「私立学園入園!?」
喜希Viviage (きき・ヴィヴィアージュ)と言う名の少女は、学園での成績の悪さのあまり、父親と喧嘩をしてしまい、出来もしない召喚魔法を無理矢理に使おうとする。
その結果、魔力は暴走してしまい喜希の命に危険が迫る。父親はそれを必死に阻止しようと奮闘するが、暴走した喜希の魔力を抑えきれず親子共々、気を失い貴族専属の病院へ入院してしまう。
しかし父親の奮闘だけはあったのか2人とも命だけは助かり、娘の喜希だけが目を覚ます。
そしてそこで開かされる喜希の魔力の暴走の謎。
それは失われたはずの魔法、使い魔召喚魔法だった。使い魔召喚魔法は以前、大きな力を誇っていた魔女、魔人と呼ばれる種族が使用していた魔法の事だ。しかし魔女、魔人の消滅と共に使い魔召喚魔法も失われてしまう。
だが喜希のでたらめな魔法が使い魔召喚魔法と同じ効力を持ってしまい、記憶を持たないどこにでも居そうな少し顔の良い少年が使い魔として召喚されてしまう。
その話を盗み聞きしたホストの様な青年が喜希を私立学園と呼ばれる、世間に広く知れ渡っている学園とはまた別の学園へ勧誘する。
喜希は最初こそ戸惑っていたが、青年の巧みな話術でやがて勧誘を受け入れる。そして、そこから喜希と使い魔と学園の仲間達との学園生活が始まるのだった。
「ちょっと待って! 僕はお父様に怒られないなら入園しても良いかな~、って思っただけで……」
喜希はお姫様抱っこをされた姿勢で、ホストの様な青年の行動に対して必死に抵抗していた。しかし何かがおかしい。喜希は異常な魔力のせいで女子の中でも特に怪力のはずだ。その異常な怪力と言ったら、そこら辺の男子なら太刀打ちも出来ない位だったりする。
そしていつもの喜希なら、こんな細身の男のお姫様抱っこなど一瞬で抜けれるはずだ。しかし逃げる事が出来ない。それはこの男も異常な魔力の持ち主だと言う事を表していた。
今も男は逃げようと必死の喜希に対して余裕の表情で、対処する。
「その事なら心配は要りませんよ。私の名に掛けて約束します。あなたの父親は絶対にあなたを叱る事は無いでしょう」
そこまで自信満々に宣言されると返す言葉が出て来なくなる。その結果、喜希はただ黙ってお姫様抱っこで、どこかへ連れて行かれる。
「なんで……僕なんかを勧誘するの? 使える事の出来る魔法だって、火魔法『ファイアー』だけで落ちこぼれだし……」
「落ちこぼれ? そんな事ありませんよ。現にあなたは使い魔を召喚して見せたじゃありませんか。あなたの父親に言われたのでしょう? 召喚魔法の一つや二つ出来るようになれ、と。それを成し遂げたあなたは落ちこぼれなんかじゃありませんよ」
「なんで……その事を……」
「今の時代、情報が全てですよ」
病院の清潔感を表した白い廊下をしばらく歩いていた喜希、青年、使い魔はやがて趣味や興味本体で喜希に近寄ろうとするマスコミで溢れた病院の入り口へと到達する。
青年は喜希を片手で抱きかかえる様な姿勢に変更すると、空いたもう片方の手の平を入り口のガラスに纏わりつく人々に向ける。
「邪魔な方々だ。どうかお帰り願おうか。」
そして魔法名を唱える。
やっと、学園が登場しました。
そして父親が入院して眠っていると言うのに、
なんてのんきな子だ……
そして使える魔法がファイアーだけと言う、よくある設定。
まぁ、気にしちゃ負けですよね。