「違和感を放つジョーカー」
「女子寮が、階上にあるのに対して、男子寮は地下に存在します。あの方々との会話に気を取られて、一緒に階段を上がっていく、なんて事は間違ってもしないでくださいね」
「あぁ」
黒いスーツを着た真面目そうだがホストのような青年、ダビデが学園の寮の説明と共に砕けた注意をする。それに対して、アガシオンは愛想悪く返事をした。
「……そう言えば、アガシオンさんは使い魔として、喜希さんに召喚されたと聞きました。その右手首に刻まれている紋章は、それの証だとか。この事についてですが、何か感想などはありませんか?」
「さあな。常識的に考えれば、それは不名誉な事だろう。なにせ、使い魔なんだからな。俺は、あいつに召喚される前の記憶は無い。あるのは知識だけだ。だからか、俺自身は不快感など感じなかった」
「なるほど……一理ありますね」
二人が会話を進めながら階段を下りていくと、地下に向かうであろう新たな階段が現れる。
その階段は、上に向かう階段に比べれると、華やかさに欠け、代わりに無機質なデザインだった。具体的には、ガラスではなく、黒い金属で作られており、吹き抜けとの隔たりも金属で出来た格子なのだ。
アガシオンは、その相違に一瞬戸惑うが、それほど衝撃的でもなかったのか、問題無くダビデの後をついていく。
また、アガシオンが戸惑ったように、男女で華やかさにこれほど差があれば、一見、差別のようにも感じるが、肝心の男子生徒達には、こちらのほうが良いと評判が良かったりするのだった。
「そろそろ、到着します」
ダビデが最後の一段を下ると共に、静かにそう呟く。アガシオンが視線を改めて前方へ向けると、そこには金属製の扉が佇んでいた。
「ルームメイトは、3人です。私と、アガシオンさん。そして、ジョーカー。仲良くしてくださいね?」
「あぁ」
ダビデは、返事を聞くと、慣れた手付きで扉を開放する。
一番奥に暖炉、その手前にはテーブルや椅子、そして視線を少し右にそらすとベッドまで見えた。物の配置的には、女子寮とわずかに差があるが、部屋の雰囲気はほとんど変化のない部屋が、ダビデとアガシオンを暖かく向かえ入れる。
アガシオンは、想像していた部屋とは大きく違ったのか、少し呆然としていた。そこへ、間髪入れずにジョーカーだと思われる少年が、ベッドから起き上がり、毛布を体全体に羽織ったままアガシオンにもぞもぞと寄り付く。
「こらこら、ジョーカー。アガシオンさんが、困った顔をしていますよ」
注意を受けた少年は、アガシオンから数歩分距離を取ると、眠たそうな目でアガシオンの顔を見つめる。そして、羽織っている毛布から手を出し、握手を求めた。
『よろしく』
「あ、あぁ……よろしく」
アガシオンは、少年に奇妙な違和感を覚えながらも握手に答えた。すると少年は軽く微笑み、再びベッドへと戻っていった。
「はいはい、では素っ気無い自己紹介も終わったところで、今日は休みましょう。明日から、楽しいイベントが始まりますからね」




