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隠れ無双〜チートですか?いいえ実力です〜  作者: ハヤブサ
太陽暦664年:アミリア大陸編
16/65

16話【エリア、危険エリアに潜入】

 コロシアムの中は、円筒をえぐるようにできた巨大な観客席と、その中央に位置する闘いの場によりできていた。観客席の入場口と剣闘者の入場口は別にあり、モンスターの眠る檻はまた別のところにあるらしい。

 今俺は、剣闘者控え室と言う割と広い部屋の中で待機している。中には試合を待っているであろう選手たちが各自準備している。

 王様とのコネを作るために勢いで出場すると言ってしまったが、めんどくさくなってきたな……


「おお、ボーズ。おめえ王様からスカウトされたらしいじゃねえか。」


 椅子に座ってそんな事を考えていたら、ムキムキのオッサンが話しかけてきた。

 最近、ムキムキのオッサン多いな……。


「ええ、まぁ。あんたも剣闘者でしょ? ってことは王様からスカウトされたってことですか?」

「んなわけねーだろ。剣闘者ってのは見世物だぞ、基本的には志願制だ。時々は囚人からスカウトしたりもするがな。」


 そういうもんか。まぁ確かにいちいちスカウト制にしてたら効率悪いしな。


「そういえば、試合の中で、モンスターって殺しちゃっても良いんですか?」

「全然構わないぞ。モンスターは王様の所有物だが、腐るほどいてむしろ処分に助かっているそうだ。」

「なっ……!」


 あの、タヌキジジイ、嘘つきやがったな……何が我の所有物を壊した、だよ。最初から俺を剣闘者として出すつもりでいやがったな……


 シオンとオッサンが会話をしている中、コロシアムの観客席のVIPルームで王と側近は会話をしていた。


「王様、どんどん人が集まって来ましたよ。」

「ああ、素晴らしい集客力だ。どうやら噂が噂を呼び、興味を示して皆が来たようだな。」

「あとはどれだけ本番でやってくれるかですね。」

「ふふふ、奴には素晴らしいプレゼントも用意してある。今日は儲かるぞ!」


 ソラとマルロは、アポロンを預かり、観客席で剣闘者が入ってくるのを待っていた。


「くるるるる。」

「さて、シオンはいつ出てくるんでしょう。」

「……このプログラムを見る限りでは中盤くらいみたい……。しかし、ミラボレアがいつの間にかこんな施設を作っていたとは……。」

「作ったの最近らしいですからね。でもどんどん有名になってきてるみたいですよ。」

「……あ、始まるみたい。」


 コロシアムの下の方にある司会者の席に座っていた人が立ち上がり、拡声器を使って話し始めた。


「お待たせしました! ではさっそく始めていきたいと思います! まず始めはEランク、食人花バクバフラワー!」


 すると、1つの入り口からたくさん生えた根を使い、歩いてくる巨大な花のモンスターが現れた。


「対するはレベル2、冒険者ドンモ!」


 モンスターとは別の入り口から、筋肉質な男が斧を持って入場してきた。


 会場から歓声が湧く中、選手控え室では試合を観るもの、自分の世界に入るもの、談笑しているものなど、それぞれのやり方で皆、心を落ち着かせていた。


「始まったみたいですね。」

「おう、ボーズ。観なくていいのか?」

「ああ、今は良いっす。」

「そうか、俺はちょっくら見てくるわ。」


 さてと、俺の番まで時間あるし、ちょっと外でもぶらつくかな。

 俺は控え室を出て、街へと繰り出した。街の中の施設はただいま準備中などの看板が多く、どうやら街の人々はコロシアムを観てる人が多いようだ。


「そういえば王様がコロシアムにいる今なら城に忍び込めたりするんじゃねーの?」


 そう思った俺は街の奥にある城へと行く事にした。思った通り城の近辺の警備は薄い。

さて、どこからなら忍び込めるかな……


「……ん?」


 城の周りをキョロキョロ見ていたら、明らかに怪しい行動をしている人物を見つけた。

 四つん這いで歩き、手で草木を持って顔を隠しながら城の近くへと進んでいる。

 ま、まさかアレで隠れているつもりなのだろうか? 正面はともかく横から見たらバレバレだし剣が地面にあたってガチャガチャいってるし、監視兵にめっちゃガン見されてるし。

 見てられなくなったので監視兵に捕まる前に声をかける事にした。


「おい」

「ひゃっ!?」


 ビクッとしてこっちを見てきた顔に俺は驚いた。

 こ、こいつは死神エリア? なんでこんなところに?


「今ひゃっ、って……。」

「ゴ、ゴホン。なんだ貴様は、よく私の存在に気づいたな。ん? 貴様はどこかで……」

「いや死ぬほどバレバレだったぞ。俺はアルキードで会ってる、シオンだ。」

「ああ、あの時の。それで? 何の用だ貴様。」

「いや別にお前に用があったわけじゃない。この城に忍び込もうとしたらお前がいたから話しかけただけだ。」

「ほう、なるほどな。目的はわかった、私は、この国と闇ギルドが関わってるという噂を聞いてな、闇ギルドに関する情報を集めに来た。では私は擬態に戻る、邪魔はしないでくれ。」


 するとエリアは再び草木を顔の前に持ってきて隠れようとし始めた。

 もしかしてこいつはアホなのか?


「いや、それ擬態出来てねーぞ。バレバレだから、監視兵めっちゃこっち見てるから。」

「なっ! ほ、本当だ。ではどうすれば……。」

「色仕掛けでもすれば?」


 胸でかいし。そう、こいつやけに胸がでかい。しかし俺がそう言うとエリアはギロッとこっちを睨んできた。


「ふざけるな。誰がそんな事するか! だから男は嫌いなんだ、不潔でいやらしくて傲慢だ。もう私に話しかけるな!」


 エリアはぷいっとそっぽを向いて離れてしまった。しかしどうしたら良いか悩んでいるようでそこら辺をウロチョロしている。アレはアレで余計に怪しいぞ。


「おい。」

「な、なんだ! 話しかけるなと言っただろ。」

「俺に良い考えがある。聞いてくれ。」

「誰が男の言う事など信用するか。」

「そんな事言っても良い案が浮かばないんだろ? まぁ聞くだけならタダだ、一応聞いてくれ。」

「……話すだけ話してみろ。」

「まず城の前の門には監視兵が3人配置されてる。だから普通に行ったら突破は無理だ。」

「そうだな。」

「んで左側の外壁の近くには1人だけ監視兵がいる。」


 そう、城の両端には外壁と城の間に人1人分ほどが通れるような隙間があるのである。


「確かにいるが、あんなところの監視兵なんてどうでも良いだろう?」

「そう、どうでも良いはずなんだ。普通ならな。けど左端には監視兵がいる。右端の隙間は岩で塞がれているのにだ。」

「……つまり、あそこ監視兵をつけるだけの何かがある可能性が高い、という事か?」

「そういう事だ。だから左端の監視兵だけを気絶させてそこから浸入、どうだ?」

「悪くはない、しかし左端に通路がない可能性もあるのを考えるとリスクが高い。」

「ああ、お前通信機持ってるか?」

「ああ、持ってるが。」

「ならエリア、お前が潜入してくれ。それで俺は他の監視兵の様子なんかを教える、それでお前が浸入できたら情報を集めてくるんだ。」

「ふん、その作戦をするには私への信頼が必要なはずだ。そして私からお前へ信頼もな。なぜお前はあって間もない私とそんな作戦を立てた。」


 エリアはどうやら本当に人を、いや男を信用していないみたいだな。こいつみたいな場合は感情で言うより理屈で言った方が納得するだろ。


「別に……お前のレベルの高さを信用しただけだ。」


 そう言うとエリアは少し寂しそうな顔をした。


「……なるほど、それなら納得できる。良いだろう、やってみろ。」

「じゃあ通信機の番号を教えてくれ。」

「ああ。」


 エリアから番号を教えてもらい、準備が完了したエリアは顔を布で覆い、自然を振舞って左端の監視兵の元へと向かった。


「なんだ貴様は。ここは立ち入り禁止だ。」

「……あれは?」

「ん?」

「すまん!」

「えっ?」


 エリアは後ろを振り向いた監視兵の首筋に手刀を叩き込み、気絶させ、近くの草陰に寝かせておいた。


『監視兵は倒した。誰かに見られたりしてなかったか?』

『今のところ誰も気づいていないぞ。』

『そうか、なら奥へ進んでみる。』


 エリアはシオンとの通信を繋げたまま隙間の奥へと進んで行った。すると、城の側壁には小さな扉があった。


『なんか、いかにも怪しげな扉があった。入ってみる。』

『分かった。』


 扉を開け、中に入ってみるとそこにいたのは――


『こ、これは……』

『どうした? 何があったんだ。』

『モンスターだ。モンスターが檻の中に入れられている。』

『なるほど。そこにモンスターを集めてるのか。』

『奥にも何かあるみたいだ。行ってみる。』


 エリアは檻の中に入れられたモンスターたちを見ながら奥の小部屋に入った。そこには何かの記録がつけらているノートが置いてあった。


『なんかの記録が書かれてるノートを見つけた。』

『そろそろ門兵が気づいてもおかしくないぞ。気をつけろ。』

『ああ。読んでみる。」


 そのノートを見てみると、そこにはモンスターの取引先などについて書かれていた。


 ――――――――――――――――――――――――

 9/15

 取引相手:依頼クエスト受注人・デムム

 取引化物モンスター:Eランク・飛翔兎フライキャビット

 取引額:3万ゴールド

 ――――――――――――――――――――――――


『なるほど。こんな風にクエストで依頼して捕獲して貰う感じだったのか。モンスターの取引に関するノートみたいだ』

『そっか、何か変わった取引相手はいないか?』

『変わった取引相手か……ん?』

『どうした?』


 エリアのパラパラとページをめくっていた手が止まった。そこに、見知った名前が書いてあったからだ。


 ――――――――――――――――――――――――

 10/21

 取引相手:ルート仲介者・ビー

 取引化物モンスター:Cランク・ビッグベア

 取引金額:10万ゴールド

 ――――――――――――――――――――――――



『どうした? 何かあったのか?』

『取引相手に闇ギルド、蜂の針のボス、ビーがいた!』

『な、なんだと!? という事はここの国王は……』

『ああ、闇ギルドと繋がってる可能性がある!』

『何てことだ……。』

『もっと何かあるかもしれない、見てみる!』

『ま、待てっ! 門兵が異変に気付いた! まずいぞ、そっちに向かってる!』

『なにっ!?』


 ノート持って行ったら浸入が確実にバレる、と考えたエリアは、仕方ないがノートは置いて行って逃げる事にした。


『それより私はどこから逃げれば良いんだ!』

『今扉から出たら確実にバレる! 中で上手く隠れるんだ!』

『そんな事言われたって……』


ガチャ!


「おいっ! 誰かいるのか!?」


『まずい、来た! 声でバレたらマズイから切るぞ!』

『お、おいっ――』


 エリアは通信を切り、モンスターの檻と檻の隙間に隠れた。


「お前はそっちから探せ、俺はこっちから探す。」

「分かった。」


 エリアが咄嗟に隠れたけど場所は、モンスターから凄く視線を集められていた。モンスターは薬かなにかを打たれてるため大人しいが、鳴かれたら終わりの状況であった。


「特に誰もいないぞ。」

「奥の小部屋も何か取られた形跡はないな。」

「勘違いじゃないのか?」

「あいつは転んで頭でもぶつけたのかもな。」


「……あ、あぶない。なんとかどこかに行ってくれそうだ。」


 と、安堵していると、目の前のモンスターがゆっくりとエリアに近づいてきた。


「……な、何をする気だ?」



ベロン


「うひゃあっ!」


「誰だ!!」



「ま、マズイ! まさか舐めてくるとは……。」


 エリアは動揺していた。監視兵がこっちに歩いてくる。開き直って戦うにしてもここで暴れるともっと多くの兵が来ることになるためである。


カツ、カツ……


 兵士がエリアの隠れる檻の直前まで来た。もはやダメかと思ったその時――


「うわっ!」

「ぎゃあ!」


 ドサドサっと兵士たちは倒れ気絶した。兵士が倒れた背後にいたのは――


「シ、シオン!」

「どうやら間に合ったみたいだな。さっさと逃げるぞ。」


 そして俺とエリアは急ぎ足で城から脱出した。


 逃げ出してきて、落ち着いてくると、街の中にあるベンチで俺らは腰をかけ、飲み物を飲むことにした。


「なんで助けてくれたんだ?」

「なんでって、そりゃ危なそうだったから助けただけだよ。」


 エリアは心底不安そうな顔をしていた。俺はただ心配だから助けただけなんだが……


「……私に対価を支払えという事か?」

「は?」

「助けた代価に私に何かを支払えという事か? か、身体かっ!?」

「な、何言い始めてんの!? 意味なんてねーよ! 後味悪いから助けただけだ!」

「……意味もなく助けた……だと?」


 エリアは信じられないような顔をしていた。どんな過酷な状況で生きてきたんだコイツは……。騙し騙されの世界だったのか?


「俺は別に何かを求めて助けたわけじゃない。」

「そ、そうなのか……。じゃ、じゃあ……」

「ん?」


 エリアはモジモジし始めた。なんだコイツ。なんで急にしおらしくなってんだ。


「あ、ありが、とう……。」

「ああ、なんだ。別にいいよ。」

「ふ、ふんっ。勘違いするな。別にシオンを信用したわけじゃないぞっ!」

「あ、ああ。別に良いけど。あ、名前で呼んでくれるようになったのか、」

「ま、まぁお前は他の男と比べると多少はマシのようだしな。」

「でもお前の仲間のアルフレッドやドルチェだって別に悪い奴じゃないんだろ? たぶん。」

「彼らは悪い奴ではない、しかし私を信頼していない。まぁ私も彼らを信頼してないが。彼らとは完全に仕事の関係だ。特にアルフレッドはそこら辺を割り切っている。ドルチェも口では仲良くなろうとは言うがあいつは下心丸見えだ。」


 へぇ。一見優男な感じに見えるのに、アルフレッドって意外にもドライなんだな。


「だから、シオンのように意味もなく助けたりはしない。メリットがないからな。」

「へぇ、厳しい世界だな。」

「お前はこれからどうするんだ?」

「今は訳あってコロシアムに参加しててな、そろそろ出番がくるだろうから、行くわ。」

「コロシアム? ……ふむ。」

「まぁ暇だったら応援でも来てくれよ。じゃあな」

「い、いかぬわっ。」


 俺はエリアに別れを告げると、コロシアムへと戻った。


「お、ボーズ。どこ行ってたんだ? 次はお前の番だぞ。」

「ああ、ちょっと散歩です。」

「えーシオン選手。こちらに来てください。」

「うっす。」


 俺は係員に誘導され、いよいよ試合になるようだ。相手モンスターはなんだろ?


 シオンが去った後のベンチでエリアは考え事をしていた。


「あいつ……自分の欲しい情報は得られなかっただろうに、文句の1つも言わなかったな……。応援……か。」

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