第11話 グスタフ、そういうお店でヴェラに似た娘を指名する
【元荒くれの傭兵グスタフ視点】
『アヴァロン帝国歴182年 5月1日 スース娼館通り 夜 晴れ』
帝都ハーグ駅から列車で三十分、『スース副都心』の裏通り。
スースは副都心として再開発が行われていたが、もともとは娼館街だ。
ちょっと裏通りにいけば、今でもそういうお店がたくさんある。
ここは、昼間の華やかな大通りとは違う、欲望とカネの匂いが染みついた場所だ。
ピンクや紫の怪しげな光が、路地裏をジメジメと照らしていた。
「くそっ……まだ痛みやがる」
俺、グスタフは、右腕をさすりながら舌打ちをした。
昨日、あのヴェラとかいう小娘に決められた関節技の痛みが、まだ芯に残っていやがる。
飯を食っても、酒を飲んでも、あの時の屈辱が頭から離れない。
皆の前で地面に這いつくばらされた俺の姿。そして、俺を見下ろしたあの冷たい目。
(許せねえ……許せねえぞ、あのアマ……!)
怒りで腹の底が煮えくり返るのと同時に、股間の奥がドロリと熱くなるのを感じた。
俺は、馴染みの『夜の花』という店の暖簾を、乱暴にくぐった。
「へい、いらっしゃい……おや、グスタフの旦那じゃないですか」
モミ手をして寄ってきた店主に、俺は帝国マルク紙片を何枚か渡した。
「一番上等な個室だ。それと……女を用意しろ」
「へへっ、承知しております。いつもの豊満なタイプで?」
「違う!」
俺は店主の胸倉を掴み上げ、ギラついた目で睨みつけた。
「小柄で、栗色のショートヘアの女だ。体つきは細いくせに、ケツだけは安産型のいい形をしてるヤツだ。……できるだけ、気が強そうなのがいい」
「は、はひぃ! 探します、すぐに探しますぅ!」
◇◆◇
通された個室は、安っぽい香水の匂いが充満していた。
赤紫色の照明の下、俺は革のベルトを外しながら、獲物が来るのを待った。
コンコン。
「失礼しますぅ……」
入ってきたのは、俺の注文通りの娘だった。
栗色の短い髪。小柄な体型。顔立ちは昨日のヴェラに比べれば十倍は落ちるが、背格好だけはそっくりだ。
「お兄さん、あたし、ミミっていうの。優しくしてね……ひゃっ!?」
俺は何も言わず、いきなりミミの腕を掴んでベッドに放り投げた。
「な、なにするのよ! 乱暴は追加料金だよ!」
「うるせぇ!」
俺は懐から、用意しておいた麻縄を取り出した。
船乗りが使うような、太くて粗い縄だ。
「い、いやっ! そんなの聞いてない!」
「へへっ、逃げられると思うなよ……!」
俺は嫌がるミミの上に馬乗りになり、その細い手首を縄でギリギリと締め上げた。
暴れる足を押さえつけ、亀甲のような形に縛り上げていく。
縄が白い肌に食い込み、ミミが苦痛に顔を歪める。
「痛いっ! やめて! ほどいてよぉ!」
その悲鳴を聞いた瞬間、俺の脳内で、目の前の女とヴェラの姿が重なった。
(そうだ……これだ……!)
昨日は手も足も出なかった相手が、今は俺の下で無様に泣き叫んでいる。
その錯覚が、俺にたまらない全能感を与えた。
「へへへ……昨日はよくもやってくれたなァ? ええ?」
「な、なんの話!? あたし知らない!」
「知らねえとは言わせねえぞ。ほら、この生意気な口か? それとも、俺を誘ったこの尻か?」
俺は、縄で強調された尻の肉を、ベチンッ! と手のひらで強く叩いた。
「ああっ! 痛いっ!」
「いい声で鳴きやがる。もっと泣け、もっと許しを乞え! 俺様が一番強いんだって、その体に教えてやる!」
俺は脂ぎった汗を垂らしながら、ヴェラの幻影に向かって腰を振った。
恐怖に怯えるミミの顔を覗き込み、粘りつくような視線でその全身を舐め回す。
「ひっ……気持ち悪い……助けて……」
「最高だ……その目だよ……!」
俺は、昨日の復讐を果たすかのように、自身の欲望をその小さな体に叩きつけた。
荒い息遣いと、革ベルトの音、そして女の泣き声が、薄暗い部屋にいつまでも響いていた。
(勝った……俺は勝ったんだ……!)
果てた瞬間、俺は歪んだ優越感に浸りながら、汚らしい笑みを浮かべていた。
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