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30話【再会のソーニャとあの日の真実】

 

 あれは確かに……ソーニャ……だよな? けどなんでソーニャが未来に?

 俺の頭が混乱モードに入る。


「あ、ソーニャとシオンて知り合いだったの?」


 ヴァレイアが驚いたように言った。


「シオン様……あなたが未来にくるなんて……」

「こんな形で再び会うことになるなんてな……。どういう事だソーニャ? なんでお前が未来に?」

「それは後でお話いたします。こちらへどうぞ、ヴァレイアも。」

「あぁ、うん」


 ソーニャはそんな俺をよそに冷静に案内する。なんだ……? この2人知り合いなのか?


 合図と共に群がっていたロボットが一瞬で壁側にはけ、道を作ってくれた。その道が指し示すまま中に入っていくと広い空間に出る。


 俺は、あんな映像を見ても勘違いしていた。

 悲惨な世界であっても、権力が1番強いパンシア大陸は豊かな生活を送っているのだろう、と。


 現実は、まるで違っていた。根本的にはヴァレイアのいたところと変わらない。


 確かに広いドーム状の建物の中に、宿屋や武器屋、防具屋など、施設は多数ある。だが、人々の目は皆虚ろで、生気がない。


「シオン様はこの未来、どう思われますか?」


 歩きながらソーニャはそんな質問をしてきた。俺は答えようとして、とっさにヴァレイアの方を見たが、彼女の顔は僕に遠慮しなくて良いよ、と言ってくれていた。だから俺は思ったままを言うことにした。


「酷い有り様だ。同じ世界だとは思えん」

「そう、ですよね……だからこそ、変えなくちゃ……」


 ソーニャは小さな声でそう呟いた。

 ソーニャが歩くまま、ついて行くと、今度は最初のドームの扉で見たあのでっぱった指紋を認識するとかいう機械と、分厚い鉄の扉がある場所に着いた。


「ここは……?」

「ここにはこの世界で残っている本を全て集めてあります。その貴重さから普通は入れません。私は入れますが」

「僕も入れるよ」


 ヴァレイアも……?

  するとソーニャは自分の手のひらをその機械の上に乗せた。


『指紋認識。ソーニャ様と判断。扉を解錠します』


 ゴゴゴ


 機械音の後に厚い扉が横にスライドしていく。徐々に見えてくる部屋の中には確かに大量の本があるようだ。


「ではシオン様、こちらへ」


 中へ入ると、扉は自動で閉まった。

 周りを見渡してみると、そこら中に本、本、本。キッチリと区画分けされてるようで、埃を被った本もいっぱいある。


「こっちです」

「お、おい」


 ソーニャがズンズンと奥へ進んでいく。

 奥の方へと進んでいくと、ソーニャがピタリと止まった。そこの区画分けされた名前は『記録』だった。


「シオン様はこの世界がこうなった理由はご存知ですか?」

「え? あ、ああ……確か大破滅カタストロフィとかいう化け物が現れてめちゃめちゃにしたんだろ?」

「見たんですね……あの映像を。ならば話は早いです。先ほどの質問に答えましょう。私が未来ここにいる理由、それは私が未来ここで生まれた者だからです」


 ここで……? ここってこの未来の事だよな……ってことはつまり……


「ソーニャは俺たちの時代に生きてる人物じゃないってことか?」

「そういう事です」

「……けどなんで……俺たちの時代へ?」


 その言葉を聞いたソーニャは、本を1つ取り出してはその中の文章を読み上げていった。


 ――空は曇り、大地は枯れ、水は無い。こんな世界で生き残る事は不可能だ。もしも生まれ変われるなら、次は普通に生活できる世界である事を切に願う――


 ――親が死んだ、妹が死んだ、親友が死んだ。なんて事は無い、単純に食べ物が足りないのだ。そして俺も、もう生きてく気力がない――


 ――食べ物を巡り殺し合いが起きた。いっぱい死んだ。なぜ世界が壊れてしまったんだろう。何が駄目だったんだろう。今となってはもうわからない――




「これは……太陽暦667年。すなわち『世界の終わりの日』から1年経った世界で書かれた人々の日記を集めたもものです。666年当初は食べ物も残っていたようですが、しばらくして低階級の者への食糧源は無くなったようです……」


 低階級者……要は王様とか貴族じゃない人たちの事か……? 限られた資源を巡って仲間同士でも争いが起きたのか。



「私がシオン様のいる時代に行った理由は単純です……! この絶望の世界を変えるためっ! 過去に戻って大破滅カタストロフィを防ぐ! これこそが私の目的ですっ!」



 世界を変える……そういえば誰かがそんな事を……あれは……そうだギルガメッシュ!


 ――世界を変えろ。


 奴はそう言っていた。まさかあれはこういう意味で……?


「……って事はあの時、ソーニャが蜂の針(ポイズン)のアジトに侵入したのはそれ関係なのか?」


 するとソーニャは少し考えるような仕草をした後、軽く頷き、話し始めた。


「もはや隠す必要はありませんね。実はあの時、あのアジトには時の石板があったんです」

「時の石板がっ!?」


 ま、全く知らなかった……あそこに時の石板があったって事は俺たちがその時点でどっかにタイムスリップした可能性もあったって事だよな……


「ええ……その情報を得た私はアジトに侵入したんです。結果的にはシオン様に助けられたのですが……」


 そうソーニャが話したところで、今まで黙っていたヴァレイアが急に話に入ってきた。

 

「あぁ! ソーニャが話してた命と貞操の恩人ってシオンだったの? そうなんだぁ……へぇ……」


 命と貞操て……まぁ確かにそんな感じだったけど……


「ソーニャはヴァレイアにその事話してたのか」

「話してたなんてもんじゃないよ! ソーニャったら帰ってくるなりその話ばっかり! 名前は言わなかったから今やっと知ったけどさ!」

「こ、こらヴァレイア! そんな事は良いんですよっ!! 今関係ないでしょっ!」


 ソーニャが真っ赤になりながら反論している。これは本当っぽいな……へぇ……ソーニャがねぇ……


「ち、違うんですよシオン様? わ、私はただ助けられた事を忘れないようにと、ですね……!」

「その割にはもう1人の女の子の話はしなかったじゃん。しかもその子とシオンの関係めっちゃ気にしてたじゃん」

「ちょ、ちょっとヴァレイア! うるさいっ! 違うんですよシオン様! うぅーーあぁーっ! もうっ……!!」


 ソーニャが頭に手を抱えながらジャンプしている。そのせいで豊かな胸が揺れる揺れる。

 うーん、眼福だねこれは。


「とっ、とにかく私はそのためにアジトに侵入したんですっ! 結果的には石板は手に入りませんでしたが……」


 話を頑張って戻そうとするソーニャ。再びからかってやろうかと思ったけど話が進まなそうなのでやめた。


「……そうか。だからお前はあの時……俺に蜂の針(ポイズン)のアジトを聞かれて何も言わなかったのか……」

「……そ、その通りです。私はあの時あなた達2人を巻き込むわけにはいかないと思いました。私1人で解決しなくては、と……結局今は関係してしまいましたが……」

「まぁその事は気にしてないよ。それで、俺をここに連れてきたのはその説明のためか?」


 するとソーニャは首を振った。


「今のは私からシオン様に対する挨拶のようなものです。時の石板の話は普通の人にはあまり知られていませんからここで話しただけです」


 普通の人には知られてないのか……まぁ俺らの時代でもそうだったし、そこはそういうもんなのかな?


「なるほど、それで?」

「シオン様も時の石板をお探しですよね。私は時の石板の残されている場所を知っています」

「本当かっ!? どこにっ!?」

「ここから出て少し歩いたところにルカナ国跡地と呼ばれているところがあります。そこに石板はあります」


 おおー! 近いところにあるのか!


「ルカナ国跡地か……よし、じゃあ行こう!」


 俺が張り切ってそう言うとソーニャは苦い顔をした。


「しかし1つ問題が……」

「なんだ?」

「今そこにモンスターとは別のある化け物が住み着いています。それを倒さなくてはなりません……! それでも行きますか?」


 そう言うとソーニャは俺を見つめてきた。

 行っては欲しいけど危険な目にはあわせたくないって感じか?


「なーんだそれだけかよ。構えて損したぜ。甘いぜソーニャ! 化け物退治なんざいつもの事だ! 行くに決まってる!」

「……シオン様!」

「僕も付いてくよ!」

「ヴァレイア! けどお前戦えんのか?」


 するとヴァレイアは腕まくりして力こぶを作った。あんまり強そうに見えない。


「任せといて! これでもそこそこ出来るから!」

「心配だが……まぁなら良いか! じゃあさっさと行こうぜ!」


 こうして俺たちはルカナ国跡地を目指し、一致団結したのだった。


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