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隠れ無双〜チートですか?いいえ実力です〜  作者: ハヤブサ
太陽暦664年:アミリア大陸編
23/65

23話【ドキドキ温泉クライミング②】

 今女風呂のではソラ、マルロ、エリアがなんとも言えない沈黙に包まれながら身体を洗っていた。

 そんな沈黙を破ったのは意外にもマルロであった。


「……エリア、貴女はなぜ闇ギルドを追っているの……?」


 エリアはその問いかけを聞くと身体を洗う手を止め、マルロの方へとむきなおり、マルロの目を真剣に見ると


 ――それは、言えんな


 と、それだけを静かに、しかし重々しく言い放った。それによりもともと重々しかった空気がさらに暗いものとなってしまった。


 だが、マルロはその答えに対して不満を持っていないようで、何を思ったのかテクテクとエリアの方へと歩いて行った。


「なんだ……?」

「……こんなに筋肉質なのに……ここだけは女を主張してるなんて……ズルい。」

「なっ? おいっ! ひゃっ!」


 マルロはエリアの目の前まで辿り着くと、ジッと彼女の胸を見つめた。そしてあろう事か、風呂場で警戒が緩んでいたエリアの胸を不意に揉んだのだ。


「……凄い弾力、張りの良さ。……これをシオンの前でぶら下げているのは危険……。」

「うっ、はぁっう。ちょっ、やめっ。ソ、ソラ止めさせ……」

「ふふ、マルロは興味を持つとしつこいですよ。まぁ私の胸に興味を持たなかった事は少々ムカつきますが……」


 マルロは一つ一つの感触を確かめるように、優しく、時に激しく、エリアの胸を揉みしだいた。


「うぅ……ぁあぁ。やめっ、やめろ……!」

「……女の私も興奮してきた……!」

「じ、実は私もです。」

「やめっ、止めろぉ!!」


 エリアの怒声が風呂全体に響き渡った。それを聞いてマルロはついに彼女の身体から名残惜しそうに指を離した。


「ふーっ、ふーっ!」

「……ちょっとやり過ぎた……反省」

「反省は良い事ですよ。」

「それ以前の問題だっ!」


 エリアは怒ってしまったが、場の雰囲気はさっきよりは和み始めた。

 その後3人は身体を洗い終え、浴槽へと浸かりはじめた。


「エリア……貴女はシオンの事、どう思ってるんですか……?」

「ど、どうって……」


 エリアはモジモジとし始めた。それに対してソラはジト目で彼女の事を探りまくっている。


「さぁ! どうなんですか?」

「う……」

「さぁさぁ!」

「うぅ……」


 その時、天井の方からシオンの声が響き渡った。


「あー仕方ねーなー!!」


「!?」


 ♦︎


 数分前シオンは壁をよじ登るアポロンを追いかけ、これまたよじ登っていた。


「くぇええ♪」

「お、おいっ! それ以上いくと女風呂の方に落ちちゃうかもしれないぞ! 戻ってこい、アポロン!」

「くえ……?」


 俺の必死な形相を見てアポロンは何かを感じたのか動きを止め、こっちを向いた。

 良いぞ! そのままこっちに降りてこい!


「くえっ♪」


 と思ったのもつかの間、アポロンは動き出し天井と壁の隙間の部分に到達してしまった。


「ああ! 馬鹿っ! 危ないってのに!」

「くえっくえっ!」


 あろう事かアポロンは壁の隙間に立ち始めた。羽を広げてはいるがグラグラと危なかっしい。

 やべぇマジでこのままだとあいつコケるぞ。俺の方へ落ちればまだキャッチできるが、女風呂の方に落ちたら……


 女風呂、女風呂か……。いやいや待て待て、何を考えているんだ俺は。今はアポロンの事を考えろ、あいつが落ちたらどうすんだ。いやでも女風呂か……。エリア、胸デカかったなぁ……。あれ? 待てよ……もしかして今、俺って大義名分のもとで女風呂覗けるんじゃ……?


「あー仕方ねーなー! マジで仕方ねー! アポロンが落ちたら危ないから上までのぼんないといけないんだよなー! これは少しくらい女風呂の方が見えちゃっても仕方ねーよなー。本当仕方ねーよー。」


 俺の棒読みなセリフが風呂場へと響く。


「……よし! 今助けるぞ、アポロン!」

「くえっ?」


 俺は物凄いスピードで壁をよじ登り、そしてアポロンを片手で速攻で懐に収めると、女風呂の方を覗こうとした。

 そこで見えたのは――


「桶っ!?」


 コォーンッという小気味の良い音を立てながら俺の頭に女風呂から飛んできた桶が直撃し、俺はそのまま落下した。

 落下する直前、エリアの澄み渡る声が聞こえた。


「仕方ないわけないだろう!」


 ですよねー。

 そう思いながら俺は落下し、アポロンはちゃっかり羽を上手く使って無傷で着地していた。


 用意された浴衣を着て、風呂を出るとゴミを見るような目をしたソラとエリアがいた。


「最低ですね、やはり変態ゴミ野郎です。」

「いや、あれはアポロンを助けようとしてだな?」

「言い訳無用だ、話しかけるな、ゴミ野郎。」

「え、ええぇ……」


 それだけ言うとエリアとソラはそっぽを向いて部屋の方へスタスタと歩いて行ってしまった。

 しかしマルロは何故か動かず、俺のことを見ている。


「マ、マルロは俺の事を許してくれるのか?」

「……私もシオンの裸バッチリ見たからおあいこ様……」

「あの一瞬で見たのかよ……」

「くえ……」


 俺とアポロンはマルロに軽く引きつつ部屋へと戻った。

 暇だったのでアポロンと軽くコミニュケーションを取っていたがそれも飽き、ゴロゴロしているとノックがなった。


「ゴミ野郎、入っていいですか?」

「ソラか。良いぞ、ゴミ野郎は余計だが。」


 ガチャリと扉が開くとそこにはソラの他にエリアとマルロもいた。

 さっきは一瞬だったためあまり意識しなかったが、今3人は浴衣である。特に露出してるわけでもないのに、何故か色っぽい。


「さて、では明日出発する裁きの大穴についての予定を考えましょう。」

「そもそも裁きの大穴ってのはなんなんだ? なんでそんな巨大な穴が大陸に空いてる?」

「……それは諸説あるけど、一般的には遠い昔の巨大な隕石の落下と言われている……その後そこに住んだ動物やモンスターにより多くの枝分かれした穴が出来たと……」


 隕石か……そこまでいくとクレーター的な感じなのかな。


「落ちた隕石とかは見つかってるんですか?」

「……いや、見つかっていない。そもそも未だに底がどこなのかわかっていない。」

「底がわからないって……確か王様が時の石板は最深部にあるとか言ってなかったか?」

「言ってましたね。という事は未だに誰も到達してない最深部を私たちは発見しないといけないって事ですか……ー


 おいおい、そんなの無理だろ。その大穴ってのがどんだけ昔に出来たのか知らねーけど今の今まで発見されてない最深部を俺たちが、1発で発見するなんて。


「なにやら無理だと考えているようだな」


 エリアが俺の心を見透かしたように話しかけてくる。


「いや普通に考えて無理じゃね?」

「まぁ確かに確率は高いとは言えないが。だがあの大穴は専門家などによる発掘があまりされてないのだ。」

「なんでだよ? 歴史ある穴なんだろ?」

「単純な話だ、あそこを調査するにはかなり莫大な費用がかかるが、それに見合ったリターンが得られる可能性がほとんどないからだ。」

「なるほどね……ロマンがないな。」

「そう、だからロマンを求める冒険者などの輩が調査に行くのだ。幾つにも穴が分かれる迷宮具合とモンスターの多さには一般市民では太刀打ち出来んからな。」

「ということはつまり私たちにも可能性はあるという事ですね!」

「そういう事だな」


 ふーん。まぁまんざら無理な話でもないって事か。


「わかった、じゃあ明日の計画としては、俺たちは石板を目当てに、エリアは闇ギルドを目当てに共に調査するって事で良いんだよな?」

「それで構わん。」

「よし! じゃあとりあえず今日はこれでおしまい! 寝よう!」

「そうですね、では私たちも部屋に戻りましょう。」

「シオン、私たちの部屋に入ってきたりなどしたら……わかっているな?」

「もう風呂で懲りたよ! 流石に人の布団に潜り込むレベルの変態ではないから安心しろ!」

「うっ……!」

「……どうしたの、ソラ……?」

「な、なんでもないです! なんでも!」

「?」


 ソラが急にあたふたし始め、目も止まらぬ速さで部屋から出て行った。その後残りの2人も出て行ったので、俺は布団を敷いて寝る準備を整えた。


「さーて、寝るぞアポロン。」

「zzz」

「いやもう寝てるんかーい。」


 そんなこんなで電気を消し、俺は眠りについた。







 ここは、皆が寝静まった後のミラボレア城の倉庫の中。今その倉庫の中には先の戦いで残ったロズモンドの血斬りの剣がしまってある。

 王の命令でその剣を盗まれないように、見張り番が1人ずつ交代で守っていた。


「ふーっ。寝みぃなぁ。」


 カタカタ


「ん? なんの音だ?」


 カタカタカタ


「そ、倉庫の中から聞こえるぞ……この中にはあの剣しかないはずだけど……」


 見張り番は、あまり幽霊や心霊などを信じる方ではなかった。そのため、真っ先に思いついたのはその様な存在ではなく、盗人などの存在である。


「念のため、開けてみるか。つーかなんだっけこのボタン付きの道具? オンになってんな、オフにしとこう。」


 見張り番は倉庫にかけられた鍵と、それとセットでくっついているロズモンドの力を無効化する道具をとると、何も考えずオンになっていたボタンをオフにした。


 オフにしてしまった。


「な、なんだこれ……?」


 倉庫の中にあったのは剣は既に半分、肉の塊のようなものに変化しており、ドクンドクンと何かを脈打っていた。


 そして、道具により進行が抑えられていた再生が急速に行われると、そこには肉塊ではなく、1人の男が現れた。


「ろ、ろろろロズモンド……!」

「ふぅ。助かったよ君。ボタンオフにしてくれなきゃマジで僕死んでたかも。」

「な、なんで? き、貴様は死んだんじゃ?」

「ああ、血斬りの方に保険をかけといたからね。まぁいいや、ここにいて見つかったら厄介だし、君死んで?」

「へっ……!?」


 ボキ、という音ともに見張り番の首は折られ、息絶えた。

 ロズモンドは見張り番の服と武器を奪うとそれを着て、そこから去る事にした。


「さて、シオンと再戦といきたいところだけど……このままじゃまた負けるかな。僕の武器を取り返しにいくか……」


 そしてロズモンドは闇へと消えた。

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