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天使  作者: estimate
3/19

第二話

 俺は列に並んでいた。

 目の前には親友の大樹が居た。

「怖いよな~予防注射なんてなんであるんだろうな」

大樹がこちらを向いて話しかけてくる

(そうか、今日は予防注射の日か)

何もかも懐かしい小学校の廊下、保健室の壁にはうがい啓発のポスターが貼ってある。あれは同じクラスの高橋さんが描いたものだ。

「次、出席番号10番から20番の人、入ってくださーい」

校医の金崎先生の声がした。しかし皆足がすくんで動かない

「痛くないよ、大丈夫。」

担任の前田先生が優しく皆を励ましてようやく列が動いた。

 保健室の中には白衣の先生は居なかった。その代わり、身の丈に合わないコートを羽織りフードを深く被って顔を隠した女が座っていた。

「はい、じゃあ佐倉さん。」

校医の金崎先生に呼ばれた佐倉さんが椅子に座ると、その女は慣れた手つきで佐倉さんの右腕に注射をした。佐倉さんは一瞬泣き出しそうになったが、すんでの所で涙を堪えた後

「ゲホッ」

吐血した。

「はい、じゃあ次、佐藤くん。」

クラス一のいじめっこの佐藤ですら注射の前には怖気づき、逃げ出しそうになった所を女に首根っこを掴まれ、そのまま注射を受け、吐血した。

「はい、島田くん。」

大樹が呼ばれた。

「よし!ぜってー泣かねーから」

「頑張れよ!」

俺は大樹にエールを送った。大樹はサムアップで答え、堂々と椅子に座った。そして先ほどまでと同じように注射を受け

「見たか?泣かなかった――――」

そのまま意識を失った。

「はい、じゃあ次は――――」

名前を呼ばれた段になって、ようやく違和感を覚えた。なんで自分は今予防注射を受けているんだ?なんで小学生になっているんだ?なんでみんな血を吐いているんだ?

「ほら、早く座って。」

金崎先生は俺の手を引いて椅子に座らせた。

(逃げないと)

無意識に身体が動いたが、金崎先生はものすごい力で俺を押さえつけた

「ほら、痛くないからねー」

前田先生もニコニコしながら俺を励ます。待て、前田先生は3組の担任じゃなかったか?俺は1組だった筈だ。

 女は黙って俺の右腕を持ち、注射針を近づけた。

「よう、チキンごちそうさまって伝えてくれよ。」

女は動きを止め、こちらを見た。

「何で・・・・・・・・・」

その美しい蒼い目は驚きで見開かれていた。

 俺は腕力で金崎先生の手を振りほどき、女の持っていた注射を奪い取った。

「俺はツベルクリン検査は陰性って出てんだよ。」

そういって注射を投げ捨て、彼女の羽織っているコートを剥いだ。

「その校章・・・・・・・・・」

NWの文字があしらわれたデザインの校章。

「お前―――――」

「起きろ!」

どこからか声が聴こえてきた。


更新頻度はまちまちです。

誤字脱字はお許しください。

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