ダグ
むぅ、展開していくうちに時代劇の殺陣みたいなのができなかった・・・・力量不足なりorz
「おい、リーダー、後ろがやばいことになってる。一旦体制を立て直してからのほうがよくないか?」
「馬鹿言うな、上玉をほうって置けるか」
舌なめずりしながら、リーダーオウンガが商会の娘を見下ろしていた。
ああ、こいつはだめだ。
もう目の前の餌にしか興味がないという感じである。
はぁ、なんだろうな。
ため息をついていると後ろから声をかけられた。
「ダグワン、ダグフォーのほうから確認。出てきたスケルトンだがレベルがやけに高く、しかもかなり数が多いとのこと」
「わかった、ダグスリー。なら、ダグツーも一緒にそのスケルトンの相手をするぞ」
「いいけど、あの女はどうする?」
「捨て置け」
そういって俺たち、筋肉を総動員して、先ほど相対した女をその場に置いてスケルトンの群れへと向かっていった。
俺たち、というか、俺はダグ。
もともと父は法務官、母は良家の娘と魔族の中でも上流階級のものであったが、俺としては産まれてすぐに上の職業持ちへの洗礼をうけさせてもらえたことから、せっかくだからと、幼少の頃から鍛えに鍛えて今の俺がいる。
そして、固有の特殊スキルを得られた俺は強さを求めて家を出て、各地をさすらい気がつけば表ではあまり知られていないかもしれないが、裏の世界では名の知られた武闘家になった。
そして、今こうして周りにいる俺と同じような男たちは俺の分身でもある。
俺を含めて四人までが限界だが、自立して各個に行動が可能で、俺たちのついたあだ名が『カルテット』
四人組ということだが、もともと俺ひとりであったこともあり連携は神威に至る。
スタートゥースもかなり高く鍛え上げたこともあり、分身にもそれが反映される。
そうして数多の依頼が俺にはきて、そして、今のこの奴隷商から是非にと依頼を受けてここにいるわけだが・・・・
この奴隷商、一応王家公認ということになっているがいちいちやることがえげつない。
戦争したいという王が金を集めろと税を増やし、それをさらに水増しして懐に入れようとするこいつはないならないで誘拐なりの身代金かなければそのまま奴隷として売るという思考で欲の亡者といったところであった。
前の革命王の治世ならいざ知らず、今のその子の治世ではこんなのも蔓延るということになるか。
俺としてはあまり好きになれないが一応今は雇い主である。
給金はかなり豪勢にもらっているのでその分は働くがね。
そしてここまでくる道中、大した魔物もこちらを襲う人族も獣人族も魔族もいなかった。少々つまらんなとも思っていたが・・・・
「どうだ、そっちは」
「うわ、ダグさんだ。ダグさんがきてくれたぞ!」
「うぉ、これで勝てる。よっしゃぁ、いくぜぇ・・・げふ」
雄叫び上げて襲う、この道中のみのここまできた仲間の一人がスケルトンの剣に貫かれて絶命する。
太刀捌き、なかなかのものである。
死んだ仲間は打ち捨てて、俺はスケルトンの群れの中に足を踏み入れた。
そう、こうして強そうなやつらに出会えたのは僥倖というものだ。
とりあえず、こいつら、どんなのかみてやろう。
スケルトン Lv.20Max アンデット
魔物 敵認証 討伐対象
ほほぅ、一体一体全部がスケルトンでありながら全部スケルトンで最強とはな。
だが、所詮スケルトン。
「どりゃぁ!」
気合一発、拳で殴りつける。
あっさりというほどではなかったが、かなりのダメージを与えられたようで、一気にその一体はがたつき、とどめと蹴りを放てばもろくも崩れ去った。
槌を持つスリーが殴打で周り中のスケルトンをなぎ払い、ツーは俺と同じく殴って突っ込むを繰り返す。
お、フォーがいた。
あいつ、大剣を構えてどんどん切り払っていく。
おっしゃ、オリジナルの俺が負けては廃るというもんだ。
このままどんどん押し込むぞ。
どれだけ屠ったか。
なんだか、周りがやけに静かに思える。
俺としてはもう300は屠ったか。
分身の三人も同じくらいは屠っただろうが、それでもスケルトンの数は減らない。
どころかむしろどんどん増えている上に、その上位種まで混じり始めやがった。
どこからともなく魔法がこっちへと飛んできて目を転じれば、杖持ちの詠唱しているスケルトンまで嫌がったのだから。
おかしい。
救助か何かかのものならこんなにスケルトンが来るはずがない。
近くにそういう増加していく結晶であったのか?
いや、こんな街の近くにそんな危険物があるわけがない。
なら、このスケルトンの群れはいったいなんだ?
異常だ。
そして仲間の方だが・・・・
気がつけば、荷馬車はスケルトンに取り囲まれていて抵抗したやつらは全員血の海に沈んでいる。
商品がどうなったかは見えない。
そして、あの雇い主だが、こいつがどうなったかはわかる。
俺の足元に首だけになって悲痛な表情でこっちを見ている。
どうやら戦っていて残っているのは俺だけといったところか。
分身も全員満身創痍に近い。
俺もそうだ。
くそ、こうなったら、分身を出すのはけっこう大変だったが、ひとつになって、ここをかいくぐるしかないか。
「集合」
「「「おぅ」」」
俺たちがひとつところに固まる。
そして
『合体』
それぞれで腕を組み円陣を作る。
するとぴかっと光り、気がつけば俺ひとりになっていた。
よし、スケルトンどもが様子見してくれていたおかげで好機ができたぜ。
《今回の戦闘勝利により【敏捷強化】のレベルが上がりました》
《今回の戦闘勝利により【職業】[上級悪魔]のレベルが上がりました》
《今回の戦闘勝利により【種族】レベルが上がりました》
《【種族】のレベルが上がりましたのでボーナスポイントが2加算されます》
《【種族】のレベルが上がりましたので[敏捷値]に3が加算されます。残り4をステータスに反映してください》
おいおい、忙しい時に天の声なんぞくるなよ。
確かに合体したときにこういう現象はおこることもあるが、ちょっと時と場所を考えてくれよな。
スタートゥースの操作なんぞしてるまではないってのに・・・・しかし、小さな差もそれが転じて好機になることがある。
今はどうやらやつらも動かず、こっちの様子を見ているようであるし。
なら、ちゃちゃっとやっちまおう。
ダグ 上級悪魔(武道家職) Lv.41(↑1) 魔族Lv.102(↑1) 男性
ボーナスポイント 14
筋力値 240(+20)
敏捷値 294(↑7)(+25)
魔力値 30
知力値 60
精神値 130
器用値 122
スキル
打撃 両手槌 両手剣 軽鎧 蹴り 格闘 回避 剛力 分身 並列思考 硬化 敏捷強化(Lv.43(↑1))
全部敏捷値に振ってしまえ。
素早さだけでなく、どうやら防御も固くなるようだからな。
それにしても、スケルトンども、こちらを襲わず動かないようだが、どういうことだ?
「きゃーーーー!」
女の悲鳴。
さっきの女か。
どうやらスケルトンの群れにかつぎあげられてどこかへいこうとしている。
ふむ、生きているやつとすれば今のところあいつだけか。
あー、頭が妙に醒めているのもあるが、どうにもこのままあの女を無視してもいいのだが、どうにもあの負けん気は嫌いではない。
それに弟を見捨てずにいたこともなかなか評価に値する。
戦いの場であったので情け無用としたが・・・・
進路上としては一番スケルトンが手薄そうに見える。
ついでだ、助けといてやろう。
それにもう雇い主も死んでしまっていることだし、ここで少しは恩なりなんなり拾っておこう。
「どりゃぁ!」
気合一発、一気に駆け抜ける。
俺も含めて四人分の力がこみ上げる。
このときのみだが俺には【剛力】というのが使える。
ぶっちゃけ、筋力と敏捷が一時的に四倍に増えるというものである。
使える時間はおおよそ10分と少し。
レベルと関係があるようだが、これを使ったあと、一気に筋力と敏捷が4分の一になって、かつ丸二日は分身が使えない状態になる。
だが、このときの俺は天下無双。
こんな大群くぐり抜けるのもわけはない。
女は・・・いた、何やら胴上げされているようなものだが、とりあえず、
「いただくぜ」
「なっ、あんたは!」
スケルトンから胴上げしているところを一気に突っ込み、少し体が浮き上がったところをかっさらってそのまま走り抜けた。
女は憤怒の顔をしているが俺としてはどうでもいい。
「黙ってろ。今助けてやる」
「な、どの口がそんな」
「どうせ、雇い主は死んだ。俺は好きにするだけだ」
じたばたと暴れる女を肩で担ぎ上げつつ一気に速度を増す。
街の方向はこっちだったな。このままあの弟とも合流できるだろうし、そいつも回収して街の入口に放り投げてくればいいか。
「よし、抜けたか」
スケルトンに切れ間ができ、このまま駆け抜けよう。
そうしようとしたときだった。
「いやいや、このままその人をつれて行くのはやめてもらいたいのぉ」
そういって、木の陰から唐突に俺の目の前に黒衣に身を包んだ小柄な男が現れた。
なんだこいつは。
だが、走り抜けようとしたとき、本能的に俺の足がとまった。
なぜかはわからん。
だが、数々の修羅場を超えてきた俺にはわかる。
やばい。
なにがどうやばいのかわからないが、こいつはかなりやばい。
警戒しろ、早く遠ざかれと無意識の中の俺が叫んでいる。
しかし、女をこのまま捨てていくのはどうにも・・・・・そして、別の俺がどこかで叫ぶ。
こいつは、またとない獲物である。
と。
「え、天使さん?」
ん?女が小柄な男を見たとたん、どこかはっとしたような声をあげた。
なんだ?知り合いなのか?
しかし、どうにも向こうからは好意的な感じは伺えないが・・・・
何者なんだ?
「とりあえず、誘拐魔さん。抵抗はやめてその人を下ろして退散なさい。でなくば、儂としても女子供に非道な真似をするやつは許してはおけんぞ!」
そう男が答えた。
というか声の感じでおもった。
少年であった。




