのよ」


「じゃあなぜ伝説に残っていないの?」


「<システム>がそうなるように干渉したから。<管理者>を除き抵抗も探知も不可能な<精神干渉>魔法。わかりやすく言うと、記憶と精神を弄り、さらに<システム>そのものの記録をも改竄した。だから啓斗の称号に<初代勇者>が存在するの」




この世界を管理し、永続させるために創られた<システム>は、この世界のほとんどに干渉することが出来る。例外として、個体それぞれの感情や細かい繁殖には干渉できない。




「だから<勇者>としての特殊性も持っていた。私達が<召喚>されたのは、彼女が召喚されてから500年後の事。でも彼女の外見は、召喚当時、つまり高校二年生・17歳のままだった。<勇者>は不老不死だからね」




<勇者>は不老かつ条件付きながら不死である。なぜなら<勇者>は<魔王>を倒す事は既定路線であり、その後は<システム>の<管理者>となる事まで決められているから。

「物語やゲームでは<勇者>は<魔王>を倒すのが普通。この世界もそういうことになっていた。そして<勇者>はそのまま<管理者>となる」



<システム>はかつてそのために創られた。異世界から<勇者>を呼び、<システム>を作った誰かの遺志を継がせるために。それは完璧なシステムだった。完璧だった。



「でもその既定路線を、私達は崩そうとしたの」



だが名も知れぬ聖人は、<勇者>と<魔王>の両方が、厭戦的であるという、非常に小さな、だが有り得た可能性を見逃し、考慮していなかったのだろうと思う。



僅かに二度目の<召喚>にして、<システム>の、創造者の、想定外の状況を発生させてしまった。


提言したのは春馬さん、その根拠に乗っかって方針を定めたのは啓斗。だから彼は自分の責任だと言い張っていた。自分が<勇者>であり、パーティー全体の意思決定を背負っていた、だからその責任も自分一人に帰すべきだと。


でも、それに反対しなかった私にも責任はあるはずだ。























「んで、コレは何があったんだ?」




<転移>先は前回戦闘があった平原。そこに居たのは公国騎士団長と、<勇者>パーティーの面々だった。




「お待ちしておりました<初代勇者>様」


「ん? ああ。それでこれは何だ?」


「その、<勇者>様が」


「騎士団長殿、俺達から話します」


「ではお願いします」




さあ説明求むぞ今代。




「何か、俺に用か、今代」


「そうだ、だがその用件を話す前に一つ言いたい」




おいおい横槍入れんな、お前には聞いてねえよ<槍術師>。




「なんだ」


「その兜を取れ」




は?




「なぜその必要がある」


「今後も、俺達と貴方は会う可能性が高い。本人確認が出来るように、顔を見ておきたいのです。ダメですか?」




<槍術師>に代わって<勇者>が理由を告げた。




「ダメだ。その理由は複数ある」


「なぜです」


「まず一つ。単純に俺は自分の顔を人にさらすのが好きではない。まあこれは俺の気持ちの問題だから論

外としよう。二つ目の理由として、兜をそもそも外したくないというのがある。この兜は、俺が展開させている<聖鎧>の一部。コレだけを外す事は出来ない。俺はこのような会合に丸腰で出るつもりはないのでな」




顔面ほど人体の中で弱い部分は無い。レベル差があれど、HP上のダメージ数値が出ないだけ、攻撃は通るから痛みも出血もある。眼球とか特にヤバい。目つぶしとか喰らってみろ、ボコられるだけだぞ。




「なら護衛を付けてくれば良い」


「俺もそうしたいところなんだがな、パーティーメンバーは、この世界出身の者は既に亡くなり、また共に召喚された仲間も再召喚されたのは<聖女>のみ。むざむざ人質になるような人間を連れてくるような愚行はしない。我ら<勇者>は不死身だが、<聖女>は不死身ではないからな」




まあ<緊急蘇生>の多重行使で疑似的不死身にはなれるし、<聖女>と言うが、聖属性・水属性攻撃魔法なら全部使えるゆえに魔法攻撃力なら俺と同等な大分攻撃的な<聖女>だから人質になるかと言われれば疑問だが。




「最後の理由は簡単だ。俺とお前たちが今度このように会う事はほとんどないからだ。会うとすれば戦場、それも敵としてであろうな。お前たちがこの前のまま、一国の走狗である事に甘んずるのなら、の話だが」


「な……敵として、だと……」




絶句しているようだが俺に首チョンパされといて今更じゃないか?


当たり前の話であるが、<勇者>は人族全体に属するべき物。高々一国がどうこうして良いもんじゃない。




「当たり前だろう。<勇者>とは何か、お前達は理解していないのか? 前回も伝えた筈だ。<勇者>は魔族、特に<魔王>に対する人族の切り札。いずれ来る人族と魔族の戦争において、人族の先頭に立つのが役目。俺もその役割を果たした。だからこそ元の世界に戻れたのだから」




まあ<魔王>と本気で殺しあったわけじゃないけどね。




「一方でお前達はどうだ。なぜ人族の内戦において一勢力に加担する。お前達の役割は、内戦を止め、人族を一つにまとめ上げる事だ。それがわからずに同族相手の侵略を続けるというのなら、俺は何度でもお前達の前に立つ。かつての<勇者>として、人族が無駄に滅亡に向かうのは看過できない。そういう事だ」




さて、では改めて。




「話が横に逸れたな。用件は何だ、今代」


「この国に同盟の申し出をしに来たのです」


「馬鹿だろう」




おっとつい本音が。いや<勇者>としては正しいがそれはどうなんだ。




「つい一週間ほど前に大々的に宣戦布告した挙句侵略戦争して、今更同盟の申し出とは」


「それは……」


「まあ良い。それで、その同盟の内容は?」


「……これだ」




<賢者>が出してきた用紙を眺める。


ふむふむ……大分綺麗にまとまっているし、内容もあまり偏っていない。上出来だね、コレは忠告が効いたかな? さっきのは要らぬ節介だったかな。ただまあいくつか呑めない項があるね。




「ふむ、良いとは思う。だが、この三つ目の『初代勇者の戦闘参加』という項、それから五つ目の『初代勇者による鍛錬』は不可能だな」




というかそもそもそれはこの国に対する要求では無いだろう。ああ、でもそう見られてもおかしくはないのか。




「……なぜです?貴方も<勇者>ではないのですか?」


「いや。俺は確かに<勇者>()()()。だが今は違う。俺は<初代勇者>で、その役割・義務は千年前に既に果たし終えている。今、俺がこの世界にいるのは、別の役割を背負わされているからだ」




もっと言えばお前らと同時に召喚されたからなんだが。




「それはどういう……」


「悪いがそれは話せない。特に<勇者>には、な。何、<勇者>としての使命を果たせば、自然とわかるものだ」




まあそんなこと万が一にもありえないことだけどね。だって魔王……は居るけどシステム上の<魔王>は居ないんだから、<魔王>の役割が居ないんだから<勇者>の役割なんて果たせるわけがない。だからこそ俺達が動いているのだから。今代魔王を打倒したところで<システム>には認められないだろうし、魔族を全滅させてもまたどこか山奥で生き残った設定で残党が出てくるだろうし。


<システム>とはそういうものだ。魔物も動物も魔族も人族も、絶滅することは無い。仮に動物の一つの種を絶滅に追い込んでも、数十年後ぐらいに、秘境の地的なところでひそかに繁殖しているのが再発見される。例えば竜の縄張りの中心近く、例えば中央縦断山脈の奥。人族・魔族が踏破できていない場所など、星の数ほどある。




「そしてその役割において、俺は人族と魔族との戦争に介入する術を全て禁じられている。俺指導の訓練もそうだ。直接参戦など以ての外だな」


「でも貴方が参戦してくれればより少ない犠牲で魔族を亡ぼすことが」


「出来るだろうな」




レベル200超の化け物参戦させたらそりゃあ魔族なんて一掃できるだろう。というかお前達全員要らない子になるぞ。別の<勇者>パーティー一個まるごと投入されるのと同義だから。でもそれじゃあ戦争の意味がなくなるんだよなあ。まあ今回<魔王>居ないから<システム>が戦争を始めるかどうかはわかんないけどさ。




「ではなぜ!」


「それが決まりだからだ。破ればそれなりの罰がある。まだ受けたことのある者が居ないから、どういうものかは知らんがな」


「そんな訳のわからないような、あるかどうかすらもわからないような罰の為に、人々を見捨てるというのか!」




そういう聞き方されてもな。期待している答えは出ない。




「そうだな。自分を重要視して何が悪い?」




悪いが俺ではこういう答えにしかならないぞ、どこかの物語の悪役の台詞っぽいな。というか当たり前だろう、相手は神だぞ。




「お前……お前はそれでも<勇者>か!」


「その役割は千年前に終えた。それに一つ聞くが、<勇者>が命を大切にしないで、どうするんだ?」




人族の戦力の中で、<魔王>と相対出来るのは<勇者>だけだ。<聖剣>の加護により、簡単には死なない体になっているとはいえ、何事にも例外がある。死亡してから<蘇生魔法>が発動後完了するまでに<聖剣>が壊されてしまえば、その瞬間に<勇者>は完全なる終わりを迎える。


死ぬ場所が後方なわけが無い。いや、暗殺とかなら有り得るが、それでも、だ。<勇者>が「死んでいる」間、<聖剣>を守らなくてはならない。もしかすれば<勇者>を超える力の持ち主と交戦する必要もある。<聖剣>を守りながら。


死体を守る必要は無いが、死体の損壊度が大きい程蘇生には時間がかかる。つまり交戦時間も伸びる。うん面倒だね。


つまり<勇者>の<聖剣>連動型不死身システムは、実のところ単独では使い勝手が大分悪い代物だ。それでも俺も最初のころに何回か命を救われちゃいるが。

まあ大抵の場合、<魔王>もしくはその手下は<勇者>を仕留めたことで満足して帰るので、大して問題になっていないのが実情である。


この辺りも大分ご都合主義が絡むが、まあそれはおいといて。




「<勇者>の再生とて、無条件ではない。<聖剣>とともにあってこその<勇者>であり、不死身だ。万が一、俺達の再生中に<聖剣>が壊されてしまえば、それは人族にとっては終わりを意味することになるぞ」




というかそもそも<聖剣>作り出したのも俺達呼んだのも神だぞお前。




「……だが、だからと言って逃げ隠れするばかりでは」



「誰が逃げ隠れると言った。ああ、これは俺の言い方も悪かったかもしれない。もっと命を大切にしろと言ったんだ。命の危機だと思える場合は迷わず逃げを選択しろ、という事だ。<勇者>は一度しか呼べないんだ。死んだから代わり呼びますと言うのは不可能だからな?それをしっかり理解しろ。


そしてもう一つ、あるかどうかわからない罰を恐れるのかと聞いたな。お前はこの世界に来る前、神の存在を心から信じていたか? 違うだろう。しかしこの世界には確かに、神と呼ぶにふさわしい権能を持つ、上位存在がいるんだ。


そしてこの世界において『神』が存在するというのなら、その『神』が定めた神罰もまた、元の世界のような存在を疑われるあやふやなものではなく、存在していると断定できるだろう。


この世界の『神』は異なる法則に支配された全く異なる世界を一時的にであるが繋ぎ、そこの人々を召喚できる、もしくはそんな方法を編み出せるような『何か』だぞ。それが下す罰だ。並大抵のものではあるまい。高々人間ごときが敵う物か。


さて、話が長くなってしまったな……騎士団長、俺はこれで良いとは思うが、大公閣下はこの条件で頷かれるだろうか?」


「こちらにお呼びします、おい、誰か。大公閣下をお呼びしろ」


「はっ!」


「さて、今代<勇者>諸君。二回目となるが、先達として改めて忠告しておこう」


「なんですか?」


「すべて自分の目で見て、自分の頭で判断しろ。戦場において頼れるのは自分だけだ。例え相手が例え人であれ、感情だけで手を抜くな。決してこの世界の者に頼りすぎるな。我らは<勇者>、世界を救う者だ、良いか、人族をじゃない、世界を救う者だ。<魔王>を倒す者だ。それを肝に銘じろ」




これだけ言えば十分だろうか?というかさっきから視界に警告メッセージが大量に浮き出てものすごく見えにくいんだが。やっぱこの発言だと警告に引っかかっちゃうか。




「……貴方様が初代<勇者>様ですか?」




後から声を掛けられたので振り返ると、そこには40代に見える一人の男性が立っていた。<鑑定>。

……そうか、この人が大公か。




「初めまして、大公閣下、お呼び立てして申し訳ない。私が初代<勇者>です」


「いいえ、構いません、私としてはむしろお礼申し上げます。先回は、我が国騎士団をお助けいただきありがとうございました」


「いいえ、アレは私の仕事です。なので気になさらずに。それよりこちら。シルファイド王国からの同盟締結の文書になります」


「拝見いたしましょう……ふむ、問題はなさそうです」


「わかりました…………だそうだ。俺に関する条項以外はOKらしい。だからそれを持って王国に帰れ。俺が忠告したことを守っていれば、よほどの事がない限り俺と会う事も無いはずだ」




これだけ念押ししておけば大丈夫……だよね……くっそ不安なんだけど。特に今代<勇者>。本人自体はそこまで危険でもなさそうだが、周りがな。<槍術師>なんて今でも俺を睨んでるし、<魔導師>はさっきから魔力を練って、拘束系魔法を撃とうとして、そのたびに俺が魔法を弾いてる。お前らは何がしたいんだ、<勇者>だろ。




「では――――――ああ、そうだ、今代。一回、<防衛者>と<支援者>の弔いくらいは行ってやれよ。お前がそいつらの分まで働かなきゃいけないしな」


「あ、ああ」


「じゃあな――<転移>」







《禁則事項です》

に近いですね。今の発言のこの部分これこれの禁則に引っ掛かりましたよ、と。


何事にも例外はある、それを読み切れなかった<システム>が悪い()()

彼等の旅はまだ続きます。現実世界の季節が作中季節を追い抜いてしまいました。流石に今年まで追い抜かれないようには更新していきたいですね


ハーメルン版、更新がストップしているのはスランプ+テストです、次話は九割がた完成しているんですがね……そろそろ動きを見せないと、延々と洞窟探検は飽きられてしまいますしね。


それではまた来週にでも

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