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惨劇⑤(二日目)

『元帥だかなんだか知らないが、金と権力でなんでもできると思うなよ!』


『こっちは失うものは何もねえぞ!』


『シャリ―ちゃん、そんな男からは離れて俺達の所へ来いよ』


 うるさい以前に鬱陶うっとうしかった。知り合いでもない連中から、なんでここまで言われないといけないのか。


 ロウマは溜息をついた。


「元帥」


 後ろから声が聞こえた。


 しつこい、と思ったがこの声はグレイスだった。


「どうした?」


「アリスは元気にしていますか?」


「元気だ」


 ほっとしたのか、グレイスは一礼だけすると店に引っ込んだ。


 ロウマの横にいるシャリ―はグレイスの質問の意図が理解できていないようだった。屋敷にはアリスの他にもナナーもいるのに、なぜ彼はアリスだけのことを聞いたのだろうか。


「ねえ、師匠。グレイスさんはどうして、アリスのことを尋ねたのですか?」


「すまないが、シャリ―。その質問だけは、やめてくれ。答えることはできない」


「……はい」


 さすがに非常識なシャリ―でも理解したらしく黙った。


 現在、グレイスが引退した理由を知っているのは、ロウマとアリスだけ。


 理由は、アリスの家族殺害だった。




     ***


 幕舎で待たされること小一時間。もうすぐロウマは休憩から戻って来るそうだ。


「フルハウス」


 ライナはカードを他の団長達に見せた。


「またライナ団長の勝ちですか。相変わらず強いですね」


 そう言ってトランプを切り始めたのは、ランティス騎士団団長のバトラーだった。


「まあそう言うな、バトラー。女性に勝ちを譲ってやるのも男としての礼儀というものだ」


 顔に似合わずキザなセリフを吐いている男が横にいた。男は体格は大きいのだが、がっしりしているというよりも太っているという言葉がぴったりだった。


 見た目は中年のようだが一応、二十代である。男はフィネス騎士団団長のルルーだった。


「ルルーさん、負け惜しみはやめてください。男としてみっともないですよ」


 ライナはにこりと微笑を浮かべて言った。


「おやおや、ライナ団長には全てお見通しという奴だったかな」


「当たり前じゃないですか。あなたがポーカーが苦手だというのは顔を見れば分かりますよ」


「顔ですか?」


「だってそう書いてますもの」


「バトラー、俺の顔に何か書いているか?」


 ルルーは自分の顔を差しながらバトラーに尋ねた。


「別に」


 バトラーは首を横に振った。


 ルルーはライナの言ったことが、いまいち理解できなかったらしく首をかしげた。


 ライナはその様子を楽しそうに眺めた。


 ランティス騎士団とフィネス騎士団、それにライナのオルバス騎士団は首都のダラストから非常に近いので、ゆっくりで一日、急げば半日で到着できる距離である。


 元帥であるロウマからの呼び出しなので、みんな馬を飛ばして半日で到着させた。


 ところが到着してみれば、ロウマはシャリ―と一緒に昼食に出かけていたので、三人とも客人専用の幕舎で待たされることになった。


 幕舎と言っても、客人専用なのでしっかりとした作りであった。


 また、この中には高貴な身分の者しか入れないので、ライナ達は部下を伴っていない。


「それにしても、アルバートはまだ帰って来ないのか?」


「バトラー団長、ロウマ元帥ですよ」


「知りませんね。俺は昔からあいつを名前で呼んだことはありません」


 バトラーの言ったことに対して、ルルーは含み笑いをした。どうやら彼も同感のようである。


 困ったものであるが言っても聞くわけないので、ライナは諦めた。


 騎士団の団長はライナ以外、ロウマのことを好いていない。詳しいことは知らないが、どうやらロウマが以前、やっていた勝手な政治体制に反発しているらしい。彼らは今でもあの頃のことが、しこりとなっており、時折ロウマの悪口をもらすことがある。バトラーに至っては一緒に酒を飲んだ時に、ロウマを殺してやりたいとまで口走ったこともあった。

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