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防衛者  作者: クラリオン
第一章 南へ
11/21

第八話  初依頼/さらに南へ

お久しぶりです。遅れに遅れて申し訳ありません。

……新しい話書いてたら乗りに乗っちゃったんです。


サブタイトルですが、どうもしっくりこないのでこういう形になりました、いずれ変更されるかもしれません。



「ここがガルデアか」


「そう。エメラニア北端の街。と言ってもエメラニア自体がそこまで大きい国じゃないから、早馬ならここから二日もかけずに南端まで行ける」


ガルデアの北門で、入るための手続きの順番待ちの間に簡単な説明を受けた。エメラニアはどちらかと言うと、東西に広い国らしい。


「ここで冒険者ランクをCかDまで上げて」


「出来れば一週間以内にはここから動きましょう。あの国が本当に<勇者>を手駒として戦争を始めるならまず自国の拡大を図るはず」


「ここと後もう少し南に行った国もあまり大きくないので、侵略するとしてもそこまで間をおかないでしょう。いずれ<勇者召喚>と魔王復活を口実に勢力拡大をするでしょうし」


「現段階でこの国が攻められる可能性は?」


「ないとは言わないわ。でもそのための口実が無い」


「さくらが言う通りに動くとしたら、今この状態で他国を敵に回すのはあの国にとっても得策じゃない」


「今の段階の<勇者>はまだ手駒として使える状態じゃあないからな……早くてあと数週間てとこか」


「最初にまず盗賊あたりかしら?私達みたいに」


「普通の盗賊か、そう仕向けられた奴かは知らんがな……」


「次の方どうぞ。身分証明書はお持ちでしょうか?」


「ああ、三人分。これだ」


「……はい、えー、ケイさん、さくらさん、セレスさん、でよろしいですね。冒険者ですか、はい、確認できました。良き滞在を」







「んでここが組合か」


「そうね、入りましょ?」


さて、こういう時はやっぱり伝統行事があるべきだと思うんだがどうかな?


「すいません、依頼を受けたいんですが」


「冒険者ランクはどれでしょうか?」


「私と兄がF、姉はDです」


セレスは冒険者証は持ってはいるが、依頼を大して受けていないのでランクはDなのだとか。


「となるとパーティーで受けられるのはEランクまでですね。今現在出ているEランクまでの依頼はあちらの掲示板にあります。受ける依頼が決まったら、依頼書をはがしてこちらまでお持ちください」


「わかりました。ありがとうございます」




人との折衝はこいつに任せて正解だな。俺と話すときと性格が違う。二重人格者かこいつは。




「……どれ受ける?」


「出来れば討伐系が良いだろう?<防衛者>のレベル上げを兼ねるなら討伐系が手っ取り早い」


「そうだね……じゃあこれかな?」


そう言って、俺達に口調を崩すのに慣れてきたらしいセレスが取った依頼書の内容は、



《ゴブリンの群れの討伐依頼》



だった。なんでもここから少し西に行ったところにある森から草原にかけて、ゴブリンの目撃情報が頻発しているという。目撃情報から上位個体数体に率いられた群れの可能性が高いとのこと。



まあちょうどいいのではなかろうか。三人しかいないなら、<絶対障壁(バリア)>で全員覆って、全員で攻撃しまくればいい。最悪とどめはセレスか<勇者>状態の俺がやればいい。


しかし上位個体か。アーチャーとかウィザード辺りなら大したことないけど……ジェネラルとかレッドキャップ、ブラック辺りはランク上がるからなあ……ま、いっか。



「これを受けます」


「《ゴブリンの群れの討伐》ですね、わかりました。あ、パーティー名どうします?」


「どうする?」


「あれでいいだろ。いつもの」


「了解。じゃあこれで」



そういってさくらが紙に書き足した。










「パーティー名は……えっと、<ヴァルキュリオン>で間違いないですか?」













「はい。お願いします」


「西の森・草原の場所はわかりますか?」


「あ、はい。大丈夫です」


「それではお気をつけて」




ギルドを出たところで、誰ともなしに呟いた。




「テンプレ無かったな」


「まあ時間帯の問題と、あとは三人ともフードかぶってたから顔見えなかったんじゃない?」


「じゃあ次は外して入るか?」


「それはそれでめんどくさそう……」









西の森には、馬を走らせて一時間ほどで到着した。森の外、草原の手前で馬から降りて低くかがむ。


「じゃあ始めようか」


「そうだな。<魔力探知><周辺警戒(レーダーマップ)><絶対障壁>」


「<硬き壁(ハードウォール)><自動治癒(オートリペア)><自動回復(オートヒール)>」



俺とさくらで矢継ぎ早にスキルを発動。完全に無傷で済ませる気だ。さてさて……敵の数は……?



「ゴブ43、アーチャー5、メイジ4に……赤5、黒3、あと……将軍(ジェネラル)2、(キング)1」


「随分上位個体多いね、これEの依頼じゃないよ、少なくとも4人で、全員Dの編成で挑むような依頼だよ……」


「まあ俺等なら」


「赤子の手を捻るようなもの。だけどレベル上げしなきゃいけないし」


「どうする?」


「セレス、遠距離攻撃できる?できれば誘導できるか、見ても回避できない攻撃で」


「一応弓矢は出来るけど……」


「じゃあ私が付与するからケイ、管制と警戒お願い。アーチャーとメイジ優先」


「了解」




こいつ俺より<防衛魔法>使いこなせそうだな。恐らく矢に速度上昇系の付与をかけるんだろうな。<付与(エンチャント)>も魔法に分類されるから、<周辺警戒>にも表示される。誘導系の付与ってそんなんあるの?




「<誘導付与(エンチャント・ホーミング)>」




あるんかい?!



「誘導方向の指示もお願い」



「了解、今見てる方向を零時方向とするぞ。一時方向及び二時方向に弓各1、十一時方向に弓1、魔2。十時方向に魔2が並列展開、零時方向に弓2」



次々と読み上げていく目標に、これまた次々と矢を放つセレス。ほとんどが誘導の必要性もなく、目標めがけ一直線。途中で速度を上げたのはさくらの仕業か。




こうしてまず遠距離攻撃が出来るものから何が何やらわからぬままに駆逐された。どこから攻撃されたのか分かっていないのだろう、普通のゴブリンが半恐慌状態のまま逃げようとしているのが見て取れる。上位個体は流石に恐慌状態ではなさそうだが、攻撃がどこから来たのかわかってはいないらしい。




「他の上位個体どうする?」


「後は接近戦でひたすら殴る。その方が経験値の貯まりも早いはずだから」



とのことなので、あとは3人で固まって派手に突撃。俺が殴ってさくらが投石して、最終的にセレスの剣で止めを刺した。いやあ非常に楽でした、はい。将軍とか王とかもいたけど、一度も攻撃させる事無く倒せた。レッドキャップ?ブラックゴブリン?殴ったりする回数が多かっただけですけど何か?


「敵影無し。目標の殲滅を確認」


「討伐部位も確認。あとは全部燃やせば済むけど……」


「俺がやる……<火球(ファイアボール)>」



職業を<勇者>に変えて<火球>を連続で生成。<周辺警戒>でマークした魔物の死体に次々と当てて燃やしていく。あとは放置しておけば、死体が燃焼しきった時点で勝手に消える。



とりあえず今回の討伐で、俺もさくらもレベルは4まで一気に上がった。とはいえステータスは大して変わってはいないのだが……いや、数字上は確かに四倍なのだが、元が元なので、五桁ステータスになれた俺からは大した変化には見えない。



「じゃあ行くか」








「……これ、全部、ですか……?」


「そうです。ゴブリンキング1、同ジェネラル2、ブラックゴブリン3、レッドキャップ5、ゴブリンメイジ4、同アーチャー5、ゴブリン通常個体43の討伐証明部位です」


「しょ、少々お待ちください。昇格条件を確認してまいります」


ふむ、やはり昇格か。まあゴブリンキングなんてめったに出ないし、ソロ推奨ランクDだしな。しかも普通は取り巻き連れているだろうし、当たり前か。


「……お待たせしました!えーと、まずさくらさんとケイさんですが、FからDに昇格です。そしてセレスさんですが、DからCに昇格です。おめでとうございます!」


ふむ、思ったよりは上がったな。これでもうちょい経験値効率の良い依頼が受けられる。レベル上げもそこまで苦労せずにすむ……はずだ。








そして、ガルデアに到着してから三日経った。流石に初日のようにあっさりランクが上がることは無かった。アレは例外だろう。とはいえ全員Cにはなった。



残念ながらエメラニアは、平原に成立した国なので、山があるわけではない。従って、こう言った異世界召喚を題材にしたラノベ、ネット小説のように、飛竜を狩りに行ったり、山賊狩って人質助けたりすることも無かった。無論大戦果を挙げて組合長さんが来てお話した結果ランクがSになることも無い。何か強い冒険者に認められるなんてことも無かった。現実は厳しいのだ。



ああいうのはやはり主人公補正が必要なのだろうか。俺も一応<勇者>だから主人公なんだけど……

まあ面倒ごとは嫌いだから構わないんだけれどね。




さて、一方で本題の<防衛者>のレベル上げ及び<防衛魔法>のレベル上げと新スキル獲得だが、まあ成功したとみていいだろう。


<防衛者>自体のレベルは、ここ数日ひたすらゴブリンオークオーガウルフを狩りまくったことで、13まで上がっている。


<防衛魔法>だが、まず<絶対障壁>を延々と張り続け、延々とダメージを喰らい続けた結果か、レベルが5になっていて、派生スキルを獲得した。<迎撃(インターセプト)>というもので、<絶対障壁>に一回攻撃を受けたら、それ以降は攻撃した対象から放たれるすべての攻撃を自動で迎撃できる、というスキル。



MPは追加でもっていかれるようだが、効率は<絶対障壁>より高く、また攻撃の威力にかかわらず消費量は一定とかいう効率が壊れかけたスキルなので心配なし。



次に<周辺警戒>もレベルが5になった。とはいえ、まだ大したことはできない。視界にある地図のアイコンに名前が入ったり、<迎撃>と連動させるくらいだ。



そして<防衛魔法>そのものがレベル5になったところで、例の新スキル獲得に成功した。<防衛装備召喚(サモン・ディフェンス・フォース)>というこれ。なるほどこれはぶっ壊れだと確信した。



スキルの説明は『スキル使用者が防衛用であると確信できる物品を召喚できる』というものだ。一目ではわかりにくいこの説明。



が、これをわかりやすく、極端に説明するなら、現代兵器が召喚できる、と言うことだ。まあレベルによって制限があるが。



しかし『防衛用であると確信できる』って絞ってあるのは<防衛者>だから、なんだろうな。小説とかなら何でも召喚できるか、何でも作れるかってとこだろうけど。そんなことしたら、この世界への干渉が大きすぎるからねぇ……<防衛者>としての職務を果たせるだけに絞ってあるんだろうな。



今のレベルで召喚できるのは拳銃か手榴弾程度だが、レベル上げにはちょうどいいかもしれない。ちなみに拳銃は弾はどこからともなく補充され、終わったら一言


「<任務完了(ミッション・コンプリート)>」


と言えば消える。ナニコレ便利。今のところ出せる数も二個までだが、まあ現代兵器なのでそれで十分だろう。




「で、どうする?」


「出来れば車かバイクとか出せるようになるまでレベル上げしてほしいんだけど……」


「ここら辺の群生してた魔物ほとんど狩っちゃったし……」


「予定より早いけど、移動しながらレベル上げするか?」


「そうね、そうしましょう。少しでも距離も稼ぎたいわ」


「明日の朝出発で良いな?」


「動くのは早めに、兵は神速を貴ぶ、ね」


「じゃあそういうことにするか」



車サイズの物を出せるようになるまで何日、あるいは何週間かかるかわからないが、その間にも、あの<勇者>共も強化されていく。<魔王>と合流して制圧準備を整えるのは少しでも早い方が良い。出来れば<勇者>が戦争に出る前に。







そして翌朝、ガルデア・南門を抜ける。


「……はい、確認しました、良い旅を!」








黙って馬を走らせていると、ふと、さくらに聞きたいことが出来た。


まあ、聞くのは途中の昼休憩で良いか。










「……なあ、あいつらに人殺せると思うか?」



「……そうせざるを得ない状況に追い込まれたらするんじゃないかしら」



「うわあ……嫌だねえ、あいつらの理性に祈るしかないとは」



あいつらがそうなったら、制圧係は間違いなく俺達だ。もし敵認定されて本気で殺しにかかってきたら、こちらも同様に対応せざるを得ない。



「期待できるものじゃないと思うけど……まあ私だってわざわざ同級生を殺したいとは思わないわ」


「……バレてた?」



まさか、こいつ、エスパーか?!



「……まあそれくらいはね。今の状況で、あんな質問されたら何を心配してるのかぐらいはわかるわよ。でも良い?もしそうなっても手を抜いては駄目よ、<勇者>。こちらで優先すべきなのは」


「私情じゃない、世界だろ?知ってる。うわぁ、もう。あの時逃げたのがここで掛かってくるとは……」



千年前の借金ですかそうですか。



「同感。でもまあ今更でしょう。それにあれはケイだけじゃなくて私達全員の責任。その分今働けば済む話!」


「……そうか、そうだな」



幸いにして<魔王>はまだ生きており、竜種もすべて健在。<システム>の管理に問題は無い、はずだ。問題が発生するとすれば、それは<システム>の管轄外――異世界から、つまり<勇者>によるもの。


<魔王>がその役割を果たしていない今、人族側の<勇者>の存在は、恐らく<システム>の想定外である可能性が高い。確実に想定外だ、と断言できない辺りが<システム>の恐ろしさなのだが。だってあれスパコンとかいうレベルじゃないんだぞ……


まあそれはさておき。


バランスブレイカーなのはどう考えても<勇者>の方だ。<勇者>そのものは<システム>では処理できない。




となると処理を担当することになるのは管理者サイド。<魔王>……は無いな、竜種か俺達か。でも竜種には<システム>管轄内のスタンピードを処理してもらわなくてはならない。となると、俺達、か。


いやだなぁ……まともに話聞いてくれなさそうだし……確実にこれ制圧任務だろ。相手が殺す気で来たらこっちも同様に殺す気で迎え撃つしかないから……つまり最悪二、三人殺すことになりかねないわけで。






「……頼むから俺に学友殺しをさせないでくれよ、<勇者>……?」




どこの馬の骨とも知れぬ山賊とは違う。どこぞの国の軍人とも違う。



個人的な事情……というかまあ性格のせいで、一定以上の距離を保っていた。こっちに来てからはまあ色々やられたし、顔を合わせたことも少なかったが。


それでも、一応俺の中では既に<クラスメイト>として分類しているわけで。


曲りなりに同じ学び舎で一年間は過ごした顔見知りを殺すのは恐らく、精神的にも一回り、重いものがあるのだ。





例え相手が、こちらがそうであるとは知らずに、必要とあれば容赦なく殺しに来るであろうと予想は付いていても、だ。







「……その時は、その時よ。幸いにして……<勇者>は死なないから」


「仕事、だしな……大丈夫、やるべきことはやる。場合によっては<勇者>を殺す」


真の<勇者>は、<聖剣>が無事である限り、死ぬことは無い。場合によってはそれは救いだ。場合によっては――俺の考えでは、それは地獄だ。


だが、この場合、殺しても死なないのは、俺にとって救いとなる。


「行こう。休憩ももう十分だろ」


「そうね」



以上です。


感想批評質問等、お待ちしております。

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