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防衛者  作者: クラリオン
序章  召喚
2/21

序話  昔から

初めまして、本編開始の地球時間三年前、異世界時間千年前のお話です。


暇つぶしになってくれると嬉しいです。

「俺ってさ、昔からずっと分かんなくて、気になってたことがあったんだよ」


青年は城門の上から、西の夕焼け空を眺めながらそう言った。


「気になっていたこと、ですか?春馬(はるま)さん、それは一体どのような?」


応じたのは傍らにいた少年、まだ中学生ほどだろうか。白い鎧に身を包み、腰には二振りの剣を提げている。その姿は、そう、まるで<勇者>のようだ。春馬と呼ばれた青年は、視線を夕日から外さぬまま、話を続ける。


「大抵のRPGゲームってさ、魔王と勇者出てくるじゃん?でさ、勇者は魔王城目指して、長い長い旅に出るわけだ。ゲームの中じゃ数日から数ヵ月程度だけど、実際は多分年単位かかっててもおかしくはないだろ?実際、あっちにあったそういう系のラノベなんかも転生チートによるが、そこそこ長い旅なわけだ」


「ええ、それが何か?」


「その間さ、魔王はずっと、魔王城で、勇者待ってて、その代わり四天王みたいなのが中ボスで出てくるわじゃん。でそいつらって普通の人間じゃ対処できないわけだ。下手をすれば、成長途上の勇者と互角以上」


「ええ、まあ」


「勇者は魔王城へ、真っ直ぐ行く訳じゃないんだよ。例えば北から魔族が攻めて来ているのなら、文字通り東奔西走するわけだ。しかも南に行ったりとか、海に出たりとか。だからそんな長い旅なわけだが。ここで疑問が浮かぶんだよな」


「疑問ですか?」


「なんで魔王とか四天王はさ、勇者がいない間に町とか国を滅ぼさないんだろうなって。まあ首都自体は、古代から伝わる機械の結界が云々っていう設定が多いけど、でも他の町は滅ぼしに行けるはずだよな。勇者が一時的な拠点にしてるところとか」


「そう、ですね。言われてみれば確かに…」


「しかも古代機械とやらも、魔王本人の魔力には耐えきれないレベルでしかない。だから四天王とかが勇者を邪魔してる間に魔王とか他の四天王とかが攻撃を掛ける、初歩的な連携で魔王は勝てるはずなんだよな。でも実際には魔王はほとんど引きこもりだし、四天王は順番に一人ずつやられに来るだけなんだ。無論、設定だから、とか、仕様だから、とか言われてしまえばそれまでだけど」


「じゃないと勇者は魔王を倒せないし、人族が滅亡しちゃいますからね」


「でもさ、こうやって現実に起こってしまう出来事、という体でラノベが書かれているわけだけど、やっぱそういう事について詳しい説明が欲しいわけだ。現実に起きるなら、いつ自分の身に起こるかわからないだろ?」


「まあ実際こうやって起きちゃってるわけですが」


「だな。ま、でも、そのお陰で、その長年の疑問にも決着を付けられたわけだが」


「ああ、なるほど、確かに春馬さんポジの人がいれば、勇者が居ないからあるいは成長途上だから、といって攻撃を仕掛けるのは自殺行為ですね」


「そうだ。いくらなんでも攻撃したら即死級のカウンター(・・・・・・・・・)が返ってくるところに攻撃したい奴は居ないだろうしな。つまり、俺のような<防衛者>が居るから、<勇者>は、お前みたいに東奔西走、南にいって船に乗って海へ、とか出来るんだな。感謝しろよ、<勇者>?ははっ」


「はい。勿論ですよ<防衛者>。いつも感謝しています。それともそれらしく言った方が良いですか?<勇者>として貴方の働きに深く感謝を申し上げます、どうかこれからも守りの担い手として人々を護って…ん?これ僕の台詞じゃないですね。あとでさくらにお願いしましょう、聖女の微笑み付きの直々の感謝の言葉ですね。レアですよ?いや、いっそのこと王女殿下に…」


「恥ずかしいからやめてくださいお願いします」


「良いじゃないですか、王女殿下の満面の微笑みなんてさくらの微笑みレベルでレアですよ?」


「いや正面から感謝されるのはなれてないから正直恥ずかしい」


「そこは褒められたら『俺だって本気出せばやれるし…』とか顔を背けながらですね…」


「何の台詞から引っ張ろうとしたのかは予想できるけど、出来るだけにやりたくねーよ!21歳の男に何させる気だお前は!そして俺は引きこもり系では断じてない!一般的な男子大学生だ!」


「――随分楽しそうですね、春馬さん、啓斗」


「ああ、さくらか。どうしたんだ?」


「何か楽しそうな声が聞こえたから来てみたの」


「俺は弄られてただけなんだが…」


「春馬さんはそういうキャラですから仕方ありませんね」


「俺の扱い酷くない?!<聖女>なんだからもう少し優しさを見せて?!」


「春馬さんには陽菜乃さんがいるでしょう?」


「…それはそうだけどさあ…」


「だったら良いじゃないですか?それともこういうときの恒例展開(テンプレ)としてハーレムをお望みで?」


「そんなわけないだろ!いや、男としては興味はあるが、夢は夢で留めておくのが賢明だ、そうだろ<勇者>?」


「そうですね。陽菜乃さんも春馬さんの後ろで阿修羅を引き連れていますし。」


「ひぃっ?!」


いつから居たんだ?!と悲鳴を上げる青年を、少年と少女は笑いながら見ていた。




これは、異世界から召喚された勇者が、魔王を無力化(・・・)することに成功する、2年前の事。この一週間後に、魔王軍幹部による襲撃をあっさり退けたとある街での一幕。




出演者は、<防衛者>国崎(くにさき)春馬(はるま)、<勇者>神崎(かんざき)啓斗(けいと)、<聖女>内山(うちやま)さくら、<支援者>中岡(なかおか)陽菜乃(ひなの)


後に初代勇者パーティーと呼ばれることとなる異世界人であった。


彼らは、これから二年後、無事に魔王の無力化(・・・)に成功。地球の召喚された時間と場所に戻された。それから時は流れ、異世界で1000年、地球で3年経った時。二つの世界は再び祈りによって繋がれ、<勇者>が召喚される。そしてそれに初代勇者パーティーのうち二人も巻き込まれるのだった。


色々露骨に伏線のような何かを振りまいたつもりの作者です。


一応お伝えしますが、本編の主人公は、少年のほうです。


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