ダンジョンの死体回収人
⸺俺は、死体回収人だ。
朝から晩まで、うちのダンジョンである「Labyrinthus Sapientiae」……まあ、格好をつけているだけで意味は「知恵の迷宮」らしいが。
そこに挑んで散っていく冒険者達の死体を回収し、再攻略のときには自分の死体を見ないようにする。それが俺の仕事だった。
そして、現在は⸺
---
とある日、ダンジョン長に呼び出された。俺は何もしていない。
ノックをして「ダンジョン長室」と書かれた大きな扉を開く。相変わらず、趣味が悪い部屋だ。あちこちに頭蓋骨やら大腿骨やら……いくらダンジョン内では生き返るからと言って、死体から骨を集めるとは、中々である。
「失礼します。セシル・シュヴァルツです。」
椅子に座っていた若い男が振り返る。金髪に青い瞳、見た目だけなら上の中くらいには入るのではないかと言う容姿。容姿だけは。
「おー、来たなセシル!丁度いいとこなんだよ。」
コイツ……いや、彼の名前はノエル・ビジュティエ。別名、レント・ツキハラ。自称異世界転生者である。馬鹿馬鹿しいことこの上ないが、知識が役に立つという点は事実だった。腹立たしいことに。
「丁度いい、とは。また漫画とやらの知識ではないでしょうね。」
「……げっ。」
案の定であった。俺は深々と溜め息をつく。そう、この男。確かに有用なのだが、何かと「漫画」やら「アニメ」やらという意味のわからない言葉を使用してくる。
単なる妄想に過ぎないだろう。
その癖にダンジョン長としての審美眼は嘘を吐かないという、全方面から弓矢で射たれそうな人物だった。そして、俺はコレの幼馴染として生まれてしまった。
「い、いやぁ……?だってここ異世界じゃん!!漫画とかアニメとか役に立つだろ!!」
「だから、ここが異世界だという精神患者の妄言を今すぐにやめるべきだと言っている。わからないのか。」
俺は速攻で仕事モードを外した。この男に媚びへつらう方が無理がある。
「だーっ!もういい!俺は今回こそマトモな案を考えたんだ!!それすらを聞かない幼馴染なんて知るか!!」
「マトモと言ってマトモだった試しがない。」
「今回こそ、だ!」
「何度目だ。」
「……うっ」
はぁ……と盛大に溜め息をつく。二度目。この男の偉大な作戦はロクに役に立たないことが九割九分九厘である。
「まあ、とりあえず言ってみろ。話はそれからだ。」
「あ、あの……その、ですね……。我々、ちょーっと広報戦略に欠けるじゃないですか……?」
ピクリと眉が動いた。
それは事実である。うちのダンジョンは歴代のものに比べればだいぶ弱小だった。食っていくには困らないが、凄いかと言われれば微妙なライン。そんな中途半端なダンジョンだ。
「で、ですね……我々が冒険者になってXランクとか……」
「却下だ。」
Xランク冒険者。世界でたった三名しか名乗れないランクである。コイツは想像以上にアホだったようだ。
「え、えぇっと……び、Bとか?」
「今この場で考えている時点で戦略としては最低だな。」
「……ぐっ。せ、セシルさん……?年々言葉の刃が鋭く……」
「お前のせいだが。」
じっと彼を見る。ウジウジとしているが、今回は妙に食い下がる。一応本気ではあるようだ。
「お前、何故冒険者なんてやりたい。」
「え。」
「冒険者は定職があればならなくてもいい職業だ。あんなにもハイリスクな仕事、したいのはギャンブル狂か貧民街出身のガキ共だ。貴族出身の奴らなんて限られる。常に命をかけるような仕事、何故しようとしている。」
「……お前風紀委員とか向いてそうだよな。」
「茶化すな。あと、フウキイインとは何だ。また妄言か。」
「い、いや!気にしないで!!……で、冒険者でしょ?そりゃロマ⸺」
「ロマンに命をかけるつもりか。」
「……」
沈黙が走った。1秒、3秒、5秒⸺
「でも。……俺、ずっとやりたかったんだよ。冒険者。だって、めっちゃカッケーじゃん。世界中を渡り歩いて、モンスター倒して、人倒して……俺みたいなやつでも、聖人君子みたいなことができるんだろ。」
「理想論だな。」
「理想論でも!!……俺は、絶対にやる。お前の反対なんて知るものか!!」
「……」
予想以上に、決意が硬い。普段であれば「ご、ごめん」と言って挙動不審になることが常だった。……だが、今回は。
「わかった。」
「……え?」
「わかったと言っています、ダンジョン長。私は、貴方の冒険者としての道についていくことをお約束致します。」
「よっしゃーーーーっっっっ!!!!」
「うるさい」
「ハイ、スミマセン」
「……」
溜め息をついた。三回目。不安でしかない、が。……この男は、毎回失敗をしない。こういうときの勝負強さは俺を抜いている。だからこそ、多少の信頼を置いている。
「明日の朝に作戦会議を。」
「お、おう!わかった!」
俺は礼をして立ち去った。扉が閉まる音が鳴った。……さあ、まだ仕事は残っている。死体を回収しなくては。
そしてセシルは薄暗闇の中へ歩いて行ったのだった。
キャラクター設定
主人公
セシル・シュヴァルツ
種族︰吸血鬼
年齢︰16歳
性別︰女
身長︰168cm
スリーサイズ︰B90・W55・H88
スキル︰【霊視】
スキル詳細︰文字通り、見えないはずのモノが見えるようになったり、霊力を見ることができるようになる力。
容姿︰黒髪のロングヘアに赤い瞳。全体的に中性的で大人びた印象だが、心の底からの感情を発露する時は年相応の印象になる。
性格︰そこそこいいお家の生まれで自分自身に厳しいが、一人称が俺だったり口調が荒くなったりと隠れた不良の才能がある。仕事モードのときは敬語な上にどのような相手にも敬っている風に見せ、一人称も私に変化する。
準主人公
ノエル・ビジュティエ
種族︰人間
年齢︰16歳
性別︰男
身長︰184cm
スキル︰【天狼星】
スキル詳細︰星の光を纏った狼を召喚することができるスキル。狼の召喚時間や強さはスキルを持っている人の魔力総量に依存する。
容姿︰金髪のショートヘアに青い瞳のイケメン。だが普段の言動で全てを台無しにしている。
性格︰陽気で図太い。異世界転生者を自称しているが、この世界に異世界転生者は存在が確認されていないため全員から嘘だと思われている。ちなみに、異世界転生者であることは本当で、元々は東京の一般的な高校に通学する高校二年生だった。
---
種族設定(現在出てきたもののみ)
人間
人間は、この世界において一番多い種族。その社会性や知能を用いて経済圏を創り上げており、魔物以外の全種族と協力関係がある。魔力、霊力、気力のどれかが使用できることが多い。
吸血鬼
人間と協力関係にありながら人間の血を啜る鬼の一種。寿命は人間と同程度だが、人間よりも美男美女が生まれやすい傾向にある。魔力、霊力、妖力、気力のどれかが使用できることが多い。




