第12章 : クーデター プロローグ
012
ドン!……大きな音が街中に響き渡った……よく聞くと……すぐ近くから聞こえてきていた……
ウィリアムはそれを聞いて、女の子たちが買い物に行った市場がちょうど図書室の近くだということを思い出した……
彼はマントを手に取り、短刀も一緒に持った……
「さあ……準備は整ったな?」
人気のない路地で……ルイスと私、そして一部の兵士たちが深い路地で準備をしていた……
「はい……こちらで皆さんに強化魔法をかけます……」
言い終えて、私は味方の兵士全員に強化魔法を込めた……
「兵士の皆さん……この魔法があれば軍隊丸ごと相手にできます。ただし気をつけてください。この膨大な力を使いすぎると、体が内側から引き裂かれますよ……」
私は念話魔法で全員に伝えた。
その場の兵士たちが私に頷いた……
「準備はいいか……」
「はい……」
彼は私に一口キスをした……そして私を囚人護送用の馬車に乗せた……
「よし……行くぞ……」
馬車が王宮へと向かった……
王宮、朝……
「よくやったぞ、ヘレン……新しい婚約者とはすでに親しくなれているようだな……」
「はい、父上……父上のご助言のおかげで、以前のように裏切ることのない女性と出会うことができました……」
朝……朝食の時間だった。
今日も他の日と同じように、王族たちが普通に朝食を囲んでいた……ただ今日は他の日よりほんの少しだけ良い日だった……
ヘレン王子がすでに新しい婚約者と出会っていたからだ……
「それは素晴らしいですね、お兄様……私の可愛い義妹を何の情けもなく捨てて、最初からお兄様を愛するよう仕組まれた女性と婚約するなんて……」
メグミはフォークを置き、わざとらしく拍手をした……
しかもいつにも増して無表情だった……
チン……カトラリーが皿に当たる音が鳴った……
「その言葉を取り消してくれ……弟妹よ……」
しかしそれを言ったのはヘンリー国王ではなく、ヘレン王子だった。
「まあ……ただ不思議に思っただけです……」
「二人ともやめなさい……それだけでも十分に緊張した空気なんだから……」
ずっと黙っていた王妃が、血の繋がらない娘をたしなめた……
「お兄様に謝ります……」
「…………………」
その様子を見ていた国王はふと口を滑らせた……
「そういえば今日は珍しいな……そなたが口を開くとは……いつもは黙っているのに……」
もともと王妃は普通の女性だった……ただ後になって、夫がどんな人物かを知ることになった……
「子どもに話しかけているのです……あなたにではなく……」
国王が眉をひそめ始めた……
「まだ十九年前のことを怒っているのか?」
「十九年前のこととは何ですか、父上……」
ヘレン王子が素直な様子で聞いたが、国王はうやむやにした……
「大人の話だ……」
見ての通り……ヘレン王子は父である国王の言うことを素直に聞き、何でも信じた……妹のメグミ姫がいつも彼を大馬鹿と呼ぶのも無理はなかった……
彼はよく、金持ちで権力のある人間は普通の人間より何倍も変わった性格になりがちだと言っていた……
きっと父親に甘やかされすぎて、こんな身勝手な性格になったのだろう……
「失礼……もうお腹いっぱいです……」
王妃は明らかにいら立った様子で食堂を出ていった……
「母上!!」
ヘレン王子が引き止めようとしたが、王妃はそのまま出ていってしまった……
「お兄様……母上には少し休んでもらいましょう……最近嫌なことばかり続いていますから……」
メグミ姫はワインを一口飲みながらヘンリー国王をちらりと見た……
「……きっと具合が悪いんだろう……」
結局、国王はそう言い切った……
そしてこれ以上雰囲気が重くなる前に……兵士の一人が急ぎの報告を国王に求めてきた……
「何だ……食事中だぞ……」
国王が言い終わらないうちに、メグミ姫が割り込んだ……
「構わないわ……報告しなさい……」
「は……はっ! ただいま、第七代聖騎士様がクロエ・アンダーソンを捕まえました!」
「何だと!?……ならば謁見の間に連れてこい……あの小娘に、息子の心を傷つけた報いを教えてやろう……」
嘘だとわかっていても、こんなにあっさり言えるものなのか……
この王国が外見だけ立派で、内側は死んだ動物の内臓より腐っているのも不思議ではなかった……
今日でおしまいですよ、父上……あなたが安泰でいられる最後の日に……
そしてお兄様……
あなたは良いお兄様だった。私のことを本当の兄妹のように愛してくれていた……でも残念だけど……私はクロエという妹の方が大切なの……
あなたがあの子を愛し続けてくれさえすれば……私はあなたを殺したくなどなかった……
国王と王子は二人とも……盗賊の巣出身の少女、クロエ・アンダーソンを罰する気満々だった。
ヘレン王子は、たとえそれが父親の根拠のない言いがかりに過ぎなかったとしても……自分にしたことへの報いをクロエに与えたかった。父親がそう言ったから、信じた。それだけだった。
国王としては……クロエを今すぐにでも殺したかった。理由はただ「前のクロエ」が赤任務の秘密を知っているからだけではなかった……
後になって知ったのだが……「クロエ」はウィリアムとケイシーの娘の子孫だったのだ。ケイシーの腹の子は流れて死んでいるはずだと思っていた……
しかしそうではなかった。調べてみると……自分がケイシーの遺体を焼くよう命じた葬儀師が、その子を引き取って育てていたことがわかった。
そして葬儀師の姓であるアンダーソンを名乗り、ずっと生きてきた……
「クロエ」のこの秘密を知ったとき、国王は彼女を陥れ……口を封じるために死刑を宣告した……
ちょうど、これまで他の婚外子たちに対してやってきたのと同じように……
コンコン……ある家のドアを叩く音がした……
今、家の中の人たちは朝食の準備と市場に行く準備で忙しかった……だから家にいた若い少年だけが手が空いていた……
彼はドアを開けに行った……
普段この時間帯にもドアをノックする人がいることはあった。温かいミルクや、最近人気が出てきた新聞を届けに来る人たちだった……
しかし今朝は少し違った……顔見知りが予告なしに訪ねてきていたから……
少年がドアを開けると……和装をまとった若い男が、正体を隠すためにさらにマントを羽織って立っていた……
「お兄さんーーーー」
「しっ……小声で……」
少年はぎりぎり口を押さえた……目の前にいたのは、彼の家族がよく顔を出していた図書室の司書だったから……
「中に入れてくれ……それと食事もできれば助かる……」
「じゃあどうぞ……」
扉が閉まると……鎧姿の兵士たちが数十人駆け足で通り過ぎていく音が聞こえてきた……
「はあ……ありがとう、坊主……」
家の中に入ると、池田は家の人たちに自分の身に起きたことを話した……かなり衝撃的な話だったが、彼はまるで気にしていない様子で語った……
「だから、悪魔みたいなマルガムに追いかけられているんですよ……」
「…………………」
家族三人が顔を見合わせて困惑した顔をしていた……
「そうそう……もう一つ言うことがありました……わしはジェポンネのスパイなんですよ……」
家族はさらに顔を見合わせた……
「ジェポンネ帝国の皇帝に、何としてでもあなたたちの国のヘンリー国王を暗殺するよう命じられてきたんです……なぜなら彼が皇帝の娘を誘拐して殺したからです……」
「!!!!!」
少年はまだ頭が混乱していたが、両親はすぐに何を意味するのか理解した……
「信じられないと思いますが……信じてください……あなたたちの国王は、皆さんが思っているような人物ではないんです……」
「では……なぜ国王はそんなことをしたのですか?」
池田は少年をちらりと見た……そして先手を打った。これ以上ひどい話を聞かせないために……
「えっと……坊主には聞かせない方がいいと思いますが……」
両親はすぐに何の話かわかった……すぐに息子の方を向いた……
「二階で遊んでいなさい……」
「あ……そうします……」
両親の顔色を見た少年は素直に従った……そして池田は続きを話した……
「単純な話です……可愛い女の子を見かけると……蹂躙したくなるんでしょう……」
三人は黙って聞いていた……池田が知っているすべての話を……
彼らは何と言えばいいかわからなかった……自分たちの国王の暗い真実を聞かされて……
証拠がないとはいえ……池田の声のトーンはとても冗談を言っているようには聞こえなかった……
「それからもう一つ知っていることがあります……今、メグミ姫が国王に対してクーデターを起こそうとしています……それはきっとこの街に被害をもたらすでしょう……」
夫婦が顔を見合わせ……池田に聞いた。
「では、私たちは何をすればいいですか?」
「まず……王宮周辺の住民を避難させてほしいんです。避難所を作るなり何なり……今回のクーデターで巻き添えを食う住民たちを助けてほしいんです……」
二人は池田の言葉に頷いた……
「……坊主……」
池田は二階の階段に目を向けた……少年はそっと聞き耳を立てていた……
「何ですか……」
「渡したいものがある……」
彼は赤いボタンの付いた木箱を差し出した……
「これは?」
「これはわしの図書室にあった本がすべて入っています……巨大ロボット終末大戦も含めて……全部あげます……」
少年が目を丸くした……
「本当ですか!?」
「本当だ……配っても、売っても、貸し出しても好きにしなさい……お前のものだ……残りを頼むぞ、第二代司書……」
池田は少年の頭を撫でた……そして家の裏口へと向かった……
「行かなければ……」
しかし出ていく前に……もう一つ少年に渡した。
魔法で改造した小さな装置だった。
「はい……これのこの赤いボタンを押せば……いつでも話しかけられる……」
「わあ……」
それは魔法で改造した遠距離通信機だった……
「行くぞ……」
そして彼は少年の家を出ていった……しばらくすると、兵士たちが見つけたと叫ぶ声が聞こえてきた……
「逃げる準備をしなさい、坊主……」
少年は頷いた……
「はい……」
王宮の謁見の間で……
「まあまあ……信じられないね、またあの顔を見ることになるとは……」
侮辱に満ちた声が私の耳に流れ込んできた……しかし私はただ相手を見返した……
「またお会いできて光栄ですわ……父上……」
私は皮肉をこめて言った。
「なんて態度だ!! 父上は国王だぞ……お前より身分が高い!! そのような口の利き方は許さん!!」
「お似合いですよ……」
ヘンリー国王は私の言葉を全く気にも留めなかった……
「よくやった、ルイス……さすが聖騎士だ……」
「ありがとうございます、陛下……」
ルイスが国王の称賛を受けて礼をした……
「さて……この淫らな女を痛い目に遭わせてやろう……」
ヘレン王子が国王の命令に頷き、剣を抜いて私の顔に向けた……
「最後に言い残すことはあるか? この淫売が……」
嫌みな声のトーン……私はそういう自分が正しいと思っているくせに、実際はただ騙されているだけの大馬鹿が大嫌いだった……
「どうかそのまま一生、鈍い馬鹿のままでいてくださいね……殿下……」
「この女!!」
剣が空中で振り上げられた……しかし私はまったく怯まずに相手を見返した……
しかしその瞬間……
「陛下!!」
聞き覚えのある声が響いた……ヘレン王子は剣を下ろした……
「マルガムか?」
「陛下に至急ご報告があります……」
マルガムが三人の少女を引きずりながら入ってきた……そして三人を国王の前に投げ捨てた……
「この者たちは武器を使って強盗を行い、私の弟子を殺傷し、宮廷魔法使いであるこのわしをも殺そうとした罪で捕らえました……」
縛り上げられた三人が辺りを見渡した……やがて私と目が合った……
「あなたたち……なんで……」
「クロエ!!!」
彼女たちは数日前に私を助けてくれた盗賊集団だった……しかし強盗とは……
「クロエ!! お騎士様!! あのじじいがお騎士様の宝石を奪っていったのよ!! 私たちはただそれを取り返して返しに行こうとしただけなのに!!!」
「黙れ!! 根も葉もない言いがかりをするな!!」
マルガムというじじいはリボンを蹴り倒した……
「おやおや……こんな生意気な子たちに会えるとは……」
彼は懐かしそうな声で言った……
「父上……この者たちをどうしますか?」
ヘレン王子が聞いた。
「あの女と一緒に拷問にかけろ……この仕事はお前に任せる……」
「ありがとうございます、父上……ただ……まずこの嘘つき女を斬り捨てたいのですが……」
ヘレン王子がまた剣を抜いた……
来い……来なさい……あなたのことなんて怖くない……
あなたより何倍も素敵な人ができたんだから……
これがあなたが望んでいたことでしょう……「クロエ」……
復讐ね。
ガキイイイイン!!!!
鉄同士がぶつかる音が空中に響いた……その場にいた全員の視線がルイスに集まった……ヘレン王子の剣を受け止めた人物だった。
「何をしている……」
「妻を守っているんです……」
その言葉に全員が驚いた……兵士たちが剣を抜いてルイスに向けた……
しかし素手で手錠を引き千切った私は、魔法の火縄銃を両手に引き抜き、兵士たちに向けた……
「さあ……剣と銃、どちらが先に死ぬかしら……」
国王は私たち二人の態度に、どうすればいいかわからなくなった……
彼はゆっくりと玉座を離れ、出口へと向かいかけた……しかし……
「うわぁ!!」
そこにはメグミ姫が魔法の杖を国王の顔に突きつけて立っていた……
同時に、こちら側の兵士たちが入ってきた。そして剣や魔法の杖を兵士たちに向けた……
人数では劣っていたものの……謁見の間の中の兵士の数は信じられないほど少なかった。
私が銃口を床に向けると……兵士たちはあっさりと剣を捨てた……
「宮廷魔法使いたちよ!! 他の宮廷魔法使いはどこへ行ったんだ!!!」
国王が狂ったように叫んだ。本来であれば第一位の宮廷魔法使いが予知魔法で異変を察知し、対応を準備しているはずだった……しかし今回はまったくそうなっていなかった……
「ああ……他の宮廷魔法使いの方々は今頃ロジア王国にバカンスに行っていますよ……誰が命じたか聞かなくていいです……私です……」
ロジア王国……レギュラーの敵対国の一つだった……
「どういうことだ、メグミ……これはどういうことだ……」
「まだわかりませんか、父上……私がクーデターを起こしているんです……」
彼女は冷たく言い放った……しかしそれでも……
「これがうまくいくと思っているのか……」
そう言いながら国王はメグミ姫の杖を払い除けた……そして姫の腹を殴り倒した……
「兵士!! 全員片付けろ!!!!!」
命令を受けた兵士たちが剣を手に取り、こちらの兵士たちと交戦し始めた。私はすぐに人の波を駆け抜け、メグミ姫のもとへ走った……
「姫様!!!」
「クロエ……よかった、あなたに会えて……杖を取ってちょうだい……」
「はい!!」
私は急いで杖を拾い、回復魔法を使おうとした……
しかし姫は止めた……
「必要ないわ……トリックスター☆チェンジ!」
彼女は魔法少女に変身し……自分で自分を癒した……
国王は護衛の兵士たちを連れて急いで上の階へ向かった……ヘレン王子とマルガムもついていった……
「陛下!!」
マルガムが何かの箱を国王に投げた……中には宝石が入っているはずだった……
「急げ!!!」
私たち二人は上の階を追いかけた……二階に上がると間もなく……兵士の一団が立ちふさがっていた……
「私が引き受けるわ……あなたは急いで……」
「はい……お姉様……」
私は姫が魔法の光線を放って道を切り開く中、兵士の包囲を走り抜けた……
兵士たちは光線をかわしながら……私はなんとか抜け出すことができた……
「止まれ!!!」
しかしまだ一部の兵士が私の前を塞いでいた。
「来い!!」
私は兵士たちに銃を向けた……二人が突進してきた……私はかがんでかわし、背後に向かって二発撃った……弾丸が体を貫通しないよう設定していた……気絶させるだけで十分だった……死にはしなかった……
別の兵士が後ろから斬りつけようとした。しかし私はとっさに振り返り、銃で剣を受け止めた……
「降伏しろ……今すぐ……」
「すまないが……それはできない……」
私はすぐに股間を蹴り上げた……そして兵士を撃ち倒しながら走り続けた……
全力で走り続けると……もう少しで国王に追いつきそうになった……
国王に向かって発砲した。彼は倒れた……ヘレン王子がすぐさまこちらを向いた……
「元カレに刃を向けるなんて、愛想が悪いですね……」
「死ね……」
私には選択肢がなかった……あの大馬鹿な王子と真正面から一対一で対峙するしかなかった……
一方、別の場所で……
王宮から騒々しい音が響き渡った……池田を追い回していた兵士たちもすぐに王宮へと向かった……
ある建物の屋根の上でそれを見ていたウィリアムも、すぐさま後を追って走り出した……
砂漠で……
「おっと……始まったな……」
エンジンがバンの後部座席に座りながら独り言を言い始めた……
四人の魔法使いは準備を整え、エンジンの見えていることに耳を傾けた……
「今、兵士たちの注意は全部王宮に向いている……私たちを追いかけてはいない……」
「では安全なのね……」
ショートヘアの双子、ドロシーが落ち着いた声で聞いた。
「そうね……今頃私たちの家族はロジアに移動済みだし……向こうも温かく歓迎してくれているみたい……」
魔法使いたちが一様にほっとした息をついた……
「あ、そうだ……トーマスさん、止めてください……」
「は?……わかった……」
バンが砂漠の真ん中で止まった……エンジンはバンから降りると、助手席からリオを引きずり出した……
「ちょっと……何をするの……」
「リオちゃん……火球の魔法をチャージして撃つ準備をしてくれない?……」
「何かあったの?……」
「ある子を助けてあげないといけなくて……」




