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隠れ無双〜チートですか?いいえ実力です〜  作者: ハヤブサ
太陽暦664年:アミリア大陸編
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21話【時の石板】

 コロシアムの試合が終わり、その場に倒れこんでしまった俺をエリアが救護室に運び込んでくれて、今俺はベッドで寝ている。

 周りにはエリア、ソラ、マルロにアポロンが様子を見にきてくれている。


「しかしよく勝てましたよね、あんな不死身男に。」

「……私はヒヤヒヤしていた。」


 ソラとマルロがそんな事を言ってきた。うーん、確かに倒せたのが不思議なレベルだった。


「俺、一回死んだと思ったしな。」

「あの時は本当に死んだと思ったぞ。かと思いきや復活してアレだ。シオン、あの力はなんだ?」


 エリアが興味を持って聞いてきた。以前の俺なら全くわからない、と言っているとこだけど、今の俺は少し思い当たる節がある。


「実はだな、あの死にそうになってた時昔の記憶を少し思い出したんだ。」

「本当ですかっ!? シオン!」

「昔の記憶……だと?」


 ああそうか、エリアはその事を知らないのか。

 俺はかいつまんでエリアに俺の経緯を話した。そのついでに俺が見た過去の話もすると、自分が登場してこない事にソラは不満を持ったようで、すこし不機嫌になってしまった。


「それで? 貴様の過去の話とあの力に何の関係があるというんだ?」

「俺があの力を発揮する時はその謎の男の声を聞くことが多い。だから俺の力の謎にはそいつが関わってると思うんだよ。」

「要は何もわかってないという事だな。」


 うーん、確かにその通りなんだよな。結局あの男が何者なのかもわからなかったし、たぶん死んでるっぽいしなぁ。


「まぁ俺の力については今はそこまで意識してない。今はあの王様について考えるべきだ。」

「そうか、そうだったな。貴様の試合の応援をしてるうちに忘れていた。」

「いや、だからあれ応援じゃないって」

「う、うるさいっ! 助けに来てやったのだから感謝しろっ!」

「ああ。そういえばちゃんとしたお礼をしてなかったな。ありがとうエリア、ホント助かったぜ。」

「……う、うむ……」


 俺がエリアの目をしっかりと見て感謝の意を伝えると彼女は顔を赤くしてしまった。本当にこういうの慣れてないんだな。


「……あのぉ……? ちょっと良いでしょうか?」


 そんなホンワカした雰囲気の中、一見いつもと同じクールを装っているが明らかに不機嫌な声でこっちに睨みをきかせてきている者がいた。ソラだ。どうやらさっきよりさらに不機嫌になったらしい。

 やべぇ、なんであんな怒ってんの? マルロもなんかちょっと怒ってそうだし。


「な、なんだ? どうしたんだよ?」


「さっきから、いえコロシアムの時から違和感を感じていましたが、なぜその女とシオンは仲が良さそうなのですか? 私たちとその女の接点はアルキードで見たくらいのものですよね? だとしたらシオンとその女がそんな仲になるはずがありません。おかしくないですか? いえ絶対おかしいです。もしかしてアルキードのあとその女の事が気になって密かに出会ってたんですか? だとしたらやはりシオンは変態ですね、死んでください。そうではないちゃんとした理由があるならさっさと話してください。さぁ、早く。」

「……早く……!」


 な、なんだこのソラの迫力は……? その女その女言いすぎだろ……。あまりにもいろいろ言いすぎてこいつ自身も息切れしてるし。しかもマルロもかよ。

 ま、まぁよくわからんがエリアとの経緯を話したほうが良さそうだな。


「シ、シオンの仲間はいつもこんな感じなのか?」

「いや、いつもは違うんだけど……」


 という事で、俺は城の潜入を考えている時にエリアと出会った事と、ついでに闇ギルドとこの国の王様が繋がっている可能性が高い事を伝えた。


「なるほど……事情はわかりました。つまり一時的に目的が一致してるという事ですね。」

「ま、まぁ確かにそうとも言えるが……」

「ならさっさと王様に会いに行きましょう。コロシアムであれだけ功績を残したんですから会ってくれますよ。」

「……行こう行こう。」


 まぁ確かに会えるチャンスは今しかなさそうだしな。何が起こるかわからんが、やるだけやってみるか。


「よし、行ってみよう。」


 そして俺たちは城に行く事になった。俺が思っていたよりもすぐに城に入る事ができ、俺は王のいる部屋まで入る事が許された。

 入るなり王は側にいた者たちを下がらせ、気持ち悪いほどにこやかな笑顔で俺を出迎えてきた。


「おお、よく来てくれたなシオン。素晴らしい闘いだった。我が思っている以上にな。どうだ? ここの専属の闘技者にならんか? 金には困らんぞ。」

「せっかくのお誘いですが、旅の途中なので。」

「……そうか、仕方あるまい。だが何か褒美は受け取って貰うぞ。何が欲しい?」


 切り出すにはこのタイミングしかないか。

 俺はなるべく自然な雰囲気を醸し出して言葉を放った。


「欲しいもの、そうですね……闇ギルドの情報、とか。」

「……!」


 王の目つきが変わった。ビンゴだな。


「何の、話だ?」

「この国は、闇ギルドと取引をしているな。それは立派な法違反だ。しらばっくれるならそれでもいいが、私は政府に顔見知りがいる。あとはわかるな。」

「……ぬぅ。」


 しばらく沈黙が続いていたが、やがて王は口を開いた。


「1つ条件がある。話す代わりに政府への報告はしないでもらいたい。」


 俺たちは互いの顔を見合った。皆同じく頷いた。

 今は情報を得る事が優先だから条件をのんでもいいだろう。


「いいでしょう。」

「……ならば話そう。確かにこの国は闇ギルドと取引をしていた。」

「していた? 今はしていないって事ですか?」

「そうだ。正確には出来なくなった、だがな。我らは蜂の針という闇ギルドと取引をしていた。しかしこの前彼らが何者かに壊滅させられ、ビッグベアの取引が完了せぬままそれ以降は取引をしていない。」


 壊滅、俺のせいか。しかしこんなところで繋がりがあるとはな。


「シオン……もしかしてそのビッグベアってあの時のビッグベアじゃないですか?」

「あの時って、冒険者の試験の時か?」

「ええ、あんなところにビッグベアがいるのはおかしいと試験管も言っていましたし、もしかするとあそこでビー達は管理していたのかも……」


 確かに、そう考えると納得がいくな。


「それで? 闇ギルドがその取引をしていたのは何のためですか? ただの金集めにしては効率が悪いような気がしますが。」

「……詳しい事は我にもわからぬが、ビーとかいう輩は報酬の金とは別に【ときの石板】を探していると言っていた。」


 時の石板……? 俺とソラは全く見当もついていなかったが、マルロとエリアは顔つきが変わった。何か知っているのか?


「マルロ、知ってんのか? 時の石板とやら」

「……古文書に伝わる伝説。……遥か昔に各大陸に散らばった石板が5つあるとされている。それを集めると、時を渡れるとか、大陸によって伝承は違うようだけどそういう超常現象が起こると言われてる……。けど、実際にそれらしき物は2つしか見つかってないはず。」


 それでも2つ見つかってるって事は、伝説もあながち間違ってないかもしれないのか……

 マルロの話を聞いた王は訝しげに彼女を見つめた。


「そこの娘、古文書が読めるのか? いや、そもそも古文書をどこで見つけた?」

「……奴隷だった頃の屋敷の主人が趣味で古い物を集めていた。その中の1つに古文書があったのを暇つぶしによく見てたから……。古代文字もその近辺の書物から独学で学んだ。」

「……なるほど。貴様ドロール出身か……。まぁいい、その女の言う通りだ。奴らはその石板を欲している。」


 時を渡れる石板か。個人の願いとしては十分ありえると思うが、組織として集めているという事は何か大きな目的がありそうだな……。


 そんな事を考えていると、石板の話から反応を示していたエリアが口を開いた。


「……それで? 闇ギルドに教えたのだろう? アミリアに眠る石板の噂を。どこにあるんだ?」

「ふ、む。その通りだ、我が国の書物庫にも時の石板について僅かながら書いてあるものがあってな、そこから得た情報によると、【裁きの大穴】の最深部にあると言われている。」

「裁きの大穴の最深部だと……?」


 エリアが疑問の表情を浮かべた。相変わらず俺とソラは蚊帳の外だが……。

 よくわからないので俺はエリアに聞くことにした。


「なんだよその大穴ってのは?」

「……裁きの大穴というのは名の通り巨大な大穴の事だ。あまりにも深く、複雑すぎてモンスターたちの特殊な生態系も出来ている。」

「それと石板のなんの関係が?」

「それがわからん。あそこにそんな物があるなど聞いたことがないが。どういう事だ?」


 エリアが王に疑問を問うと、王は少し間を空けたあと、語り始めた。


「石板があるという事を聞いた事がないと言ったが、そもそも蟻の巣のように枝分かれしたあの大穴は未だに未開拓の部分が多い。そのため見つかっていないのだろう。」

「闇ギルドにその情報を教えたのはいつだ?」

「2週間ほど前だったな。」

「なるほど、ならば闇ギルドは既に調査に向かっているはずだ。私たちもすぐに向かうべきだろう。」

「ちょっと待ってください。」

「ん? なんだ?」


 エリアが早速出発しようと意気込んでいるところにソラが待ったをかけた。


「何やら貴女は個人的に闇ギルドに思い入れがあるようですが、私たちにはありません。私たちは記憶を探す手がかりが欲しいのであって、闇ギルドを追っているわけではないですからね。」


 ふむ、確かに。俺たちの1番の目的は記憶を取り戻す事だしな。別に闇ギルドがそれと繋がってないなら無理に追う必要はないよな。

 そう思っていたがエリアが思わぬ事を口にした。


「なるほど。だが時の石板の噂が本当なら、記憶が戻るかもしれないぞ?」

「どういう事ですか?」

「単純な話だ。時の石板で過去に遡れるなら、お前たちの昔の姿を見れるじゃないか。」

「あ……確かに。」


 そうか。記憶を取り戻すって意識してたから思いつかなかったが、過去に行けるとするならその可能性があるな。


「いい考えかもな。今んとこ俺たちに他に行くあてはないし、石板探し、いっちょやってみるか?」

「ふふ、シオンがそういうなら仕方ない。目的・・が一緒だし私も同行しよう。良いだろう? ソラ、マルロ。」

「ぐ、ぐぬぬ……!」

「……仕方ない……。」


 こうして一時的に、エリアが仲間に加わった。

 そういえばこいつ、仲間はどうしたんだ?

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