「列車内での出来事2」
2人揃って、必死に見つめてる扉の揺れが少しずつ大きくなる。
そこそこの強さで揺れている為、扉の周囲の人もその異変に気付き始める。
「お、おい、あれ、何で揺れてるんだ?」
「向こうに人が居るわね……」
「何で分かるんだ? 第一、向こうは貨物車両だろ?」
「何で分かるんだ……って、だってそりゃ、私だもの。分からないはずが無いわ。それに貨物車両だったら人が乗って無いって言うのは、偏見よ? さ、来るわよ」
「何がだよ?」
「リニアモータートレーンジャックかしらね」
逆巫女服少女がそう言うと、扉がこれまでに無く大きく揺れる。まるで扉の向こうから、誰かが扉を蹴っている様な一定の音にほとんどの人が気付き始める。
やがて乗客同士でざわ……ざわ……と噂をする様にざわめき始める。
その瞬間、扉が破られ、何者かが出てくる。
さっきまであんなに騒がしかった乗客がぴたりと静まり返り、静寂の空間が生まれる。
そんな空間に自分が空間の主だと主張するかのように1人の男が現れ、
「この列車は俺が乗っ取った! 死にたくなければ俺に従え!」
高らかに宣告する。
その近くで炉心溶融と逆巫女服少女がこそこそ話をしていた。
「おい、どうするよ?」
「なんだか楽しそうね、炉心溶融。さっきまでは怖がってたじゃない?」
男が懐から武器の様な物を出す。それに乗客たちは怯え、再びざわめき始める。男はそれを黙らす為に武器を構え、乗客を脅迫する。
「幽霊じゃ無いんだったら怖がる事、無いぜ! 炉心余裕、なんちゃって、てへっ」
「……2回死んで2度、生まれ変わりなさい」
「ひどっ! 人が精一杯、考えたんだぞ!」
「うるさいわね。良い? 良く聞きなさい。私の予想ではあいつは堕落者だと思うの。理由は扉を蹴って出てきたから、それだけ。だから力押しで良いと思うの」
「扉を蹴って出てきたから堕落者って……それこそ偏見じゃねぇか」
まぁね……、と小さく呟いて男の前に出る逆巫女服少女。あまりの堂々としているその態度に逆に男がビビっている。
「なんだ女? 殺されたいのか?」
「なんだ男? 死にたいの? まったく……あなたも不運よね、よりによって私の乗っている列車をハイジャックするとは」
男は眉間にしわを寄せる。逆巫女服少女はそのまま会話を続ける。
「乱数調整Tool-Assisted Speedrun(らんすうちょうせい・ツールアシステッドスピードラン)って聞いたこと無いかしら? それ私なのよね」
車両の中が今まで以上にざわめき始める。