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隠れ無双〜チートですか?いいえ実力です〜  作者: ハヤブサ
太陽暦664年:アミリア大陸編
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5話【覚醒】

 ソーニャはビーと向かい合って戦闘態勢をとっていた。


「またあったなぁ! ソーニャ!」

「……私は遭いたくありませんでしたけどね」

「この前来た時は目的が謎のまま追い払っちまったから今回は放っておいたが、なるほどなアレが目的だったか……」

「…………」


 ビーは後ろを振り返り、壁の方へと視線をやる。


「どこであの存在を知った?」

「……古文書」

「古文書だと? へぇ、読めんのか。でもアレを渡すわけにはいかねぇ。借り物だからな」

「アレは私が貰います」

「ふん、1つ手に入れたところでどうしようもないらしいがな。まぁいい、今度こそ逃さねえぞ。発動、毒針!」

「……! 出ましたね。発動! 水の恵み(ウォーター)!」


 ビーがスキルを発動させるとビーの両手の爪は紫色に変化し、硬く鋭く尖っていった。

 爪を構え、迫ってきたビーに対し、ソーニャは両手からホースのように水を噴射した。


「ふん、見飽きてんだよ、その技は! 軌道が丸見えだ!」

「くっ……発動! 水分身!」


 ソーニャの体が2つに分かれ、ビーの右と左にそれぞれ動き出した。


「ちっ、めんどくせえ! 発動、羽音!」

「うっ……発動! 水の恵み(ウォーター)!」


 2方向から4つの水が発射される。羽音のせいで少し方向がずれたそれを、ビーはかわしつつ一体のソーニャへ迫っていった。


「オラッ!当たりか?」

「くっ!」


 ビーがソーニャを引っ掻くとその部分から、じわぁっと紫色の毒が広がった。そしてソーニャの身体は崩れ出し、水へと還ってしまった。


「なんだ……ハズレか……じゃあお前だな!」

「はぁはぁ……っ!」


 ビーはもう1人のソーニャに向かい間を詰めて攻撃し始めた。ソーニャはそれをなんとかかわしていたが、つまづき転んでしまった。


「ぁあっ!」

「ふん、終わりだ!」


 ビーはソーニャを引っ掻いた。その傷口から皮膚が紫色になったが、しばらくすると崩れ水になってしまった。


「なっ!? これも分身!?」

「発動! 水の恵み(ウォーター)!」

「ぐあっ!!」


 上から落ちてきたソーニャのウォーターはビーを直撃し、地面へと叩き伏せた。


「ぜぇはぁ……。ぜ、全力のウォーターです。や、やった……!」


 うつ伏せに倒れたビーを置いてソーニャは台座へと歩みだした。そして台座の石を押そうと思ったその時――


「考えが、甘い……っ」

「えっ? きゃっ!」


 ソーニャは後ろに立っていたビーの腕で首を絞められ、動けなくなってしまった。


「はぁはぁ。危なかった。お前の足の怪我が治ってれば俺はやられていたかもしれない」

「ぐ、やはり気づいていましたか……!」

「当たり前だ。俺がつけた傷だからな、そんなに早く毒が治るわけがない」

「はぁはぁ……も、もう少しだったのに。」

「惜しかったな。だが終わりだ」


「うっ!」


 ビーは爪の先端をソーニャの首筋に刺した。すると首筋の部分は紫色に変化していく。


「ぐ、うう……私はこんなところで死ぬわけにはいかないのに……」

「安心しろ。簡単に殺しはしない。お前は我らの名を傷つけたからな、動けない状態のまま俺の団員のオモチャなってもらい、その身体を汚し尽くしてやる」

「……ぐ、うう。最低です……」

「団員がそれに飽きたら、お前は用済みだ。闇ルートに貴様は売り出し、どこかの変態にでも買い取って貰う。さて、連絡でもするか」



 ビーは懐から無線機のようなものを取り出すと、会話し始めた。






 シオンとソラは尋問していた男の無線機から声が聞こえてきたため、その音を聞いた。


『団員に告ぐ。ターゲットの女は確保した。袋は仕方ないが追いかけなくてもいい、ご苦労だった。戻ってくればこの女を好きなだけ弄べるぞ、以上』



「お、おいマジかよ。あの巨乳女を好き放題出来んのか!? おい、情報はやっただろ? さっさと縄解いてくれよ! アジト戻んねえと!」

「最低の変態ヤローですね。死ねばいいのに」


 ソラが蔑むように男の事を見る。その目に慈悲は無かった。

 それにしてもソーニャが捕まったか……なら……


「……良いだろう解いてやる」

「シオン!?」

「ヘヘッ、わかってんじゃねーか兄ちゃん。アンタも参加するか?」


「いや、遠慮しておくよ」

「そうか、じゃあな!」


 男は縄が解けると、急ぎ足でアジトへと戻っていった。


「シオン……どういうことです?」

「追いかけるぞ、今ならアジトがわかる」

「……あの女を助ける気ですか?」

「まぁな」

「私たちは騙されたんですよ!? 助けられる義理はあっても助ける義理はありません!」


 まぁそうなんだけど……けどなんか俺の中で助けないって選択肢は無いんだよな……これは俺のさがなのかもしれない。


「でもさ、助けなかったらなんか寝覚め悪そうじゃん。ソラはココに残ってくれてもいい。これは俺の自己満だからな。」

「……はーっ……ついて行きますよ……」

「悪いなっ!」




 俺たちはアジトへ戻る男の後を追っていった。しばらくすると洞窟があり、その中に扉があって中はアジトになっていた。アジト前で2人の団員を倒して団員の服を剥ぎ取り、変装した。


 前の奴が入った瞬間にこっそりと入って、そのまま隠れ隠れ進んでいくと、そこには大量の団員がおり、その見つめる先にははりつけにされ、グッタリとしたソーニャとボスであろう人物が立っていた。


「諸君! ご苦労だった。今まで俺らの商品を盗み、コソコソと動き回っていた憎き女はコイツだ!」


「う、ぐ……」


「へっへっへ。」

「早くやらせろー!!」

「いい胸してんなぁ!!」


 周りの団員のテンションがどんどんヒートアップして熱気がすごい事になってる。ちっ、ソーニャまで遠いな。


「磔にしてる鎖は結構伸びるから多少荒々しくしても大丈夫だ。毒が効いてるから抵抗も出来ない。さぁ存分に楽しめ!」


「うおおおおおおおおお!!」


 ビーがその場から去り、奥の部屋に入っていくと、男たちは雄叫びを上げソーニャに向かって迫っていった。


 俺とソラは前の奴の背中を踏み台にしてジャンプし、団員の頭を踏み台にしてソーニャの前へと立ち塞がった。

 そして、迫り来る団員を次々と殴り倒していった。


「ぐあっ!」

「うおっ!」

「ぎえっ!」

「がッ!」

「なんだっ!?」


「おいテメェら! なんで邪魔する!? そいつはテメェだけのもんじゃねぇぞ?」

「…………」

「ちっ喋らねえ気か。やっちまえ!」


 残りの団員が次々と迫ってきたがそれを殴っては倒し、殴っては倒した。


「お、おいあいつら何者だ?」

「攻撃全然当たらねえ……」


 俺たちが敵を倒していると、磔にされたソーニャが話しかけてきた。


「はぁはぁ……あ、あなたたちは、誰、ですか……?」

「……俺だよ」


 俺は顔の布を外し、顔を露わにした。


「シ、シオン、様? な、なぜここ、に……?」

「助けに来た」

「た、助けにって、私はあなたたちを騙したんですよ……!? それを、な、何故?」


 するとソラも布を外した。


「私は反対したんですけどね。寝覚めが悪くなるのが嫌だから助けに来たらしいですよ。」

「そ、ソラ様。そ、そんな理由で……?」


 俺たちもその後も向かってくる敵を倒し続けた。少しずつ敵が減ってきた頃、どっかに行っていたはずのボスらしき男が戻ってきた。


「ほーう?やけにうるせえから戻ってみればそんな理由で助けに来るバカがいるのか」

「ボス!!」

「ボス! あいつです! あいつがこの前俺の人攫いを邪魔した奴です!」

「なるほど……テメェがね……面白い」


 ビーか。戻ってきたやがったな。


「俺の団員を随分と虐めてくれたようだな」

「殴られそうだから殴り返しただけだ」

「ふん、生意気な。発動! 毒針!」


 爪が鋭く紫色になっていく。ソーニャの様子からして、あれが毒か?


「シ、シオン様。あれは、毒、です。」

「わかった。ソラ! 一撃でも食らったらヤバイ! 当たるなよ!?」

「自分の心配をしてくださいっ! 発動、上昇ライズ

「テメェらは下がってろ。手出すなよ、死ぬぞ。」

「はいっ!」


 団員たちは部屋の隅に下がり、ビーが迫ってきた。俺とソラは距離を開けながら2方向に分かれた。


「ふん、無駄な事だ。発動! 羽音!」

「ちっ、アレか」


 俺は服の一部をちぎり、唾をつけ耳へと入れた。ソラもそれを見て真似をした。

 よし、これであまり効かない!

 俺はビーの攻撃を冷静に避け、蹴りを入れた。


「ぐっ! くそ、対策してやがったか」

「すまんが何言ってるかよくわからん。もうちょっと大きな声で話してくれ」

「ふざけやがって!」

「隙だらけですよ」

「なっ!? ぐあっ!」


 ビーの死角をつき、ソラはすかさず後ろからナイフで切りつけた。


「やるじゃん、ソラ」

「えっ? なんですかっ? 聞こえないです」


 これ……味方の声も聞こえなくなるのか……ちょっとデメリットだな。


 ビーはよろけたままソラの方へと突進してきた。


「うおおおお!」

「動きが単調ですよ」


 ソラはそれを避け、再び背中を斬りつけようとした。しかし――


「なっ!?」

「つかまえたぜ」


 切りつけられる直前体を反転させ手でナイフを受け止めた。手からは鮮血が滴り落ちていたが、ビーはソラがナイフを話す前に腕を掴み、後ろへ回り込んで腕で首を縛った。

 まずい……! ソラを人質に取られた!


「うっ、くっ油断しました」

「油断? ただお前の考えが浅かっただけだろ?」

「ソラを放せ!」

「放すわけねえだろ。動くなよ? コイツには今から毒を打つ、致死量にして欲しくなければいう事を聞け」

「くっ……!」


 くそっ……! まずい、言う事を聞くしか無いか?


「シ、シオン、私には構わずに――」

「お前は喋るな」

「いたっ!」

「ソラ!」


 ビーはソラの首筋に爪を立てた。その部分は紫色になっていき、ソラはみるみるうちに顔色が悪くなっていった。


「さて、今は死ぬ量の毒は打っていないが、いつでも殺す事が出来る。それが嫌なら手を挙げこっちへ来い。」

「…………」


 くそっ。どうする事もできない。

 俺は言われた通りにビーの元へと近づくと、ビーは俺の首にも爪を立て、毒を入れてきた。


 ヤベェ。意識が朦朧としてきた。なんだこれ、身体が言う事を聞かねえ。


「お前には致死量の毒を打った。時期に身体中に毒が回り、お前は死ぬ」

「シ、シオン……!!」


 ご、ごめんソラ。お前だけでもなんとか逃げてくれ。ああ、意識が遠ざかっていく。




「シ、シオン……?」

「死んだか。お前たち2人は大事な商品だ。とりあえずついてきてもらう」

「い、嫌。嫌です。シオン? シオン! シオン!!」

「無駄だ、俺の毒は強力だからな」







 ドクン!






「っ!?」


 ビーは反射的に後ずさりをした。確実にもう動かないはずの男の体から何か恐怖を感じたからだ。それは言うなれば長年の勘だった。




「……発動。状態支配(イレギュラー)




 シオンの首筋から全体に広がっていた毒は消え、シオンは立ち上がった。


「馬鹿な。俺の毒を一瞬で……?」

「シ、シオン!! 良かった、生きて……? シオン?」

「…………」

「……何だか知らねえが、普通の状態じゃねえな……さっさと決めさせてもらう。おい! 大人しくしろ。この女がどうなってもいいのか?」

「……発動、重力支配グラビティ

「なっ!?」


 シオンがスキルを発動するとビーとソラの間に斥力のようなものが働き、ビーはその勢いで壁に激突し、ソラはシオンの懐へと収まった。


「シ、シオン?」

「……発動、重力支配グラビティ

「ぐあ!」


 再びスキルを発動させるとビーはシオンの元へと引きつけられ、シオンはその勢いのまま顔面を殴った。


「ぐおおお!」

「発動。火炎支配フレア


 シオンの手のひらから巨大な火の玉が発生した。


「な、なんだ? その力は。いったい貴様は何者なんだ? ま、まさかガ――」


 ドンッという衝撃音と共にビーに火の玉は直撃した。丸焦げになったビーは動かなかった。


「ぼ、ボスがやられた……?」

「あ、ありえねぇ。」

「に、逃げろ!」

「うああああ!」


 残った団員たちもすぐさまアジトから逃げていった。


「発動。状態支配イレギュラー


 シオンはソラとソーニャにそれぞれスキルを発動させ、解毒した。


「シオン、これはいったい……きゃっ!」


 シオンは意識を失い、ソラに倒れこんだ。


「シオン様のその力は……?」

「私もわかりません……出ましょう」

「ええ……」

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