第四章 疑惑①(二日目)
バトラーとルルーの二人の死体は検死後、二人に随行していた騎士団員に引き渡された。
ライナは意識不明の重体だった。
第一発見者は休憩から帰って来たロウマとシャリ―だった。三人が待っているというので幕舎に向かったら、倒れている三人を見つけた次第だった。
「バトラーとルルーは即死ですね。バトラーは心臓を、ルルーは首を鋭利な刃物のような物で斬られています」
シャニスは羊皮紙にまとめた内容をロウマに報告し始めた。
「ライナはどうだったのだ?」
「現場の様子から、犯人と争ったと考えられます。その証拠に彼女の剣が落ちていましたから」
「…………」
「どうかしましたか、元帥?」
「なぜだろうか……」
「えっ?」
「なぜ彼女は大声を出して、助けを呼ばなかったのだろうか?外には見張りの兵士達が大勢いたはず。呼ぼうと思えば呼べたはずだ」
「自分で倒せる相手だと思ったのではないのでしょうか?」
「それはないだろう。相手はバトラーとルルーの二人をあっという間に仕留めたほどだ。強者であることは間違いない」
「元帥はさっきから何をおっしゃりたいのでしょうか?」
「分からないのか?つまり私はこう言いたいのだよ。彼女は見たのだよ」
「見たと言いますと、もしかして犯人でしょうか?」
「それしかないだろう。彼女が大声を出せなかったのは、犯人の顔が顔見知りだったせいで驚いたためだろう。それ以外あり得ない」
「なるほど。さすが元帥。頭脳明晰、先見の明には毎回感服致します」
「感心している暇があるのなら、捜査をすることだな」
「こ、これは申し訳ございません。ただいまより、捜査を開始致します」
シャニスはそう言うと、ロウマの前から立ち去った。
うるさいのが一人いなくなったので、ロウマはほっと一息ついた。
しかし、休んでいる場合ではなかった。せっかく騎士団の団長達を集めての話し合いをするはずだったのに、彼らが何者かに襲われてしまい、二人は亡くなり、一人は意識不明の重体。