IV話【リベンジ】
「ええそうです。聞いた事ありませんか?」
支配剣術。その名前は聞いた事がある。たまにお兄ちゃんが口にしているからだ。お兄ちゃんの剣術の稽古はその支配剣術とやらを学んでいると前に聞いた。
「お兄ちゃんが習ってるやつでしょ?」
「その通りです。『支配剣術』とはアヴァロン家の血を継ぐ者が習得すべき剣術の事です」
「じゃあお父さんも出来るってこと?」
「ええ。ついでに私も坊っちゃまの親戚ですから教えられる程度には修めております」
ダマルティて僕の親戚だったのか……。そんな意外な事実をこの時僕は初めて知った。
「それで? 僕は何をすればいいの?」
「坊っちゃま。御自分のスキルはもうご存知ですか?」
「もちろん。僕のスキルは確か……あっ! 『支配』!」
そうだ、この前ロルフに教えてもらった僕のスキルの名前は支配だった!
「そうです。坊っちゃまだけでなくアヴァロンの血を引く者は全員『支配』というスキルを持っています。支配のスキルとはその名の通り、万物を支配すること。身体、炎、強化……いえ、これを極めていけば果ては概念まで支配出来るようになる可能性すら――」
「長いよダマルティ」
「おっと……つまりですね。この支配のスキルと剣術を合わせて戦うのが支配剣術。アヴァロンの戦士が学ぶものです」
「ふーん……でも僕まだ部分支配しか使えないよ?」
まだ、というか初めからチャージは使えたのだけれども。まぁただ力を溜めるってだけの能力だし、そんなに嬉しくない。口から火を噴いたりしてみたいんだけどな。
「……恐ろしい才能です。才あると言われた私がチャージを扱えるようになったのは10の時だと言うのに……」
「え? なんて?」
「いえ、なんでもありません。では、チャージと剣術を組み合わせた練習をしましょう」
「よーし! やるぞ!」
というわけでその後40分に渡って僕は猛特訓して、とりあえずある程度は形に出来るようになった。
練習が終わって、シャワーを浴び部屋に戻ると僕はどうやってソラにリベンジしようかと、考えていた。考えてるうちに眠くなって寝てしまった。そして翌朝、僕はソラを庭へ呼び出した。
「……なんですかロキ、こんな朝早くから」
「リベンジだソラ! ほら木刀持って!」
「……仕方ないですね。さっさと終わらせましょう」
「いくぞ!」
僕は前回と同じように一気に踏み込み切り上げる。
「芸がないですよ、ロキ!」
ソラはそれを同じように避け、僕の後ろに回り込もうとした。
「甘いよっ」
僕はそれを何度も練習した足運びで追いつき、ソラから一定の距離を保つ。
「なっ!?」
「そしてここだっ! 発動! 部分支配!」
僕は木刀に力を溜め、それをそのまま地面に向かって振り下ろした。それにより、あたりは埃が舞う。
「コホッコホッ! ま、周りが見えないですっ!」
僕はあらかじめ決めていたルートに向かって走り、姿勢を低くしてソラを押し倒した。
「きゃっ!?」
少しすると埃が消え、あたりが見えるようになる。僕はソラの顔の隣に両手を置くようにしながら、勝利を確信した。
「僕の勝ちだね」
「……そのようですね」
「やったーー!! ねねっ? どうだった? 上手く出来てた?」
「そ、それより早くどいてください」
ソラは顔を赤らめながらそういった。そういえばそうだ、と思ってすぐにどく。
「それで? どうだった?」
「上手く出来ていましたよ。ロキ、強くなりましたね」
「えっ、強い? 僕強いっ?」
「いや強いのではなくて前より強くなったと……ああ聞いてないですねっもう」
「じゃあソラ! 勝ったし僕の言う事聞いてよ!」
僕がそう言うとソラはそんな事聞いてない、と言いたげな顔をしている。もちろん言ってないのだからそれはそうだ。
「聞いてないですっ!」
「言ってないからね。とりあえずあの山の方に冒険しに行こうよ!」
「ま、またそれですか。危ないですよ」
「だーいじょーぶだって! 僕強いし!」
「わ、私は行きませんよ!」
「ご主人様の命令だ! 行くぞっ!」
「〜〜!! もうっ!」
そんなわけで僕たちは山の方へ向けて歩き出した。