7話【強さの果て】
俺たちはマルロの家を出て、ギルドへと向かっていた。なぜなら、この前の戦闘を経て、何かしらスキルやレベルが上がっているかもしれないと考えたからだ。
「おっ、あった。テッコイギルド」
俺たちはギルドの中に入り、レベルを測ってくれる受付のところに行った。そこにいたのはミランダさんとよく似た、というかミランダさんだった。
「み、ミランダさん!?」
「……あら、シオン君。テッコイまで来たのね」
「あらじゃないですよ! なんでミランダさんがここに?」
「あー、そっか……説明してなかったわね。私が担当してるこのレベル測定器ってコレ私たちカーバイド一族しか使いこなせないのよ。各大陸ごとにレベル測定器のシェア度は違うんだけど、アミリア大陸ではカーバイド製品が牛耳ってるのね」
「ええ! じゃあ人手が足りないんじゃ?」
「それで代々私たちの一族は分身スキルを使って各街に配属されてるのよ。」
えっ、分身なの!? じゃあここにいるミランダさんも分身っ!?
「でも、そんな体力使いそうなスキル大丈夫なんですか?」
「毎日なんて不可能だけど週1日ならなんとかなるわ。やってる事は戦闘とかと違って単調で機械的だからね」
「週1日って……他の日は?」
「私たちは7人姉妹なのね。だから1人1日ずつ毎週やってそれを続けるだけ。本当は今日は妹のミーナの日なんだけど、風邪でダウンしちゃってね」
7人姉妹って……凄いな。ミランダさんは上から何番目なんだろ?
「あら? マルロが外に出るなんて珍しい。どうやってつれだしたのかな?」
「……シオンに、興味が湧いた……」
「ふーん。なるほどねえ」
ニヤニヤとミランダさんは俺を見てきた。なんだと言うのか。
「み、ミランダさん。シオンとマルロの事は良いですから、早く測りましょう!」
「ふふふソラ、ピンチね。まぁ良いわ、じゃあ測りましょう。ギルドカード見せてくれれば手続きはいらないわ」
俺とソラはギルドカードを渡した。意外だったのはマルロもギルドカードを持っていた事だ。どうやら研究素材などを集めるのに使うためらしい。
「じゃあソラから順にそれ被って。」
俺たちはヘルメットのようなものを被り、測定を始めた。しばらくすると機械から紙が出てきた。
「どれどれ」
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ソラ
レベル: 4
スキル:永遠の忠誠2
①上昇:自分もしくは想い人の身体能力を少し上昇させる。
②燃える想い:想い人への想いが強ければ強いほど炎の威力が上がる。想いが普通の状態で放った場合ただのファイアと同等の威力。
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シオン
レベル: 1
スキル:支配2
①信用支配★:人から好かれやすい
②部分支配:身体の一部分に力を溜める事ができる。
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マルロ
レベル: 2
スキル:研究3
①調合★:薬品の目分量が自分の思う量と一致する。
②溶解:両手から溶解性のある粘液を放てる。
③実験失敗:薬品と薬品を混ぜ合わせると何故か爆発する。
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「おお! 俺のスキルに攻撃っぽい技が増えた!!」
「まぁ相変わらずレベルは1ですけどね」
「うっせー! でもお前の新しいスキル……」
「……な、何か?」
「またまた想い人って……つまり好きな人だろ? お前いんのか? 記憶ないのに」
「そ、それは……」
「やーね、シオン君。女の子にそんな事聞いちゃダメよ? ソラちゃんはね――」
「み、ミランダさんっ!!」
「はいはい、言いませんよ〜。ふふふ」
ソラが珍しく顔を真っ赤にしてミランダさんに突っかかっている。どうしたんだ?
「それにしてもマルロのスキルは正に研究者って感じだな。」
「……そういうシオンのスキルもやはり興味深い……」
マルロは興味津々といった様子で俺のスキルの紙を見ている。うーん、変わってるな……。
「じゃあ依頼見に行くか」
「シオン君、是非うちの妹や姉にもたくさん会いに来てね〜」
「わかりました!」
俺たちはミランダさんに軽く挨拶をすると、クエストが貼ってある場所まで移動した。
「うーんさて、何のクエストやろうか」
「とりあえずマルロはシオンの実力を見たいそうですから、軽い化物退治が良いでしょうね」
俺がレベル1だからまぁ参加条件が限られてくるしな。とりあえず見てみてもあんまりできそうなクエストはないなぁ……
俺がそんな風に見ていると、マルロが驚きの表情をしていた。
「……コレは……エドガー。なぜ依頼なんて……」
「どうしたマルロ?」
「……いや、これなんて良いんじゃないかと思って……」
マルロが手に取っていたクエストはこうだった。
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・武器作りの為のモンスターの素材回収
依頼主:エドガー
報酬金:余った素材で武器生産など
参加条件:なし
依頼内容:私が武器作りの為に使うモンスターの素材を手に入れて欲しい。
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なるほど、モンスター退治兼、武器作りか。
「良いかもな。ソラはどうだ?」
「ええ、良いと思います」
「……じゃあコレで」
俺たちはクエストを受注し、エドガーさんと会うことにした。ギルドの談話室で待つこと数分でエドガーさんは来た。
「待たせた。俺が依頼人のエドガーだ。鍛冶職人やってる」
エドガーさんは筋骨隆々で白い髪を後ろで束ね、年齢は20代後半くらいであろうか。左腰に白い鞘に納められた剣を携えていた。
「初めまして、俺がシオン、こっちがソラとマルロです」
「へえ、変人マルロがいるとは……珍しいな」
「……貴方こそ……普段は自分で素材を取りに行ってるって聞いてるけど……?」
「まぁちょっと腕を怪我しちまってな。」
そう言って、エドガーさんが見せてきた腕には包帯が巻かれていた。表面上は平気な顔をしているが、かなりの傷に見える。それによく見ると腕の至るところに傷があった。
「こういうわけだ。 悪いが俺の代わりにモンスター倒して素材を集めてきてくれ」
「んで、そのモンスターとは?」
するとエドガーさんは俺の目を見てニィっと笑った。
「地獄の番犬」