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VII話【いざやばい大陸ドロールへ!】

 


 太陽暦:654年


 いつもの中庭で俺は兄さんと剣の練習をしていた。


「ふっ!」


 俺は両腕をフルに使って剣を振るう。それを兄さんはあっさりと避ける。


「甘いぞロキ。ほらほら」

「うわっ」


 兄さんはそこをすかさずついてくる。俺の剣は兄さんの剣で弾かれてしまった。


「さて、ここまでだな」

「くっそォ!」

「ロキ。お前はもう少し小さい剣から扱った方が良いんじゃないか?」


 兄さんは呆れたようにそう言う。


「うるせー! 俺だってこれくらい出来るぞ!」


 そう、今の俺は兄さんと同じような大剣で剣の練習をしている。が……全然上手くいかない。


「まぁ良いけどね。ほらご飯の時間だ」


 ということで俺らはご飯を食べに食堂に向かう。今日は珍しく父さんが一緒にご飯を食べるようだ。


「あれ。父さん、珍しいね」


 兄さんが父さんにそう言うと、父さんもそうなんだよ、最近暇が出来てね、と笑っていた。


「ああ、そうだ。お前たち、私は今日ドロールに行くんだが、お前たちはどうする? ついてくるか?」


 ドロール? ドロールってあのヤバイ奴らがいっぱいいるとかいうドロール大陸か? うーん、行ってみたいな。


「僕は遠慮しておくよ」


 兄さんはさらりと断った。


「じゃ、俺は行く!」


 俺は勢いよく答えた。すると父さんと母さんはクスクスと笑う。


「わかった。じゃあ食事が済み次第でるぞ」


 食事が終わって軽く身支度をしているとソラが不思議に思ったようで話しかけてきた。


「ロキ。どこかに出かけるのですか?」

「ドロール大陸! 父さんについて行くんだ。ソラも来る? てか来い!」

「なっ、なんで私が……!」


 俺1人でも退屈そうだったのでソラを誘ってみたけれど、あまり乗り気でないようだ。


「至るときも主の身の世話をするのが私たちの役目ですよソラ」

「シーラさん!」


 どこから現れたのか、シーラさんがそんな事をぼそりと呟いた。相変わらず神出鬼没だなこの人は。


「本当は行きたいんでしょう? ソラ?」

「は、はい。そうです」

「なら良いのです」


 いかにソラといえどもメイド長のシーラさんに言われてしまっては何も言い返せない。ただただうなずくのみだ。

 そんなわけでソラも俺たちに同行する事になった。ソラも部屋に行って準備をはじめる。そうすること数十分、そろそろ行くようだ。


「おーいロキ。準備出来たか? もう行くぞ」


 父さんが遠くから声を出している。よし、準備は出来た。ソラもどうやら出来たようだ。というかソラに至っては俺より早く準備が終わっていた。どういうこっちゃ。

 俺は部屋を出て玄関に向かう。すると父さんとダマルティが既に待っていた。ダマルティは父さんの護衛だろう。


「よし、では行くぞ」


 というわけでドロール大陸に行く事になった。他の大陸に行く時は馬車で港まで移動して船を使う。ちなみに俺はこれが初めての海外旅行だ。アヴァロン城から港町までは近いのですぐに着いた。


「大人2人に子供2人だ」

「はいよ」


 船に乗るためのチケットをダマルティが購入している。俺は俺で今から乗る船にわくわくしていた。


「ソラ、わくわくするな!」

「そうですか? ロキは乗った事ないんですか?」

「そうなんだよ! 楽しみだ!」

「結構酔いますよ」

「ふふーん。そんなので脅そうったって無駄だぜ、俺は」

「別に脅してるわけではないですが……」


 そんなわけで、結構船を舐めきった状態で乗船した。しかし俺はすぐに後悔することになる。


「おぇぇ……気持ち悪……」


 出航して30分で2回吐いた。ずーっと地面が揺れているような感覚だ。


「だから言ったじゃないですか」


 ソラが呆れた顔でそう言ってきた。ま、まさか本当にこんなに気持ち悪いとは……。


「ハァハァ……やばいね海……うっぷ」

「にしてもロキは弱いですけどね」

「う、うるせ……」


 周りを見ると父さんもダマルティも全然酔っていない。どうやら船内でこんな感じになっているのは俺だけのようだ。恥ずかしさもあるがそれをはるかに上回る気持ち悪さが俺の頭を支配していた。


「全く、我が息子ながら情けないな」


 父さんが少し離れたところから苦笑しながらそう言うが、俺はそこまで声を飛ばす気力が無かった。


「こ、こなきゃ良かった……おぇぇ……」


 船が順調に海を渡っているように俺の後悔も続く。

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