「プロローグ3」
『はい、皆さん今日は魔法と魔力についての復習です。魔法とは私たちの日常生活に欠かせない物です。ある時は箒で空を飛び、またある時は火を起こす、そんな魔法ですが動力源が私たち魔法使いの体に流れている魔力だって事はもう知っていますよね。つまり魔力さえあればほとんどの魔法は使う事が出来ると言う事です。それと豆知識ですが、魔力は体の身体能力と頑丈さと比例すると言う事も覚えてくださいね』
ホールの様なとても大きな円柱の形の空間がある。そこには広い床を余裕で覆い尽くす大きな赤い絨毯の上に清潔感を表した白い椅子が螺旋状に並べられており、映画館の席の様に中心から離れれば離れるほど椅子が高くなっている。
それは椅子の足が長いのでは無くどうやら地面が階段の様になっているのだ。
そしてその中心には先生と思われる人物が授業をしており、その周りの椅子には当然だが生徒だと思われる人々がぎっしりと座っていた。
『しかし残念な事に魔法と言っても万能って訳ではありません。魔法にはたくさんの種類があり、役割の応じて名称が与えられています。例えば全ての魔法の基礎となる基本魔法、他にも何かを呼び出す際に扱われる召喚魔法に、親から子へと引き継がれる遺伝魔法。そして科学と魔法の見事なコラボレーション、科学魔法とまだまだあります』
先生が予め(あらかじめ)録音したテープを流しているかの様に台詞を何一つ間違えずに話している中、喜希と言う名の少女がたくさんの人々、いや魔法使いの中に混じって退屈そうに授業を受けていた。
喜希はこの授業がよっぽど楽しくないのか、魔法の杖がモチーフの鉛筆を耳に挟み、別の鉛筆を鼻と唇の間に挟み遊んでいる。
『ここでピックアップですが、特に科学魔法は私たち魔法使いの日常生活に一番干渉されている魔法です。具体的には箒などですね、あれは科学の力により魔力を流しやすくなっています。他にもまだ実験段階で市販化はされていませんが、瞬間移動の出来る靴など。これらの便利な所は何と言っても魔力を流すだけで発動されるのと、魔法名を唱えなくて良いと言う所ですね』
喜希は魔力を流し込むだけで空が飛べるようになる箒すら自由に扱えないのか、『簡単』と言う言葉にピクッと反応し、鼻と口の間に挟んでいた鉛筆を足下に落としてしまう。
そして『簡単』と言う言葉にイラつきながらも喜希は鉛筆を取ろうと足下に手を伸ばすが、あろう事か鉛筆は階段だと言う事利用してどんどん先生の方へと転がって行く。
『ここで余談ですが魔法の種類に精霊魔法と言う物があります。この魔法はとても難易度が高いのですが、使いこなせると、とても役に立ちます。と言うのもこの魔法、実は動力源は魔力では無く、全ての物に宿ると言う精霊の力を動力源としています。つまり魔力を使う事無く、魔法を使えると言う事ですね』
先生が魔法と魔力について熱心に話してくれるが、生徒達のほとんどは理解していないようで、頭の上に大量の疑問符を浮かべている。
しかし先生が話している事は実は初歩的な事で魔法使いならば知っていて当然と言うレベルなのだ。
そんな中、鉛筆だけは空気を読まず、加速しながらも椅子の足を華麗にかわしながら先生の方へと近づいて行く。
「後はオリジナル魔法の説明ですが……ん?」
足元へと転がってきた鉛筆が先生の視界に入る。
先生がそれを手に取り、生徒にこの鉛筆の持ち主を聞こうとした瞬間、喜希が立ち上がる。
「あの、それ! 僕のです……」
今度は長いな。説明が。