26話【神の啓示】
「アポロンは隠れてろ!」
「くえっ!」
嫌な汗だ……。何をされてるわけでも無いのに汗が出てくる……。これがギルガメッシュの迫力か。
「……こないのか? 発動、神の啓示」
俺は奴の発動と共にすぐに身構えた。だが何か起こる気配はない。
強化系スキルか? だとしたら肉弾戦はキツイな……。
ギルガメッシュは能力を発動した後、俺たち全員を一人一人指差した。
なんだ……? 指からなんか出るのかと思ったけど出ねーし。
「そこの3人……今から攻撃するが、準備は良いか?」
そう言うと奴は俺とマルロとソラに目線を移した。
「なっ!?」
「……なんで私たち……?」
「戦場では弱い奴から叩かれる。だからお前らから、だ。」
へ、へぇー。そういうこと言うんだこの全身黒まみれの野郎。
まぁ確かに俺たちのレベルは高いとは言えないけど……そうハッキリ言われると流石にムカつくぜ。
「ここまで言われて黙っているわけにはいきません。シオン、やってやりましょう」
「……弱いって言う人の方が弱い……!」
「よーし、やってやるよ! あとマルロは子供みたいな事言わないで」
俺が大剣を構え直し、ギルガメッシュの方へと矛先を向けると、奴は人差し指を折り、俺を挑発していた。
「かかってこい。貴様らの攻撃は四撃目で終わる」
「舐めやがって。発動! 地獄の裁き!」
「発動、燃える想い!」
「……発動。実験失敗……!」
マルロが試験管を2つ取り出し、それをギルガメッシュの目の前に投げた。
「一撃目……」
すると奴は避けるのではなく、試験管に接近した。そして2つの試験管が接触する前に1つ1つを手刀で叩き割った。
そして奴はその勢いのまま俺たちの元へと走り込んできた。
だが奴の行く手を遮るようにソラが巨大な炎を放り投げた。
「……二撃目。発動、神速」
今……何かスキルを発動した……?
だが、ソラの炎に隠れてギルガメッシュが何を発動したのかはわからなかったが、奴が避けられたようには見えなかった。炎は確実に奴を直撃したはずだ!
そんでもって俺のニヴルヘイムで追撃する!
俺は炎が直撃した場所に向け走り始めた。
炎の直撃により起きた埃が晴れ、辺りの様子が見えるようになってくる。
俺はそれを確認すると、ギルガメッシュの姿を探した。しかし想定外の事が起きた。
いるはずの場所にギルガメッシュがいない。
なんだ!? 奴はどこへ!? 全く移動したようには見えなかった……!
まさか瞬間移動の類じゃ……!?
俺がそう考えソラたちのいる方へと振り返ると、既にソラたちは地面に伏し、攻撃された痕が残っていた。
「ソラッ! マルロッ!」
駄目だ反応がない、気絶してるみたいだ。
いったい何が!? あの一瞬で俺の後ろに回り込みソラたちを攻撃だと……!?
くそっ! 考えても仕方ねえ! とにかく奴はどこへ!?
俺は集中して気配を探った。この場から消えたわけじゃないはずだ、奴はどこかにいるはずだ。
「後ろにいるけどな」
「っ!?」
背後からの奴の声に俺は咄嗟に大剣でなぎ払いする。
俺が大剣を振るうと共にそこにいたはずの奴を見ようとしたが、奴は既にそこにはいなかった。
「三撃目」
ボソッと奴の囁く声が俺の耳へと届く。
そう、奴は今俺の背後にいる。
何故だ……? 何故俺の動きをここまで先回り出来る……? やはり瞬間移動?
俺がそう考える中、奴が無防備な俺の背中に攻撃しようとしてるのが気配でわかる。くそっ、避けきれねぇ!
だが俺の予想に反して奴の攻撃は俺に届かなかった。エリアが奇襲を仕掛けたのだ。
俺はその一瞬をついて後ろを振り返ってギルガメッシュの姿を確認する。
既にギルガメッシュは俺への攻撃態勢に入っていた。今からなら防御しか出来ないはず!
だが、奴は、ギルガメッシュは防御するわけでもましては避けるわけでもなかった。
そう、奴の取った選択とは、攻撃。
「これで、四撃目だな、女」
「ぐぅっ!?」
まるで、そこに来るのがわかっていたかのように、ギルガメッシュは俺への攻撃ではなく、迫り来るエリアの剣を拳で叩き落す。
さらに奴は蹴りを腹に入れると、よろけたエリアの腕を掴み俺の方へと放り投げる。
俺は咄嗟の事に反応出来ず、放り投げられたエリアを受け止め、共に壁に激突した。
「がはっ!」
バラバラと壁から石が崩れる。
崩れる石を見ながら俺は今起きた事に驚愕する。たった一瞬、あの一瞬で俺たちを制圧だと……!?
……何も出来ない……!
倒れた俺たちには興味が無いのか、ギルガメッシュはマリーの方へと体を向き直していた。
いつもは余裕をかましているマリーも流石に冷や汗を流している。
そんなマリーを見抜くかのようにギルガメッシュは彼女を挑発する。
「クク、さて。次はお前か。まぁ今のを見て攻撃する気があるなら来るがいい」
「ふ、ふふふ……凄い……! これがギルガメッシュ。やはりこの人の実力さえあれば世界は手に入る……!」
「ったく。話を聞かない女だな。いいから来いよ」
「もちろんっ! 発動っ、美しい薔薇と棘!」
能力の発動と共にマリーの後ろに巨大な薔薇が出現する。そこから伸びる無数のツルが四方八方からギルガメッシュを攻め立てる。
「物体具現系のスキルか。なかなか強力だが……」
ギルガメッシュはそのツルを必要最低限の動きだけで避けている。
バカな……。あの無数の攻撃を弾くわけでもなく全て避けるだと……!?
俺が驚く以上にマリーは驚きを隠せないようだった。マリーは攻撃を続けながら奴に質問する。
「さっきから思ってたけどっ! それ、どういう理屈かなっ!?」
「どうとは?」
ギルガメッシュはなんともないように攻撃をかわしながら質問をきき返す、
「その避ける動作っ、反射で避けてるわけじ
ゃなさそうだね。反射ではこれだけの同時攻撃を避けられるはずないっ。普通は一方を弾き、一方を避ける。けどあなたは、それをどちらも避けてるっ」
「ふふ、信じられないか?」
「正直言って意味わかんないよっ!」
マリーの怒涛の攻めもむなしく全てかわされ、そして遂にギルガメッシュがツルの嵐をくぐり抜け、マリーの元へと辿り着いた。
そのまま奴はマリーの腹目掛けて蹴りを入れた。
「くぅっ!」
マリーは少し後ずさる。そのまま再びツルの攻撃を開始するが、やはり当たらない。
……ちっ、なんて奴だ。俺たち相手に1つもダメージを追っていない。
俺は剣を地面に突き刺してそれを支えに立ち上がり、エリアに手を差し伸べ、声をかけた。
「エリア、立てるか?」
「あ、当たり前だっ!」
エリアはそーっと俺の手を握ると、ピクンと反応した後目を瞑りながら立ち上がった。
なんだこいつ、俺の手は清潔だぞ。
「エリア、あの異常な回避能力、どう思う?」
「……何かのスキルなのは確実だ……。おそらく自動回避系のスキルだろうな」
「自動回避か……」
でもなんか引っかかる。本当に自動回避なんだろうか……
「とにかくこのままじゃ勝てない。自動回避だとして、定石の戦い方はあるのか?」
「そうだな、基本的に自動回避などのオートスキル系はそれを出来なくする状況を作り出すしかない」
「出来なくする状況?」
「ああ、例えば落とし穴に落としてそこを上から防ぐように攻撃、などだ。つまり避けるという選択肢が存在しない方向へ持っていく事」
なるほど……避けようがない状況に持っていくのか……。確かにそれなら自動回避だろうと関係ないな。
「って事は絶対に身体が曲がらない方向を予測してそこを攻撃するのも有効だよな?」
「そうだな」
「……よし、とりあえずやってみるか。行こうエリア!」
「発動、疾風の舞!」
俺たちはマリーが戦う場所へと走る。見ると、避けるだけだったギルガメッシュが手刀で、襲いかかってくるツルを切り裂いていた。
「起き上がるか……どうやら雑魚ではないようだな」
「シオン、エリア! 私のツルに合わせてっ!」
「わかった!」
「ちっ、仕方ない」
俺とエリアは二手に分かれると、両サイドからの攻撃を開始した。
まずエリアが疾風の舞による高速の連続攻撃をギルガメッシュに浴びせる。
驚いた事にギルガメッシュはエリアの攻撃を全て避け、そしてその間を狙ってくるマリーによるツルの攻撃をも避けていた。
絶対に回避不能であろう攻撃は手刀で軌道をずらし避けている。
攻撃しているエリアとマリーは驚愕の表情を見せていた。
「バカな……疾風の舞でも捉えられんだと!?」
「ふーっ、ふーっ。ち、ちょっと手加減してくれないっ?」
「無理な相談だな」
俺は大剣を叩き込むタイミングを見つけようとギルガメッシュをよく観察するが、隙がない。
くそっ……とんだバケモンだな……
いったいどうすれば……
その時だった。
ボンッ!!
「っ!?」
なんだ!? 爆発!?
爆発音がしてロズモンドがいた場所が爆発した。煙が上がるとともに俺は何が起きたのかよく観察する。
どうやらマルロが最初に放ったロフアの割れた試験管の中身が床を流れ一時的にあそこで接触したらしい。そのため爆発したのだ。
だが、そんな事がどうでもよくなるほど驚きの事実が起きていた。
「ぐ……」
ギルガメッシュが爆発によりよろめき、そこをエリアの剣により斬られたのだ。
その後エリアとマリーはすぐさま追撃を始めるが、ギルガメッシュは再び回避に入り、出だしに戻ってしまう。
おかしい……何故奴はあの爆発をくらったんだ……?
今までの攻撃に比べ唐突ではあったが、今までのギルガメッシュの回避を考えるに余裕で避けれるはず……自動回避ならなおさらだ。
俺は今までの奴との戦闘を整理する事にした。
最初……そう最初からおかしいとは思ってた。あいつは俺たちの攻撃が四撃目で終わる事を予測していた。
他にも俺たちの攻撃を全て読んだような必要最低限の動き。そして攻撃。
……それに、最初のスキル発動からの不自然な指差し。あれはスキルに関係があると見るべきだ。
最後にマルロの残したロフアの爆発だけ避けられなかったこと……
ここから考えられる答えは……かなり絶望的なものだが……おそらくそうなんだろう。
俺はまとまった考えを確かめるため、ギルガメッシュに言い、その反応を見ることにした。
「エリア、マリー! 一旦こっちに戻ってきてくれ! そのままじゃ勝てない! 奴のスキルがわかった!」
「なんだとっ?」
「ほんとっ!?」
「……ほう」
それを聞いたエリアとマリーは一時的に攻撃をやめ、俺の元へと駆けつけてきた。
2人が集まった時点で、ギルガメッシュは俺に問いかける。
「俺のスキルがわかっただと? ならば言ってみろ」
「良いぜ、言ってやるよ。ギルガメッシュ。あんたのスキル、それは【相手の思考を読み取る能力】。そうだろ?」
「……!」
ギルガメッシュが思わず口を紡ぐ。
どうやらあたりのようだな。
反撃と行こうか。




