表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠れ無双〜チートですか?いいえ実力です〜  作者: ハヤブサ
大奴隷市場ドロール大陸編
37/65

37話【記憶の海】

 ジャンクはケロリとした顔で手をレイの頭から離すと、二人の兵士にレイから手を離すように指示した。


 それによりレイは枷こそ付けているものの、自由な姿になる。俺が何が起きたのか全く理解が追いついていないところに、レイが信じられない言葉を突きつけてきた。

 

「ふふふ、どうでした? ご主人様。レイの『演技』は。割と上手くできたと思ったのですけれど」

「ハァハァ……な、何を言ってる……レイ」

「そのままの意味です。すみませんご主人様、騙すような真似をして。けれどこうするしかなかったんです」


 演技だと? どういう事だ。どこからが演技? いやまずこのレイは正気なのか? 操られている可能性は?


 頭の中でぐるぐるといろんな思考が浮かぶが、まずは状況を理解しなければならない。


「ど、どういう事だッ! 説明しろ!」

「どうもこうも、レイの目的は一つ。ご主人様にレイの事を思い出させる、これだけですよ」

「思い出させる……まさか!」

「そうだ、気づいたか? 俺のスキルでてめェの記憶を呼び覚ましてやるってんだよ」


 こいつのスキルが本当なら呼び覚ませるのはトラウマのハズ、それとももっと違うスキルがあるのか?


「ハァハァ……レイとはまだ会って少しだが……俺のレイに関する記憶がトラウマだとは思えない!」

「嬉しい……! ご主人様、レイの事をそこまで……。けど安心してください、この男のスキルはただトラウマを呼び起こすものではありません」

「な、何?」

「俺の弄る心(リマインド)は、正確には『対象者の仕舞われた記憶』を呼び起こすものだ。普通の人間は嫌な事は記憶の奥に仕舞うからな」


 奴の話を聞いて、その事を頭の中で整理する。奴の言っている事が本当だとして、俺に記憶を思い出させるメリットがどこにある? なぜジャンクはレイに協力してるんだ!


「ハァハァ……い、良い話だな……だが、ジャンク。てめェがレイに協力する理由がわかんねェ……!」

「賢しい男だな。この女は契約をしたんだよ。お前の記憶を呼び覚ます代わりに自分とシオンが闇ギルドに加入する、ていう契約をなァ」

「なにっ!? 闇ギルドにっ? レイ本当なのか!?」

「ええ、一緒に堕ちましょう……ご主人様」


 レイはうっとりとした目で俺を見つめ、そう言い放った。信じたくないが、俺はレイに売られてしまったようだ。


「シオン、お前ビーを殺った奴だろ? なら歓迎するぜ。闇ギルドはそうやって人員を確保してんだ」

「そ、そんな事は聞いてねェ! ……ハァハァ。レイ、お前いつからコレを計画してたんだ!」

「計画と呼べるようなものではありませんよ。ご主人様と会ったのは偶然ですし、本来はレイ一人で何十年かけてもなんとかするつもりでした」


 どうやら全てが仕組まれていたわけではないようだ。レイのあの喜びようまで演技だったなら俺は人を信じられなくなる。


「レイがこれを決断したのは、ご主人様があの女にソラという名前をつけたのを聞いた時ですよ」

「なに……ど、どういう意味だ」

「それは自分で気づいてください。とにかくこのままではその女に居場所を気づかれる可能性があるとふんだレイは、最終手段に出る事にしました」

「そ、それがこれだってのか……ハァハァ」

「そうです。奴隷を解放していたレイはその実力を闇ギルドに目をつけられて、勧誘されていました。レイはそれを逆手に取り、ご主人様の隙を窺って闇ギルドを家に呼んだんです」


 俺はさっきまでの事を脳裏に浮かべる。あのタイミングで奴隷商会が来たのは偶然じゃなかったってのか……! だとすると、待て……。


「て、手紙は! あの手紙はなんだっ! ……ゼェ…ハァ」

「アレはご主人様を釣るための餌です。しかし安心してください。書いてある事は全て本心ですよ?」

「お、俺がここに来なかったらどうするつもりだった……!」

「『来ている』じゃないですか」

「くっ……!」


 レイは一点の曇りもない瞳で、俺を見ながらそう言った。そうだ、俺は来てしまった。おそらく騙されると知っていても来ていただろう。


「良いんです、それで。それがレイの愛するご主人、ロキ=アヴァロン様。おせっかいで、素直じゃないけど、困っていたら絶対に助けてくれる」

「よ、よく、わかってんじゃ、ねーの……なら俺が言う事もわかってんだろ……!」

「闇ギルドなんか入らない、でしょ? わかってますよ、だから無理矢理こんな状況にしたんです。記憶を取り戻したらきっとご主人様は私に振り向いてくれます……お話は終わりにしましょう。ジャンクさん、お願いします」

「おう」


 ジャンクは俺の方へと歩み寄ってくると、俺の頭に手を置いた。なんとか兵士に抑えられているこの状態を脱出しようとするが、疲れている体ではそれも叶わない。


「じゃあ、おとなしくしてろよ?」

「き、記憶を取り戻してもおめーの仲間になんかならねェぞ……」

「あの女が人質にいるなら、お前は言う事聞くしかないだろ……? まぁこれもあのレイとかいう女の作戦だけどな。発動、弄る心(リマインド)

「ッ!? がぁっ…………!?」


 瞬間、俺の頭の中に電流が流れたかのような衝撃が走る。それは深く俺の頭を巡っていき、そして全身へと行き渡る。




 ――沈む……俺の心が


 溢れ出る、俺の記憶が……


 記憶の海へと身体が堕ちていく――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ