III話【支配剣術】
廊下を教科書を持って歩いているソラを発見したので走って声をかける。
「ソラ〜」
「なんですか、ロキ。私は今からお勉強するんです」
「ちょうど良かった、勉強なら僕のでも一緒だろ。これ手伝ってよ」
僕はロルフに渡された宿題のプリントを見せる。それを見たソラは流石に断ることはせずに、勉強部屋でやることになった。
「むむ……これはなかなか難しいですね」
「そーなんだよ。ロルフの奴急にこんなの宿題にしてさぁ、解けるわけないじゃん」
「最初から諦めるなどいけない子がする事です。まずは考えること、これが重要なのです」
「どーせそれシーラお姉ちゃんとかに言われたセリフだろ〜」
「ちっ、違いますっ」
ソラは顔を真っ赤にして口を膨らましながら反論している。どうやら当たっちゃったみたいだ。その後もソラはうんうんと唸って考えていたが、どうにもわからないようだ。
僕も流石に飽きてきた。そろそろ外で何か遊びたい。ソラをテキトーに言いくるめて外で遊ぼうっと。
「ねーソラ。そろそろ休憩しようよ」
「まだ30分も経ってないですよ。ロキは集中力がないですね」
「実はこの城の裏にさ山の方へ行ける抜け道があるんだよ! 冒険しに行かない?」
「は、話を聞いてないですね。それに山の方には言ってはいけないと言われています。モンスターも出るそうですし」
山にモンスターが出るのは僕も知っている。けど見てみたいんだ、生のモンスターを。もちろん戦ったりはしないつもりだけど、危険な事だからソラのいう事ももっともだ。
「ちぇっ、わかってるよ。でもさ、勉強には適度な休憩も必要だってロルフが言ってたよ」
「うーん、そう言われればそうですが……」
「じゃあさじゃあさ、僕と剣術の稽古しようよ! それなら遊びじゃないし問題ないだろ?」
「……わかりました、良いですよ」
「ほんとっ!? やった!」
まさかソラからオーケーが貰えるとは思ってなかったのでとても嬉しい。ということで早速僕はいつもの城の外庭で稽古する事にした。
「ソラは剣術やった事あるの?」
「主を守るために稽古は受けてます」
「そっか。でも今は僕に手加減しちゃダメだぞ。ちゃんと戦えよ」
「わかりました」
武器は僕もソラも木刀。対面し、武器を構えると爽やかな風が僕らを突き抜けた。
「やぁあああ!」
先に仕掛けたのは僕、一気に踏み込みソラに向かって木刀で斬り上げる。それをソラは表情一つ変えないまま避けると、僕の後ろに回り込み一瞬で僕の腕を締め上げた。
「い、いてててて」
それのせいで僕はバランスを崩してうつ伏せに倒れる。そして首筋にひんやりと木の感覚が襲いかかった。首をとられた、僕の負けだ。
「私の勝ちですね、ロキ」
ソラは僕への拘束を解き、僕は解放された。どうやら彼女は強かったみたいだ。途端に悔しさが込み上げてくる。泣きたくなったが、王子たるもの、むやみに泣いてはいけないのでグッとこらえた。
「ふ、ふふん。け、けっこうやるみたいだねソラ」
「ありがとうございます。」
「次は負けないぞ!」
「次も私が勝ってみせます」
その後部屋へ戻って勉強をし直して、なんとか二人で問題を解き終えた。今日の予定は特にもうないのでご飯とお風呂を終えてベッドへと飛び込んだ。
「ソラ、強かったな……くっそォ!」
勝つどころか木刀すら使わせられなかった。練習はしていたつもりだったけど全然甘かったみたいだ。
結局その日はその事だけを考えて寝た。
次の日、僕は朝早くに起きてこの前剣術の稽古にやった足はこびの復習をした。もちろん昨日の事でやる気が出たのだ。何回もやってスムーズな動きが出来るようになった。
その後シャワーを浴びて朝ごはんを食べた。食べていたらお兄ちゃんが昨日ソラに負けた事を知っていたみたいで、からかわれた。食べ終わって少しすると剣術の稽古だ。
剣術の先生のダマルティはロルフが50歳くらいなのに対して28歳という若さだった。彼はいつも僕に丁寧に剣術を教えてくれるのだ。
「さて坊っちゃま、今日は復習ですよ」
「復習? この前の足の運びならもう何回も練習したよ!」
「ほう……見せてください」
僕は言われた通りに見せる。それを見たダマルティは、ふんふん、と相槌を打ち途中でもう良いですよ、と言ってきた。
「……」
「ど、どう?」
「……素晴らしいですよ坊っちゃま! ちゃんと練習なさったんですねェ」
「まぁね、まぁね!」
やった! 今日の朝練習した甲斐があったぞ! これからもちゃんとやろう。
「じゃあ今日は新しい事を学びましょうか」
「新しいこと?」
「ええ、敵を倒すための技です」
「ワザッ!? もしかして必殺技とか!?」
「んん〜そこまではいきませんが、このアヴァロンに代々伝わる『支配剣術』の1つです」
「支配剣術?」