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「列車内での出来事3」

「乱数調整Tool-Assisted Speedrunって聞いたこと無いかしら? それ私なのよね」


 車両の中が今まで以上にざわめき始める。

 その中で一際、騒がしい少女が居た。


「うぉぉぉぉぉい!!! これから、おれらがする仕事さっき、説明しただろお!!! 何でいきなり通り名となる称号、暴露してんだよお!!!」


「うるさいわね。あんたこそ、そんな事、大きな声で言わないの。それにたかが通り名、名乗っただけで怒りすぎよ。通り名は名乗る為にあるんだから名乗らないと損よ。それともなに? 私のする事に文句つけようっての?」


 乱数調整は脅迫とも言える笑顔で、炉心溶融を黙らせると改めて男を凝視する。

 見るからに安っぽいボロボロの服、そこから考えて貴族と言う線はなさそうだ。その結果、厄介な遺伝魔法を使われる事はないだろう。次に扉を蹴って出現した事、この線からは男がろくに魔法も使えない堕落者だとうかがえる。一見、偏見のように感じるが、固く閉ざされた扉を魔法を使わずに肉体で開けるメリットなどほとんど無い。メリットとして考えられる線と言えば、相手に自分を堕落者の様な落ちこぼれと誤認させるくらいだ。しかしそこまで考えられる者がこんな事はしないだろう。それこそ偏見だが……

 乱数調整の頭の中で次々に思考、予想されて行く男の戦闘能力。

 さすがは乱数調整と言えるだろう。


「で、戦うの? どうなの? 土下座して謝るんだったら学園に報告程度で済ましてあげるけど……」


「ふ、ふざけんな! 学園に報告って最悪じゃねぇか!」


 男は武器を構え直し、標的を乱数調整に合わせる。その動作からして男の武器は遠距離武器の様だ。

 この狭い車両に遠距離武器を、持ち込む辺りからして男が無能な事が分かる。


「なに? その武器。わざわざ照準を合わせないと、いけない位、ぶれが激しいの? その辺りから察すると、威力はかなりの物の様ね。けどそんな高威力の武器を、この狭い車両で使ってあなたは無事なの? まさかこの列車ごと、吹き飛ばす気じゃ無いでしょうね。まぁ、学園に報告って脅しで怯えているくらいだから、テロでは無い様だけど。」


 男はロケットでも飛び出しそうな、大型の銃にも見える武器の引き金に指を添える。

 その指は激しく揺れ、自分は動揺しています、と宣言しているようだった。

 乱数調整は引き金に指が掛っていると言うのに、何の警戒も無く男に近づき始める。


「く、来るなああ!!!」


 引き金が引かれる音が列車内に響き渡る。

 乗客たちの顔が一気に青ざめる。炉心溶融は1人でも多くの乗客を守ろうと子供連れの親子を背後にやり、魔法名を唱えようとしていた。


 しかしこの間、どこかおかしな矛盾があった。

 なぜ、高威力の銃の引き金が引かれたと言うのに、引き金が引かれた音が車内に響き渡ったのだろうか。

 銃が正常に働けば、大音量の爆発音と共に、列車は吹き飛ばされていただろう。

 なぜ引き金を引く音が、大音量の爆発音に掻き消されず、響き渡ったのだろうか。


 引き金が引かれた音が、大音量の爆発音に掻き消されず、車内に響き渡った理由……それは簡単な話、引き金が引かれただけで、弾が発射されていないからだ。

 原因は男にあった。男は己が持つ武器の威力に恐れをなし、不発を恐れ、弾を装着しないまま列車に乗り込んだのだ。そして実際にハイジャックをするという緊張から、とうとう弾を装着する事を忘れ、今に至ってしまったと言う事だ。


「今、気付いたの? その武器、弾が装着されて無いって。あ、それと狭い場所での戦いに向いた武器は瞬発力に優れたものよ。覚えておきなさい」


 男はその場に崩れ落ちる。抵抗する術を失ったからだ。

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