第四話
彼女が能力を発現させるタイミングで彼女の脳に干渉する。俺の両足を燃やすつもりだったらしいが、目標を周りの兵隊共に変えてやった。更に、引き金を引く間も与えないよう神経が集まる場所を選び、一瞬で焼き尽くす出力にするなど、全ての数値を瞬間で書き換える。そして、全ての書き換えが終了するのと同じくして彼女は能力を発動させた。
ジュ
何かが燃える音と共に周りに居た全ての兵士が一発も銃弾を放つことなくその場に崩れ落ちた。
「は?」
彼女は目も口も開いて呆然としていた。それもそうだろう、周りの兵士を殺したのは彼女が発生させた炎なのだから。
「ちょっと待って、私こんな操作してない!」
彼女は確かめるように手のひらに小さな炎を出した。俺はそれを小さな爆発へと変化させた。
「ひぃっ!」
彼女は完全に自分の能力の暴走だと勘違いした。何度も何度も手から炎を出しては、思い通りにならない自分の能力を見ては、神経をすり減らしていった。
「ウソよ嘘ようそよ!暴走!?権天使の遺伝子拒否反応?制御………不能・・・・・・・・・?嫌っ、嫌々、イヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!まだ死にたくない!まだ!」
もはや俺は何の干渉もしていなかった。彼女は勝手に能力を制御できないと思い込み、それをあまりにも強く思い込み過ぎたため、本当に能力を制御できなくなった。身体のあらゆるところから炎が噴き出し始める。出力はとうに彼女の扱える限界値を超えていた。
「イヤァァァァァっぁぁぁ――――――――」
何もしなければ彼女を中心とし半径二百mの酸素が無くなっていただろう。俺は最期の最期に出力を変更し、彼女は先ほどの兵士たちと同じように首元を焼いて果てた。
「………」
目の前に出来あがった死体の山を見て、不思議と罪悪感は感じなかった。それ以上に別の考えが頭を支配していたのだ
(似ている………)
無意識で自分の頭が動いたあの感覚が、何かと似ている。それが何だったのか思い出せない。喉元まで来ているのに………
「!」
ふいに光が顔にあたる。ビルとビルの間から光が差し込む太陽の光だった。
その光は今まで暗闇だった世界を残酷なまでに明らかにした。
(何だよこれ………)
足元、だけでない、歩道に、車道の真ん中に、牛丼屋の目の前に、街のそこいらじゅうに死体が転がっていた。皆一様に口から血を流し、顔の周りに血の溜りが出来ていた。
(これって………)
俺は再び足元を見下ろした。首元が焦げた女の死体。彼女は制服を着ており、胸元にはNWの文字があしらわれたデザインの校章がついていた。
点と点が繋がった。
バババババババババババ
耳を塞ぎたくなるほどの轟音と風。見上げると、ヘリが一機こちらに降下してきていた。
ようやく能力発動?