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短編集

ロープと部屋と、日曜日。

作者: 巫 夏希

 暗い部屋に、蛍光灯がぶら下がっている。

 その下にはロープがぶら下がっていて、わっかを作り出している。

 床にはゴミや本が至る所に散乱していて、眠るわずかのスペースとパソコンのスペース、それにテレビの周辺だけがかろうじてゴミが無く綺麗な空間となっていた。まあ、それはあくまでも比較の範囲内だから、何も言えないのだけれど。

 時刻は午後四時。曜日は日曜日。明日は会社だ。明日から会社だ。

 仕事は……どういう仕事って言えばいいだろう。自分でも何といえばいいかわからないけれど、ただ会社の名前を言えば皆「ああ、あの会社か。とっても有名じゃないか」と自分が就職しているわけでもないのに鼻高々となる。

 人間というのは案外そういうものだ。実際自分が何も関わっていないのに、知り合いが関わっているだけでまるで自分の実績のように語りだす。別にてめーが何か考えてやっているわけでもないだろうが、と文句を言いだしたくなるがそこはぐっと堪える。

 スマートフォンをちらりと見つめる。スマートフォンの着信履歴は親と家族と、会社からの着信がずらりと並べられている。曜日も時間も問わない。僕の会社はそういう会社だった。前は昼間に働いて家に帰って直ぐに呼び出しを食らって次の朝まで働いたことがある。その着信だって残されている。その次の日は必死に対応したのに治らなくて親会社の上司にぼろくそに叱られた。そういうときだけしゃしゃり出てきて、怒るだけ怒って消えていった。

 そしてその後始末をするために土曜日も朝から会社に行った。夕方までかかった。それでも治らなかった。帰ろうと思ったら次の日の担当である先輩が今から職場に行くと言い出して結局さらに一時間仕事の引継ぎをすることになった。

 そのあとは眠れない日々が過ぎていった。正確に言えば、怒られて、眠れなくなって、眠れないものだから仕事に手がつかず、仕事のボロが出て、さらに怒られて……。はっきり言って悪循環だった。

 こんな人生だったのかなあ、と思いながら僕は蛍光灯の直下にある椅子に乗る。

 パソコンはスリープモードで放置してある。デスクトップに遺書を残しているからだ。それは僕が今まで仕事で疲れてしまったということ、そしてもう何もしたくないということ、パソコンは処分してほしいということ、それらがつらつらと書き連ねていた。

 趣味で書いていた小説も、ここ一週間まともに手がつかなかった。最初は逃げるように書いていたが徐々にストレスがそのパーセンテージを占めるようになって、それすらもできなくなった。昨日は何度か気絶を繰り返して、気づけば一日潰れているケースもあった。

 もう限界だった。

 僕は何もしたくなかった。

 僕が何をしたのだろうか?

 僕はいったい、何がしたかったのだろうか。

 子供のころに描いていたのは、こんな人生だったか?

 ロープに首をかける。あとは椅子から降りればいいだけ。数舜の苦しみののち――訪れるのは無だ。

 未練はない、といえばウソになるがもう疲れてしまった。

 だから僕はこう行動に出るのだから。

 さよなら、クソでくだらない世界。

 そうして、僕は足元にあった椅子を蹴り上げた。


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