惨劇⑥(二日目)
きっとシャリ―が耳にしたら激怒しかねないだろう。なのでライナは誰にも話さないでいた。
「申し上げます。ロウマ=アルバート元帥がただ今、お戻りになられました」
幕舎の外から、誰かの声がした。おそらく見張りの兵卒だろう。
三人は、さっきまで興じていたポーカーをやめるとカードを全て机に置いた。
「やれやれ。ようやく戻って来たか。会ったら何か文句の一つでも言ってやるか」
バトラーは息巻いていた。
「それはやめた方がよろしいのでは……」
ライナが忠告しておいたが、バトラーは聞く耳を持たなかった。
「甘いぞ、ライナ団長。今まで好き勝手な事をするのを黙って見てきたが、今回はそういうわけにはいかない。なんでも我らを団長職から解こうとする考えだそうだ……」
ルルーも厳しい表情になっていた。
ライナもそれを聞くと険しくなった。その話は出発前から耳にしていた。
だが、正直言ってライナは団長職を解かれても痛くも痒くも無かった。ライナが団長職に就いている期間は、まだ一年程度なので、解かれても大した被害は無い。
しかしバトラーやルルーを初めとした他の団長達は、解任の目に遭ったら、ただでは済まされないだろう。彼らはその日から一将軍に格下げされるか、もしくは都で有名無実の位に就かされ、その日暮らしをさせられる可能性が高い。
彼らのことを思うと、できれば噂であるのを祈るまでだった。
「おいバトラー団長、どうなさった?」
ルルーが呼んだのも無理はなかった。
先頭にいたバトラーの動きが突如止まってしまったのである。
そして、
こと切れた。
「おい、バトラー団長!しっかりしろ!」
しかし、それがルルーの最期の言葉になった。
そいつは侵入してきた。
バトラーを殺したそいつは。